シェイブテイル日記...欧州危機と日銀記者クラブの関係①

シェイブテイル日記

2011-11-27

欧州危機と日銀記者クラブの関係http://s.hatena.ne.jp/images/add_dg.gif

http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/shavetail1/20111127/20111127095935_120.jpg 欧州危機が進行しています。 
国債残高が積み上がった日本でも欧州危機は他山の石として事例研究が必要です。

ユーロ防衛正念場に ドイツ欧州中銀の決断カギ
12月9日にEU首脳会議(2011/11/27 0:41)日本経済新聞 電子版
ユーロ圏政府債務危機が重大局面を迎えている。国債への売り圧力ギリシャなど周辺国から仏独など中核国にまで及び、ユーロ圏発の信用収縮の波が世界に広がりつつある。市場でユーロ崩壊論が語られ始めるなかで、当面の危機収拾にはユーロ圏の盟主ドイツ欧州中央銀行(ECB)の行動しかない。12月9日の欧州連合(EU)首脳会議がその期限になりそうだ。
(中略)この2年でおなじみになった「メルコジ」と呼ばれる独仏首脳会談に24日、モンティ・イタリア首相が加わった。だが会談後の記者会見ではいつもの通り首脳たちが呪文のように「ユーロは守る」と唱えるだけで具体策は出なかった。
イタリアでは元欧州委員のモンティ氏、ギリシャでは前ECB副総裁のパパデモス氏がそれぞれ首相に就任、EU管理体制が鮮明になった。

■市場、解体も視野 両首相は挙党一致で財政緊縮策を進める方針を示しているが、問題はすでにギリシャイタリアなどの自助努力の範囲を超えている。市場はユーロ圏の危機対応能力に不信を強め、マネーのユーロ圏脱出の動きが鮮明になってきたためだ。
23日にはドイツ国債入札が不調に終わり、24日にドイツ国債利回りが英国債を上回った。英国財政赤字を抱えるが、ユーロ圏に入っていないためドイツより安全という見方を反映している。
(中略) 当面の危機を乗り切るのに何が必要か。市場関係者の見方はほぼ一致している。ドイツとECBの決断だ。ドイツは「将来の財政統合」の必要性を指摘しながらも、ユーロ共同債やECB活用に慎重姿勢をとっている。だが、ユーロ圏全体に不信が広がった以上、ECBが直接あるいは間接的にユーロ圏の「最後の貸し手」になることを明確にし、国債利回り上昇を抑えることが急務だ。
手法はいくつもある。ECBが米連邦準備理事会(FRB)やイングランド銀行のように国債を大量購入する量的緩和に動くと宣言する方法。あるいは欧州金融安定基金(EFSF)を銀行に衣替えし、ECBから資金を調達できるようにする案もある。
10月下旬のEU首脳会議ではEFSFを1兆ユーロ程度に実質拡充する方針が決まったが、その後の市場の動揺で2兆~3兆ユーロ規模は必要という見方が出ている。国際通貨基金IMF)が新たに創設した予防的融資枠も含め、当面の混乱回避のための安全網拡充が急務だ。

■緊急対応必要に 
赤字国が財政再建に取り組むのが重要で、安易な支援はモラルハザード(倫理の欠如)につながる」「中央銀行物価安定に専念すべきだ」という筋論はあるが、危機時にはそれを超えた対応が必要になる。それは日本や米国などの過去の金融危機をみても明白だ。
EU条約改正など中長期的な統合深化の取り組みも大事だが、まずは眼前で広がる火災の消火活動が先決だ。ユーロ圏の行動が問われている。
欧州総局編集委員 藤井彰夫)
 ”「赤字国が財政再建に取り組むべき」、「安易な支援はモラルハザードにつながる」」「中央銀行物価安定に専念すべきだ」という筋論”は、ドイツをはじめとする欧州主要国の建前としては人気のある政策でした。 しかし、財政赤字を削減する政策は、財政赤字国の国民に反発を買っているだけでなく、そもそも既に財政危機状態にあるなしにかかわらず、好景気ではなく財政赤字削減政策だけで、プライマリーバランスを達成した国が世界のどこかにあるのでしょうか。

http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/shavetail1/20111117/20111117205058_120.jpg一方、日本の財政赤字も大きく、これに対して日銀・白川総裁は次のように語っています。
[2011年5月28日 – 東京 ロイター] 日銀白川方明総裁は28日、都内で開かれた日本金融学会で講演し、財政悪化に警鐘を鳴らすと「オオカミ少年」のように受け取られるが、政府の支払い能力に対する信認は突如低下し長期金利が急騰する可能性がある、と強調した。
日銀による国債の直接引き受けや、無原則な国債買い入れは、微妙なバランスに立つ通貨金融システムの信認を低下させ、経済に計り知れない悪影響を与えるとの懸念を表明した。
(中略) また、「財政赤字の拡大や日銀の独立性が尊重されていないと感じられる出来事が起こると、最終的に激しいインフレが生じるだろうと考える傾向が生まれる」、「はっきりしていることは、予想は非連続的に変化するということ」と指摘。「欧州周辺国のソブリンリスク問題にみられるように、財政の維持可能性に対する信認が低下すると、財政と金融システム、実体経済三者の間で負の相乗作用が生じ、経済活動にも悪影響が及ぶ」と述べた。
日銀国債の買い入れを行う際、銀行券の発行残高を上限とする、いわゆる日銀券ルールについて、「時として、そうしたルールを設けることに対する批判が聞かれるが、仮に、これだけ多額の国債を買い入れている中央銀行が、その買い入れに当たっての基本原則も明らかにせずに行動すると、不確実性が増大し、リスクプレミアムが発生することから、その分長期国債金利が上昇する」と説明。 例えば「ギリシャアイルランド中央銀行が突然国債買いオペを大規模にはじめると状況は更に悪化する」と述べた。
(後略)(ロイターニュース 竹本能文;編集 長谷部正敬)

