◆◇地場者の立ち話~番外編~◇◆  2012/06/16(土)発行

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◆◇地場者の立ち話~番外編~◇◆
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T「今週は週末にギリシャ再選挙を控えていることもあって、様子見感強い手控え
相場だった。」

M「ああ。商い低調が続いているし、完全に様子見相場だな。日経平均の動向もか
なり狭いレンジでの揉み合い相場であり、方向性は全く見えない展開だった。」

T「日経平均、今週も先週末比では上昇して引けているが、25日移動平均線を越え
そうで越えられずだ。ただTOPIXは昨日微妙に越えて引けたが・・・。」

M「週明けは、ユーロ圏がスペイン金融機関に向けた1000億ユーロの支援が決まり
好感されたものの、賞味期限は非常に短く好感する買いは続かなかった。」

T「ああ。月曜日の日本株は終日強かったといえるが、その晩の欧州株は結局下げ
て引けたところが多かったからな。」

M「何よりもスペイン国債利回りが上昇した事がやはり重しとなった。スペイン金
融機関への資金支援で、懸念収まるかと思いきや、スペイン政府債務が増えるとの
見方から、スペイン国債が売られ利回りが上昇した。」

T「しまいには1000億ユーロでも足りない何て話も出てきたからな。」

M「確かに足りない恐れはあるだろう。スペインの金融機関の財務が厳しくなって
いるのは、不良債権の増加によるものだ。不動産市況が大きく下落しており、銀行
不良債権が急増している。」

T「まさに以前の日本と一緒だな。」

M「ああ。あの時に日本は金融機関に公的資金注入したが、最終的には想定以上の
金額を突っ込んでいる。結局、不動産市況の下落が止まらない限り、銀行の不良債
権は膨らみ続けることになるからな。」

T「しかもユーロ圏がスペイン金融機関の為に資金支援するといっても、結局スペ
インに貸すと言うことだろ。返す義務はスペインの金融機関ではなく、スペイン政
府にある。」

M「ああ。今の決まりではEFSFやESMからは直接金融機関に融資は出来ない。それを
するには条約改正する必要がある。ただドイツなどが反対している。」

T「だから、スペイン政府が借りて、それを金融機関へ公的資金として注入すると
言うわけだな。」

M「ああ。あくまでもスペインの債務であり、それだけにスペインの政府債務が増
加することになる。」

T「それに、その資金の出所がEFSFなのかESMなのか、まだ決まってもいない。」

M「ああ。恐らく7月に創設する欧州金融安定メカニズム、いわゆるESMからの支援
になると見られているが、そうなると既存のスペイン債が劣後債になってしまう。」

T「劣後債とは債務返済の順位が劣る社債のことだな。」

M「ああ。ESMは一般債権つまり国債などより返済優先順位が高い。つまりもしスペ
インがデフォルトとか、ギリシャのように債務削減などという状況になった場合、
ESMから借りている資金を優先的に返すと言うことになる。」

T「つまり既存のスペイン国債はその次と言うことになるんだな。」

M「ああ。それでスペイン国債が売られたという事だろう。」

T「もう一つ資金の出所として言われているのが欧州金融安定フェシリティ、いわ
ゆるEFSFだな。こっちなら、まだ良いということか。」

M「ああ。EFSF債はスペイン債より優先されるモノはならない。まあ同レベルと言
うことだ。つまりスペイン国債は、劣後債にはならないと言うわけだ。」

T「でもEFSFはいずれESMに引き継がれるんだろ。」

M「ただ引き継がれたものに関しては、優先順位が上がることは無い事と言う話だ
。」

T「なら、EFSFから出せば良いんじゃないのか。」

M「そんな簡単な話でもない。やはり貸し手としては、優先順位が一般債権より高
いESMから拠出したいというのは当然だろう。一部の国ではEFSFから出すなら担保を
取るべきだとの話も出ている。」

T「なるほどね。そりゃそうだわな。」

M「結局、スペイン金融機関救済のために1000億ユーロ支援すると言ったって、詳
細なんて何も決まっていない。市場を落ち着かせるために、急遽合意したような事
なんだろう。」

T「市場はそれを見透かしていて効果は限定的だったと言うわけだな。」

M「ああ。効果どころか、スペインの格下げまで呼び込んでしまった。それにより
スペイン10年債利回りは、ついに危険水準と言われる7%台に乗せる場面も見られた
。」

T「でも、その割には株式市場や為替市場は落ち着いていたといえる。」

M「そうだな。米国で金融緩和期待が高まったことや、スペイン債利回りが7%台に
乗せたことから、何らかの対策を打ち出すとの期待が高まった。実際その日の内に
、主要中銀が協調して流動性供給する用意があると報じられた。」

T「ギリシャ選挙の結果次第では混乱を押さえるため手を打つと言うことだし、来
週はしっかりとした展開が期待できるんじゃないのか。」

M「ギリシャ選挙の結果にかからずということか・・・。」

T「ああ。」

M「ただ、対策打つといっても、やることもある程度解っている訳だからな。果た
して流動性供給しても市場は好感するのだろうか。」

T「なるほど・・。確かにそうかもな。」

M「しかし、それに加えて米国が金融緩和に踏み切ったりすれば別だ。来週はFOMC
も控えているしな。それに、日銀だってECBだって、いざとなれば緊急会合開くよう
なこと言っているし、流動性供給の他に何らかの策を打ち出すと言う期待はある。」

T「なるほど。ただ出来きれば反緊縮派の急進左派連合が勝つのではなく、新民主
主義党に勝って欲しいけどな。それも大差を付けて・・。」

M「可能性はあるだろう。一昨日には新民主主義党が有利だとの非公式の世論調査
が報じられている。ギリシャは選挙2週間前からの世論調査が出来ないことになって
いる為、あくまでも非公式で信憑性も乏しいけどな。」

T「でも、新民主主義党が優勢との報道をうけ、その日のギリシャ株は暴騰したん
だよな。」

M「ああ。10%も上昇した。」

T「それはつまり、市場も新民主主義党の勝利を願っていると言うことだろ。ある
意味、それはギリシャ国民の意思でもあるといえるんじゃないのか。」

M「そうだな。それだけに実際に選挙では、新民主主義党に投票する国民は多いか
も知れない。結局、蓋を開けてみれば新民主主義党など緊縮推進派の圧勝という結
果になったりしてな。」

T「なら良いのだが・・・。」

M「とにかく否応無しに週明けには結果が出る。問題はその結果ではなく、その結
果を受けどう行動できるかどうかだな。」

T「そうだな。まあ、良い方向に進んでいくよう期待したいモンだ。」