◆◇地場者の立ち話~番外編~◇◆  2012/09/15(土)発行

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◆◇地場者の立ち話~番外編~◇◆
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T「今週は強い展開となった。重要イベントが複数あったが、全て無事通過した格
好だ。」

M「ああ。水曜日にはドイツ憲法裁判所がESMの合憲判断を下した。まあこれは想定
はされていたが、万が一を考えれば懸念もあったといえる。」

T「そうだな。でも無事通過し安心感に繋がった。」

M「それに何と言っても13日に発表されたFOMCの結果だな。」

T「そうだな。今週はやはりこれが大きい。FOMCではQE3を見事に決定した。」

M「まあ、事前になってから徐々に期待感は高まっており、結構な織り込み具合だ
ったといえるんだが、それでも市場の期待を裏切らない内容だった。」

T「その辺はさすがだよな。FRBは市場の期待を上回るQE3を打ち出したんだから。」

M「ああ。住宅ローン担保証券、いわゆるMBSを毎月400億ドル買い入れることを決
定した。しかも期限は設けず、オープンエンド型とした。つまり無期限だ。」

T「やはり、そのオープンエンド型というのがサプライズとなったようだ。」

M「ああ。事前にオープンエンド型を予測していたエコノミストも結構いるんだが
、そいつらにしてみても、まさか本当にやるとはという感じだったと思われる。」

T「だよな。それだけに出尽くしとならず、改めて好感されたんだろうしな。」

M「買入期間の期限を設けないということは、ある意味買入金額が総額で幾らにな
るかが解らないということだ。つまり言ってみれば規模は無制限ということになる
。」

T「先日、ECBが打ち出した南欧国債の買入計画も規模上限は決めずに無制限とした
。」

M「ああ。ECBに次いで、FRBも大胆な金融緩和を打ち出したことになる。前回2010
年11月に決めたQE2は、6000億ドルと上限を決めていた。期間も2011年6月までと約
8ヶ月間と決めている。」

T「つまり月々で言えば、750億ドル程度だな。」

M「ああ。買い付け対象は長期国債だが、月々買い付ける量はQE3の方が小さい。た
だ今回はオープンエンド型ということであり、QE2以上の期間になる可能性もある。」

T「そうだな。労働市場が大幅に改善するまで買入を続けると言っている。曖昧だ
が、大幅に改善と言っているだけに、結構長引くという可能性もある。」

M「ああ。つまり買入規模の総額はQE2も大きく上回る可能性も当然あるというわけ
だ。しかも状況次第では、買入額の増額や新たな緩和策も検討すると言っている。」

T「結局、何でもやるぞってことのようだ。」

M「そうだな。あとECBは不胎化だが、FRBは非不胎化だ。この違いも結構でかい。」

T「なんだ、その不胎化とか非不胎化って?」

M「不胎化というのは、国債MBSを買い入れる際に新たなお金を発行するんだが、
それにより市場に出回る通貨流通量が増える。増えた分を別の形で、市場から回収
すると言うことだ。」

T「つまり結果的には市場に出回る通貨流通量は増加しないと言うことか・・・。」

M「ああ。それが不胎化だ。ECBは今回不胎化国債買入にしている。不胎化のメリッ
トは通貨流通量が増えないため、インフレが抑えられると言うことだ。」

T「逆に非不胎化というのは、市場から資金を回収しないということだな。」

M「ああ。つまり買入を行えば行うほど、市場に出回っている通貨流通量は増えて
くる。つまり、それだけドルの価値が低くなっていくと言うことだ。」

T「それはドル安要因にもなるし、過剰流動性状態になっていくと言うことだな。」

M「ああ。それは株高要因にもなる。副作用としては商品相場なども上昇要因とな
るし、やはりインフレ懸念も強いだろう。」

T「まあ、今は米国もインフレ懸念は乏しい状況だけに問題はないが、このまま緩
和続けると何処かでインフレ加速という恐れもあるからな。」

M「ああ。それだけは注意して金融政策していくしかない。今回一部では不胎化QE
という手段を執るのではという見方もあった。やはり非不胎化にすると原油高など
資源高が懸念だし、資源高は中国など新興国にはインフレ懸念に繋がる。それだけ
に反感も買うことになるからな。」

T「でも米国は容赦なく踏み切った。」

M「ああ。これは明確にFRBは米株価を上げたいということだ。確かに米国の場合、
株高が景気浮揚に繋がりやすいからな。もちろんFRBは株価を上げたいなんて事は
口には出さないが・・・。」

T「普通は逆だよな。景気が良くなっていくから株価が上がる。」

M「ああ。でも米国は富裕層も多いし、株を保有している率も日本人なんかより圧
倒的に多い。それだけに株高は、個人の購買意欲をかき立て消費の改善に繋がりや
すい。結果、景気を良くする。」

T「まあ、米株高は日本にとっても悪い話でもないからな。日本株を売買している
多くは海外投資家なんだし・・・。」

M「そうだな。ただ円高懸念はやはりネックだろう。今後、ドルはどんどん増えて
くるんだ。果たして幾らリスクオンになったからといって、ドル買いに繋がってい
くのかどうか・・・。」

T「そうだな。ただ今回、買い付け対象がMBSというのも日本にとっては良いとの声
もあるようだ。長期国債と違って、長期金利低下に繋がりにくい。」

M「ああ。米長期金利が低下していけば、日米金利差が広がって円高へと繋がりや
すくなる。でも、MBSなら、それほど長期金利低下に繋がらない。」

T「そうだな。実際、QE3発表された一昨日の米国市場では、長期金利は言うほど下
げていなかった。昨日にあたっては大きく上昇していた。」

M「まあ、昨日はミシガン消費者信頼感指数が随分と強い数字になったという影響
もあるんだが、いずれにしろ長期国債買い入れるよりは、長期金利低下には繋がり
にくい。」

T「日本にしてみれば、それは好感できることだな。QE3は大歓迎だが、やはり副作
用として円高が懸念されていたからな。」

M「ただMBSだろうが長期国債だろうが、ドルの流通量が増えてくるのは間違いない
ことだ。つまり日本円の流通量が増えなければ、理屈的には当然ドル安円高に向か
いやすい。MBSと長期国債の違いは、ドル安円高圧力が違うというだけであり、決し
MBSならドル高円安に繋がると言うことではない。」

T「確かに・・。でも昨晩は結構円安へと進行した。」

M「投機筋による円買いポジションはかなり高まっていたからな。QE3で出尽くし的
に円買いポジションクローズしてきた向きも多いんだろう。それに米国が大胆な緩
和策を打ち出したことにより、日銀も追加緩和に踏み切るとの期待が一気に高まっ
てきた。」

T「それも円売りドル買い要因になっていると言うことか・・・。」

M「ああ。それだけに、来週の日銀金融政策までは円安基調が続く可能性はあるか
もな。あとは日銀次第だ。期待以上の緩和策を打ち出せば、本格的に円安基調にな
っていくだろうし、期待はずれに終われば、改めて円高へと進みそうだ。」

T「緩和見送ったりすれば最悪だな。」

M「緩和するにしても規模によって失望される懸念もある。」

T「そうだな。ECBから、FRBへと渡ってきたバトンが、いよいよ日銀に渡された訳
だな。」

M「ああ。正直、今までの日銀の行動を見る限り期待は出来ないが、FRBが付けたこ
の勢いを止めないで欲しいモンだな。」

T「そうだな。期待したいモンだ。」