欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の発行体格付けを「トリプルA」から「AAプラス」に1段階引き下げ

ブリュッセル 16日 ロイター] 格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は16日、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の発行体格付けを「トリプルA」から「AAプラス」に1段階引き下げた。見通しは「デベロッピング」とした。
またEFSFの長期債券格付けも「AAプラス」に引き下げた。

S&Pは今回の決定について、中核国フランス・オーストリアの格下げを受けてほぼ不可避だったと説明。「EFSFの保証提供国やEFSF債券を裏付ける証券の信用度が低下しており、これを相殺するだけの信用補完が現時点では行われていない」と指摘した。
EFSFの実質融資能力は4400億ユーロ。これはユーロ圏の「トリプルA」格付け国の保証に裏付けられているが、仏・オーストリアの格下げを受け、残る「トリプルA」格付け国はドイツ、ルクセンブルクフィンランド、オランダの4カ国のみとなった。
 
S&Pの格下げを受け、EFSFのレグリング最高経営責任者(CEO)は、EFSFの実質融資能力を4400億ユーロに維持する方針を表明した。
CEOは「格付け会社1社が『AAプラス』に格付けを引き下げただけでは、EFSFが持つ4400億ユーロの融資能力を弱めることはない」と主張。「欧州安定メカニズム(ESM)が発足する2012年7月まで、EFSFは現在および潜在的な将来の調整プログラムに基づき、責務を果たす十分な手段を備えている」とした。

<S&P、格付け見直しも示唆>

長期的には、他の主要格付け会社であるフィッチ・レーティングスムーディーズもEFSFの格下げを決定した場合、EFSFが融資能力を維持するには、低い格付けで債券を発行し、資金調達コストの上昇を容認しなければ、EFSFが融資能力を維持することは不可能とみられている。
EFSFが格付けを最上級とするためにドイツ、ルクセンブルクフィンランド、オランダの4カ国に保証枠を上積みするよう要請する選択肢もあるが、4カ国が保証拡大を受け入れる公算は小さい。

だがS&Pは、EFSFが信用補完を提供する方策を見出すことができれば、今回の格下げを見直す可能性に言及している。
「EFSFのメンバー諸国が、信用補完の選択肢を模索している可能性を認識している」とし、「とりわけ『トリプルA』格付けを有する保証提供国や『トリプルA』の証券により、EFSFの長期債務が完全に裏付けられているとわれわれが十分に判断できる水準まで、EFSFが信用を補完することができれば、EFSFの長期格付けを『トリプルA』に戻す可能性が高い」との見解を示した。




[パリ 16日 ロイター] フランスのバロワン経済財政産業相は、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)について、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の格下げを受けて、措置を講じる必要はないとの見解を示した。
同相は声明で「EFSFには現在と将来の一連のコミットを満たすための十分な手段と保証があり、融資能力は損なわれていない。そのため現時点で措置を講じる必要はない」と述べた。