温首相が金融政策を総括、株式市場へてこ入れ示唆

【中証視点】温首相が金融政策を総括、株式市場へてこ入れ示唆

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  <中国証券報>全国金融工作会議が1月6日と7日の両日、北京で開催された。中国共産党中央政治局常務委員である国務院の温家宝首相が演説を行い、ここ数年来の金融工作を総括し、現在の金融改革開放の発展が直面している新しい情勢を分析し、当面の金融工作の具体的方針を打ち出した。党中央政治局常務委員の李克強副首相が会議に出席した。

◆金融業、過去5年の六大変化

  温首相は、過去5年は、国際金融危機が発生し、拡大し、深刻化し、国内外の経済情勢は極めて複雑かつ厳しくなった5年間だったと指摘した。中国政府は、情勢をいち早く見極め、正確な判断を下し、迅速に行動し、果断に全体計画を実行に移し、100年に一度と言われた国際金融危機の衝撃に立ち向かった。経済社会の大局的安定を維持し、現代化建設プロセスに大波乱が巻き起こることを免れ、長期間の持続可能な発展に向けた頑丈な基礎固めを行い、中国の国際的地位と影響力は著しく高まった。中国政府はここ数年、以下のような一里塚的意味合いを持つ一連の重大金融改革を断固として進め、中国金融業では新しい歴史的変化が起こった。

 1、金融機関、特に大型商業銀行の改革が大々的に推進され、金融業の総合力と危機的状況に耐え抜く力が著しく引き上げられた。

 2、各種金融市場が着々と発展した。整った相互補完機能、多重的な取引所、多様化した取引品種を備えた金融市場システムがほぼ完成した。株式保有配置改革(国有企業株の市場流通改革)の実施が始まり、長期にわたり資本市場発展の足かせとなっていた歴史的難題にメスが入り、株式市場の機能健全化が進んだ。

 3、人民元相場の構造形成と利率市場化改革を着実に推進し、世界における人民元の地位は著しく向上した。
 4、金融マクロコントロールを強化・改善し、正しい方向性・力の入れ具合・リズムを把握し、金融支持と経済発展、インフレ抑制、金融リスク回避との関係を程良く処理し、穏やかでスピーディな経済発展を大いに促進した。
 5、金融管理監督における専門性・有効性を絶えず高め、ベーシックな制度建設を強化し、全面的・系統的な法律制度をほぼ形成し中国金融の安全・安定が有効に保障された。
 6、金融の対外開放を深化し続け、国際社会における金融業の地位と発言権が高まった。

  温首相は、中国の金融分野には、際立った問題や潜在リスクが今もなお存在していると指摘した。金融機関の経営方式は全体的に粗放で、コーポレート・ガバナンスとリスク・マネジメントには依然さまざまな問題が残っており、農村金融と中小金融機関の発展はかなり立ち遅れている。また、金融の管理能力向上にはまだ時間がかかり、貸付政策と産業政策がしっかりと結合しておらず、実体経済へのサポート面では、タイミングと力強さに欠けている。特に、国際金融危機がまだ終えんを迎えていないことから、危機意識と責任意識を強め、「居安思危」(平穏な状況においても絶えず危機に対処する心構えをもつ)を肝に銘じ、金融関連事業を新しいレベルに引き上げるよう努力しなければならない。

◆金融改革の発展に向けた8つの具体的措置

  温首相によると、新しい段階を迎えた金融事業をしっかり行い、金融が実体経済にサービスするという根本的な要求に応え、実体経済の発展という頑丈な土台を崩さず、多方面にわたる各種措置を講じ、資金が実体経済に向かうように保障し、融資難、融資コストの高さといった実体経済の難題を効果的に解決し、社会資本が実体経済からバーチャルに向かい、マネーゲームが蔓えんすることのないようコントロールし、バーチャル経済の空回りや膨張を防止し、産業の空洞化現象を防ぐことが必要だ。

  また、金融資源の市場配置改革における方向性を誘導し、政府が介入する領域や境界をいっそう明確にし、開放すべき部分は断固開放し、管理すべき部分は適宜管理し、各種金融市場の主体的な活力を奮い立たせる。革新と監督管理のバランスある発展理念を堅持し、金融機関の革新および製品・サービスモデルの革新を支援し、金融市場発展の深度・広さを拡大することが求められる。

  さらに、監督管理責任逃れを目的とした、あるいは経済発展需要からかけ離れた「革新」を防止する。リスク防止緩和を金融関連業務の生命線とし、金融監督管理・コントロール能力の建設を強化し、金融犯罪を徹底的に撲滅し、金融機関に関するオンライン情報の安全対策を強化する。「自主的、斬新的、安全、互恵的」という対外開放方針を堅持し、国家経済の金融安全の確保を前提として金融対外開放レベルを高める。

