ギリシャ・・

 [ロンドン 19日 ロイター] ギリシャはデフォルト(債務不履行)を回避するために必要な融資を国際社会から受けるため、既存債務を新たに発行する債券と交換する案について民間債権者の合意を得る必要がある。しかし、その交渉は難航しており、多額の債務が償還期限を迎える3月にデフォルトに追い込まれる可能性が現実味を増している。

 民間債権者の主体となっている欧州の銀行はさらなる償却を迫られることを懸念している一方、安値でギリシャ債を買い入れたヘッジファンドはリターンの最大化を狙い、ギリシャの提案を拒んでいる。
 それ以外のギリシャ保有者は、政府系ファンド、保険会社、ギリシャの年金基金などで、2060億ユーロ相当のギリシャ債が合意の対象になるとみられている。民間債権者がすべて提案を受け入れれば、少なくとも50%の償却が必要になる。
 欧州中央銀行(ECB)も多額のギリシャ債を保有しているが、民間債権者とはみなされておらず、交渉に関与していない。
 
 予想される交渉の結果は以下の通り。

 <自発的な債務交換で合意>

 民間債権者が保有するギリシャ債を、半分程度の価値しか持たない新たに発行される債券と「自発的に」交換することで合意する。
 ギリシャが国際社会から支援を受けるためには、債務を1000億ユーロ削減するために十分な債券保有者の合意を得なければならない。
 その場合でも、格付け機関から一種のデフォルトとみなされる可能性があるが、秩序なきデフォルトは回避できるとみられる。

 金融市場では「自発的な」合意の成立に懐疑的な見方が多いため、実際に合意に到達すれば好材料と受け止められ、株式などリスク資産に対する物色意欲が高まる可能性がある。
 ユーロも上昇するとみられ、一部のアナリストは、現在の1ユーロ=1.29ドルから1.30ドル前後に上昇すると予想している。
 しかし、それでユーロ圏の債務問題が解決されるわけではないため、好ましい市場の反応は限られたものにとどまる可能性もある。
 「自発的な」合意はすべての債券保有者に合意受け入れを義務付けるものではないが、32億2000万ドルに上るクレジット・デフォルト・スワップCDS)契約の発動には至らない見通し。

 <集団行動条項の発動>

 ギリシャが「自発的」な債券交換について十分な債券保有者から合意が得られない場合、合意を拒んでいる債権者に対し、債務交換を強制する法的措置に訴えるという選択肢もある。
 パパデモス首相は、債権者に損失受け入れを強いる法律の導入を検討する可能性があると明らかにした。
 そうした法律は集団行動条項(CAC)と呼ばれており、一定比率の債権者による合意に基づき、すべての債権者に合意受け入れを義務付けるものだ。

 債券市場はそうした措置が取られれば、ポルトガルアイルランドの前例になる可能性があるとみなし、ポルトガルアイルランドの利回りが上昇するとみられる。
 一方、秩序なきデフォルトは回避されることになるため、ユーロ相場は一時的に上昇する可能性がある。
 CACの導入がCDSの発動につながることはない見込みだが、それが発動されれば、CDSも発動される可能性が高い。

 <交渉決裂>

 何の合意もできないまま交渉が決裂すれば、ギリシャは3月20日に145億ユーロの債務償還を控え、デフォルトに追い込まれる可能性に直面する。
 それは市場が最も恐れている事態で、ギリシャはユーロからの離脱を迫られる可能性がある。
 また、密接に関連しあった世界の銀行システムを揺るがす見込みで、多くのアナリストは、その余波は2008年のリーマン・ブラザーズ破綻時よりも大きくなると予想している。

 市場では低リスク資産への資本逃避が加速し、ドイツ連邦債や米国債など流動性の高い政府債の利回りが低下する見通しだ。一部には、独連邦債利回りは現在の1.8%から1%まで低下するとの見方も出ている。
 ユーロ相場は下落し、ギリシャ危機が初めてピークに達した2010年6月以来の安値である1ユーロ=1.20ドルに向けて下落する可能性がある。
 株式市場では、特にギリシャ向けエクスポージャーの大きなフランスの銀行株が売り込まれそうだ。
 CDSは発動されるだろう。

 <土壇場での救済>

 3月20日が近づけば、秩序なきデフォルトに対する懸念が高まり、国際社会はギリシャに対して債務返済に必要な資金の融資に踏み切る可能性もある。
 国際通貨基金IMF)は、ギリシャとの「例外的アクセス」に関する交渉を始めることについて、内部の承認を要請した。
 しかし、土壇場になって救済することになれば、ギリシャ債を安値で購入した投機筋に膨大な利益をもたらすことになり、政治的に強い抵抗が予想される。
 
 このシナリオの下では、金融市場は合意が成立するかどうかをにらみながら、不安定な展開となりそうだ。
 ドイツ連邦債など安全とみなされる資産に対する需要が高まる見込みだが、救済策の実現性が高まれば、売りが殺到する可能性もある。