放射性セシウムの恐怖 前編『除染を諦めたロシア』

放射性セシウムの恐怖 前編『除染を諦めたロシア』

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放射性セシウムの恐怖 前編『除染を諦めたロシア』
チェルノブイリ原子力発電所の事故から25年。半減期が約30年の放射性セシウムによる土壌汚染が問題になっている。しかし、一方で放射性セシウムの除染を何年も行ってきたが、ロシアは結局諦めてしまった。それは何故なのか。

 未だに強い放射線に汚染されている地域はチェルノブイリ原発を中心に約350km。約100箇所をホットスポットと呼ばれる箇所ではいかなる農業、畜産業も行うことはできない。

放射性セシウムの除染を諦めたロシア
チェルノブイリ原発事故では大量の放射性セシウムを含む放射能が飛散した。放射性セシウムは非常に反応しやすい物質で、常に他の元素と結合した状態で発見されている。IAEAが行った環境影響調査結果では、「屋根材やコンクリートにも容易に結合している」と報告がされている。
放射性セシウム半減期は30年。ガンマ線という波長の短い電磁波を放射しする。ガンマ線には、ウランから放出されるアルファ線ほどの有害性はないが、DNAを傷つけ発がん作用をもたらすにはかわりはない。またガンマ線は透過能力が高く、これを遮蔽するには10cm以上のコンクリート、鋼鉄、鉛、水しかない。

社会を崩壊させる恐ろしい物質、それが放射性セシウム
「人々は自分たちの村や町を捨てなければならなかった。広大な土地はただの空き地になってしまった。セシウムは社会を崩壊させる恐ろしい物質だ」
半減期が長く、何でもくっ付く放射性セシウム。ひとたび汚染された物質から放射性セシウムを除去することは不可能に近い。ロシアは何年にもわたり放射性セシウムの除去を試みるも、結局は諦めた。これは資金不足だけが原因ではないと、スタンフォード大学の物理学教授、ステインハウスラー氏は述べている。

チェルノブイリ発電所から飛散したセシウム137の汚染レベルと距離
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薄いピンク:1~5Ci/km2:放射能管理が必要なゾーン
オレンジ:5~15Ci/km2:希望すれば移住が認められる
やや濁った赤紫:15~40Ci/km2:強制(義務的)移住
濃いピンク:40Ci/km2以上:強制避難

放射性セシウム半減期は30年、しかしチェルノブイリは違う
放射性セシウム半減期は30年だが、チェルノブイリ付近の土壌に含まれるセシウムの量はそのペースで減少していないことが2009年12月14日、米国地球物理学会の秋季大会で発表されたのだ。

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説明:黒線(Cs-137)が放射性セシウム。縦軸が残留濃度、横軸が経過年数。(10,000日は27.4年)
このグラフは放射性物質のそれぞれの減衰予想したもの。約27年が経過すると存在する放射性物質放射性セシウムだけになり、これがほぼ100%になると予想している。

半減期は30年、実際は最長320年
テレビや新聞で言われる半減期とは『物理的半減期』で放射性セシウムは約30年といわれている。しかし科学者は自然の拡散作用によって放射性物質の減少が促進され半減期が早くなるのではないかと予想していた。これを『環境的半減期』とよんでいる。この環境的半減期の予想は放射性ストロインチウムについては当たった。しかし、放射性セシウムは逆に環境的半減期が伸びていたのだ。
この理由について研究チームは環境に理由があると考えている。例えば、サンプルの採取地点にチェルノブイリ原発から新たにセシウムが供給されているかもしれないし、あるいはセシウムは地中深くの土壌にまで拡散しているのかもしれない。(チェルノブイリ原発は石棺といわれるコンクリートの建物で覆われているが、老朽化が激しく雨水が内部に流れ込んでいるとされている)

ことからチェルノブイリ付近における放射性セシウムの物理的特性は変わらないものの、実際の環境的半減期は180~320年になると算出している。もちろん、これはチェルノブイリ原発周辺に当てはまる例であり、福島第一原子力発電所ではまた別の結果がでることが予想できる。

長年にわたり生物を苦しめる放射性セシウム。まさに百害あって一利なしの物質なのだ。