"日銀の独立性が尊重されていないと感じられる出来事が起こると、最終的に激しいインフレが生じるだろうと考える傾向が生まれる"というのは、わかりやすく言えば、「日銀の好きなようにさせないと、金利が上がっちゃうよ、それでもいいの?」という脅し文句でしょうか。
それはともかくとして、現実に危機にある欧州では、”ECBが直接あるいは間接的にユーロ圏の「最後の貸し手」になることを明確にし、国債利回り上昇を抑えることが急務”であるのに、将来危機が迫るであろう日本では”日銀国債買い入れ額を恣意的に制限する日銀券ルールを外しただけで国債金利は(欧州とは逆に)上がる”。 欧州の現実(中央銀行の買い入れなしには金利が急上昇)と、日銀総裁の「懸念」(中央銀行が買い入れすると、金利が急上昇)とはまるで逆を向いています。
ただ、ちょっと考えればわかることですが、欧州での国債投げ売り(価格低下と金利急上昇)に対しては、投げ売りする不安を取り除くことが急務であることは間違いありません。そのためには投げ売りを全て消化可能な「巨大な買手」が必要となります。従って、欧州中央銀行が巨大な最後の国債買手となることは理に適っています。 日銀総裁は、国債の巨大な買手が現れると、金利が急上昇(=価格の低下、投げ売り)が発生すると述べています。 どこの世界で、無限に買い入れ可能な、巨大な買手が出現した途端、巨大な買手が買うよりも大きく他の誰かが売り向かって投げ売りする、なんてバカなことがあるのでしょうか。 言う方も言う方ですが、これを記事にする方も記事にする方です。

こうした、中央銀行総裁の馬鹿げた発言をそのまま鵜呑みにして記事にするマスコミの姿勢について次のような記事もあります。*1

日銀会見と宮内庁会見は同類だ!? 記者、学者との癒着が生んだ“日銀タブー”がもたらす罪悪
サイゾー 11月26日(土)23時38分配信

──一部週刊誌では取り上げられるものの、全国紙経済面や社説日本銀行に対する批判はほぼ皆無。日銀の政策は、常に正しいのだろうか?実は日銀と新聞社、そして新聞に寄稿やコメントをする経済学者の間には、不健全な関係があるという。
深刻化する欧州金融危機と世界的な株安、史上最高値圏で推移する円相場、さらには東日本大震災後の復興財源をどこに求めるかという問題──。日本経済に降りかかる数々の難題を受けて、我が国の金融政策をつかさどる日本銀行への関心が高まっている。
例えば復興財源をめぐっては、財務省が提唱する増税案に対し、エコノミストジャーナリストの一部からは不況下の増税は景気を一層悪化させるとして、日銀による国債の直接引き受け策を求める声も出てきた。これに対しては、日銀引き受けが想定外の通貨安(円に対する信任低下)をもたらす危険性を指摘する声もあるが、日本経済新聞をはじめとする大手メディアでは、こうした議論自体が正面から取り上げられることはない。
日本経済新聞論説委員で、現「FACTA」の編集主幹・阿部重夫氏は、「日銀は外部の批判にほとんど耳を貸しません。それは日銀クラブ日銀記者クラブ)に所属している記者を早々と日銀の論理に洗脳して、無批判の環境で自らを囲い込んでしまうからです」と話す。
「私自身もそうでしたが、多くの新参記者は日銀クラブに入った時点で金融の実務知識が十分ではないので、手取り足取り金融のイロハを教えてくれる日銀師匠役になります。そこで純粋培養されてしまうと、『金利を上げるインフレファイターは正しくて、下げるデフレファイターは弱虫』という日銀の価値観に染まり、欧米の金融政策の常識や経済学の最先端と日銀がいかにズレているかが見えなくなります」(阿部氏)
さらに、新聞社の体質にも問題があるようだ。例えば日銀記者が少しでも批判めいた記事を書こうものなら、デスク、部長、編集委員論説委員といったお歴々が、「こう書いたほうがいいんじゃないか」「こういう見立てが正しいんじゃないか」と暗に記事の方向性を変えるように仕向けるという。大手新聞社の経済記者はこう語る。
日銀が直接何か言ってくることはないけれど、なんとなく記事の方向性が社論として決まっていくのが実際の新聞社の有様です。日銀はそうした新聞社の構造を熟知してか、経済部長だけを呼ぶ『経済部長懇談会』、経済担当論説委員を集めた『論説委員懇談会』などを、1~2カ月に一度、定期的に開いています」
部長や論説委員クラスになると、現場に足を運ぶ機会はほとんどないため、“ご進講”が貴重な情報源となる。彼ら上層部が日銀の話を鵜呑みにすることは、想像に難くないだろう。