  このほか、温首相は、今後の金融改革・発展を巡り、以下の8つの具体的措置を打ち出した。

  1、経済社会発展に向けたより多くの質の高い金融サービスを提供する。金融業界はサービス機能を大幅に高め、サービス対象範囲を拡大し、後発エリアでの金融サービスを強化する。経済の構造調整、省エネ・排出物削減、環境保護、自主革新を重点的に支持し、特に農村における金融サービスの不足や中小企業の融資難などの問題解決を加速する。

  2、金融機関改革を深化する。コーポレイトガバナンス強化を重点に置き、有効策やバランスの取れた体制を確立し、規範化された効果的なインセンティブシステムを構築する。株権の多元化を推し進め、独占状態を適宜打破し、参入条件を緩和し、金融サービス分野への民間資本参入を奨励、牽引、規範化する。政府は、銀行、証券、保険など金融機関の制度改正や増資に参与する。政策性金融機関は、政策性業務を主体業務とする任務を忘れず、政策性業務と自営性業務の区別を明確にし、帳簿分割管理、分類計算を実行する。国家開発銀行は商業化改革を続け、さらに深める。

  3、金融管理監督の強化・改善を進め、システム面での金融リスクを徹底予防する。銀行業は極めて細かいリスク監督管理システムを打ち立てる。証券業は市場制度を改善し、管理監督を強化し、投資家の合法的権益を保護するよう努める。保険業は返済能力に関する管理監督を強化し、分類別管理監督制度を改善する。

  4、地方政府債務リスクを防止・軽減する。今のところ、中国政府の債務は全体的に安全でコントロール可能な状態にある。蓄積債務に対して総合的な施策を講じ、根本治療と局所治療を同時進行で行い、適切な処理を進め、地方政府の債券発行・融資システムをルール化し、地方政府の債務収支を予算管理に組み入れ、地方政府債の量的コントロールとリスク早期警報システムを立ち上げる。

  5、資本市場と保険市場の建設を強化し、金融市場の足並みの揃った発展を推進する。株券先物市場の安定的かつ健全な発展を促し、各種取引所の整備を徹底し、統一的規格下の債券市場を建設し、保険市場を育成する。
  6、金融マクロコントロール体系を改善し、貨幣政策・財政政策、監督管理政策、産業政策をバランスよく組み合わせ、経済発展と金融安定の有効促進を図る。人民元相場の形成構造をいっそう改善する。

  7、金融の対外開放を拡大し、資源の配置能力と金融安全保障レベルを高める。人民元建て資本プロジェクトの両替化を穏健かつ秩序立てて進め、外貨準備高の運用管理水レベルを高める。大陸部と香港・マカオ・台湾の金融協力を進め、香港が国際金融センターとしての地位を固め、高めるよう支援する。上海国際金融センターの建設を加速する。世界経済の金融管理に前向きに参与する。

  8、金融インフラの建設を強化し、金融発展環境を改善する。金融関連法律法規の制定・完備を加速し、金融業信用調査統一プラットフォームを構築し、登録、信託管理、支払、清算など金融インフラを整備し、消費者の権益保護を強化する。
◆2012年金融工作に関する4つの要求
  温首相は、金融部門と金融機関に対し、中央経済工作会議精神の徹底実施を求め、今年の金融関連業務に関する4項目の要求を出した。
 1、極めて穏健な貨幣政策を実施し、的確性、融通性、将来性をいっそう高め、社会融資規模の合理的な増加を維持する。
 2、信用貸付システムを合理化し、国家重点建設プロジェクト(継続分)と保障性住宅建設を強化し、産業政策に見合う企業、特に零細企業に対し、技術改造支援のための貸付を実施する。
 3、新株発行システムの市場化改革を深化し、発行、上場廃止、配当に関する制度を早急に完備し、株式市場に対する監督管理を強化し、発行市場と流通市場のバランスの取れた健全な発展を促し、株式市場の信頼回復のため刺激を与える。
 4、鋭い観察眼と追跡作業によって国内外の経済情勢を分析し、応急試案に着実に対応し、経済金融リスク予防を徹底する。

  温首相は、中国経済は現在、安定かつスピーディな発展情勢を維持していると強調した。かなり高い成長率を維持し、物価は安定状態に向かい、収益性は高まり、国民生活は順調に改善されている。金融システムは安定的に運行し、経済社会発展の基本面と長期的見通しの明るさは変わらないままだ。中国は、十分な自信と能力と条件を携えて、経済発展プロセスの新たな段階に踏み出している。(編集担当:浅野和孝)