2回目の3年物LTRO

2回目の3年物LTRO以降が気になる

最近、欧州関連ばかりですが、アップデートしておきます。

12日に、ギリシャの議会で、緊縮関連法案が可決しました。
これで、きりが晴れると思いきや、まだまだ、霧は晴れません。
(金融市場は、さすがに金曜日の反動というか一服感があり、それなりに、小戻しですが...)
15日には、ユーロ圏財務相会合が予定されていますが、ここで、どういう結論がでてくるのかです。

ユーロの南北問題なんてよく言われていますが、これこそ、ユーロの南北問題です。
過去にも、何回も言われていることですが、ドイツ(正確にはドイツ圏)対それ以外の構図が見えていましたね。

ドイツの言い分は、緊縮財政の計画はわかったけど、どうやって実行を担保するのか、そこにかかっているわけです。
今までも、ギリシャは、ほとんど実行できていませんからね。
ギリシャの弱者の論理が勝つのか、ドイツの正論が勝るのか、白熱してきているのです。

この南北問題の緩衝役がフランスのサルコジ大統領なわけです。
サルコジ大統領は、「メルコジ」と言われるくらいドイツと上手くやっているのです。
しかし、残念ながら、サルコジ大統領のフランス国内での人気は、凋落傾向にあります。
つまり、4月22日の大統領選の第1回投票では、初の現職大統領敗北もありえる状況です。
対抗馬は、社会党のオランド氏です。
ミッテラン以来の17年ぶりの社会党からの大統領を目指すわけです。
だから、このフランスの大統領選は、今後のユーロ圏の政治力学のバランスを考える上で、思いのほか重要なわけですね。

こんな状況ですから、15日の財務相会合で、どんな回答を出すのか、またしても、何やら厳しい要求が出てきそうな気もしますが…


さて、そんな欧州ですが、心配をよそに、株価の方は、堅調なのです。
この点、納得のいかない方も多いのかと思います。
株価が堅調な理由、周辺国の国債が買われた理由は、29日の3年物LTROへの期待感だと思います。
一説には、1兆ユーロの入札という予想すらあります。

なぜ、こんなに盛り上がるのでしょうか。
欧州の銀行は、ユーロ建て無担保優先債(カバードボンド)を発行して資金調達をしているのですが、コメルツ銀行の試算によりますと、この平均のコストが4.3%となっているようで、3年物LTROのコストは1%なわけです。
ということは、単純に3.3%もお得なわけです。

つまり、大雑把な計算で、市場の想定通り、1回目と2回目のLTROが合計1兆2000億ユーロ(5000億と7000億)に達すれば、3.3%が3年間お得な状態ですので、合計約1200億ユーロの利払い節約が出来る計算になります(=銀行の利益)。
これは、金融機関にとって、おいしいわけです。

振り返れば、2008年の金融危機の時、FRBは、ピーク時に1兆2000億ドルの資金供給を行いました。
BBGの調査では、そのとき、米銀は130億ドルの利益を得たと推定しています。

いかに、ECBの3年物LTROの威力がすごいか!
29日の2回目に、7000億から8000億の入札があると言われるのも、こういう「おいしい話(Free Lunch)」があるからです。

だから、ギリシャが、おかしなことになっていても、南北問題が勃発しそうな気配があっても、マーケットは、崩れないのです。
株式市場や周辺国の国債は、この

大事なことは、最初は、その影響力が未知数であったこと、しかし、1回目の実施で、その威力に震え上がったのです。
が、今は、すでに、その威力がわかっているので、マーケットとしては、その威力を(仮にどんなにすごい威力であっても)織り込みつつあると思います。
だから、今の金融市場は、平穏無事なのです。
逆に言えば、2回目以降は、セーフティネットはなくなるのです。

もちろん、3回目があるのかもしれませんが…
今のところ、ECBも無尽蔵に流動性供給を行うとも思えません。
あくまで、金融システム維持のためなのです。

実際、ユーロ銀行株指数は、昨年の11月末のボトムから40%以上上昇しています。
いかに、欧州の銀行の信用維持や収益、つまり、金融システムの維持にプラスであったかと言うことです。

私は、すでに、2回目の分、推定で7000から8000億ユーロ分、いや、1兆ユーロくらいまでは織り込んでいるように思うのです。