放射線あれこれ....被曝 - Wikipediaより抜粋

内部被曝 [編集]

放射線源を体の内部に取り込んだ場合の被曝を外部被曝に対して内部被曝という。放射線源を体内に取り込む経路には以下のようなものがある。

したがって、閉じていない傷のある者は放射性物質の取り扱いを避けるべきである。また、放射性のエアロゾルまたは気体のある雰囲気中ではそれを除去できるフィルターを有した呼吸保護具等を装備しなければならない。放射性物質が皮膚表面に付着しただけでは内部被曝とはならないが、手を汚染した場合は、その後の飲食、喫煙または化粧などによって汚染を体内に取り込む可能性が高い。したがって、放射性物質を取り扱う区域内では飲食、喫煙または化粧を行ってはならず、また取り扱いを中断・終了するときは必ず手に汚染がないことを放射線測定器で確認しなければならない。

内部汚染を起こした場合、汚染の除去は外部汚染よりはるかに困難となるので、より長期間被曝することになる。
体内に取り込まれた放射性物質がどのように振舞うかは、その元素の種類と化学形により様々である。例えば、ヨウ素甲状腺に集まる性質があり、ストロンチウム中のカルシウムと置き換わって体内に蓄積することが知られている。

生物学的半減期 [編集]

体内に取り込まれた放射性物質は、それ自身の放射物理学的に原子核崩壊して減っていくのとは別に、生物学的な作用により、排泄されるなどして体外に排出されることで減っていく。いずれのメカニズムも、体内にあるその物質の量に対し一定の割合が 減少していくので、その減り方は指数関数的であり、一定の時間ごとに半分に減っていく。原子核崩壊によって半分に減る時間を物理学的半減期(または単に半減期)、生物学的な排出によって半分に減る時間を生物学的半減期という。

両方を合わせた実効半減期は、以下の式で計算される。

放射線量の大きさに対する人体の影響 [編集]

単位はミリシーベルト (mSv)。1ミリシーベルト=1000マイクロシーベルト
実効線量内訳
0.05原子力発電所の事業所境界での1年間の線量。
0.1 - 0.3胸部X線撮影
1一般公衆が1年間にさらされてよい人工放射線の限度(ICRPの勧告)。#被曝の対策を参照。
放射線業務につく人(放射線業務従事者)(妊娠中の女子に限る)が妊娠を知ったときから出産までにさらされてよい放射線の限度。
2放射線業務従事者(妊娠中の女子に限る)が妊娠を知ったときから出産までにさらされてよい腹部表面の放射線の限度。
2.4一年間に自然環境から人が受ける放射線の世界平均。
4胃のX線撮影。
5放射線業務従事者(妊娠可能な女子に限る)が法定の3か月間にさらされてよい放射線の限度。
7 - 20X線CTによる撮像。
50放射線業務従事者(妊娠可能な女子を除く)が1年間にさらされてよい放射線の限度。
100放射線業務従事者(妊娠可能な女子を除く)が法定の5年間にさらされてよい放射線の限度。
放射線業務従事者(妊娠可能な女子を除く)が1回の緊急作業でさらされてよい放射線の限度。妊娠可能な女子には緊急作業が認められていない。
250白血球の減少。(一度にまとめて受けた場合、以下同じ)
500リンパ球の減少。
1,000急性放射線障害。悪心(吐き気)、嘔吐など。水晶体混濁。
2,000出血、脱毛など。5%の人が死亡する。
3,000 - 5,00050%の人が死亡する。(人体局所の被曝については3,000 : 脱毛、4,000 : 永久不妊、5,000 : 白内障、皮膚の紅斑[9]
7,000 - 10,00099%の人が死亡する。
10,001以上
放射線の人体に対する影響は、被曝した体の部分などにより異なる。上記の表ではX線撮影X線CTおよび注記されているもの以外は全身に対するものである。
X線検査の数値は調査年代(検査装置の性能)や報告(調査対象となった医療機関による使用方法)によってばらつきがあるため、目安である。
放射線の線量限度には、自然放射線被曝と自己の診療に関わる医療被曝は含まれない[14]
なお、一度に大きな線量を被曝した場合の線量単位にはシーベルトではなくグレイが用いられるが、X線ガンマ線による被曝に関しては数値に違いがない。

被曝の低減 [編集]

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/52/Alfa_beta_gamma_neutron_radiation_M1.PNG/200px-Alfa_beta_gamma_neutron_radiation_M1.PNG
放射線の透過能力アルファ線は紙1枚程度で遮蔽できる。ベータ線は厚さ数mmのアルミニウム板で防ぐことができる。ガンマ線は透過力が強く、コンクリートであれば50cm、であっても10cmの厚みが必要になる。中性子線は最も透過力が強く、やコンクリートの厚い壁に含まれる水素原子によってはじめて遮断できる。
被曝を低減する三原則は、時間・距離・遮蔽である。

時間 [編集]

線量は放射線場にいた時間に比例して増加する。放射線場での作業時間ができるだけ短くなるよう、作業計画を綿密に検討する必要がある。

距離 [編集]

線量は線源までの距離の2乗に反比例する。線源はトングやマジックハンドを用いて扱い、直接触らないようにする。放射性物質が皮膚に付着しないよう、ゴム手袋などの保護具を装備する。

遮蔽 [編集]

α線1枚で遮蔽できる。β線アクリル樹脂板で遮蔽できる。
γ線は透過力が高いが、やはり遮蔽することができる。や金といった密度の高い物質のほうが効果的に遮蔽することができる。コンクリートならば厚さ30cmごとに、鉛板ならば厚さ5cmごとに線量を10分の1にまで減らす(コバルト60のガンマ線の場合)。
中性子線に対しては、質量数の小さい物質のほうが効果的に遮蔽することができる。水素や炭素を多く含む物質、例えば水やポリエチレンのブロックがよく用いられる。また、中性子吸収材と組み合わせて使うこともある。