『スター・ウォーズ』最終章で、レイはダークサイドに落ちてしまうのか?:新予告編から見えてきたこと

スター・ウォーズ』最終章で、レイはダークサイドに落ちてしまうのか?:新予告編から見えてきたこと

シリーズ最終章となる『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の新しい予告編が公開された。映像のなかでは新しいライトセーバーをもつレイの姿が明らかにされたが、その色は赤。しかも黒いローブをまとっている。その意味するところとは?

TEXT BY BRIAN BARRETT
TRANSLATION BY WIRED(US)

WIRED(US)

シリーズ最終章となる『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の新しい予告編が、ディズニーのファンイヴェント「D23 Expo」で公開された。予告映像としては第2弾となるわけだが、第1弾以上に謎と示唆に富んでいる。
前半部分には過去のスター・ウォーズ作品からの映像が散りばめられ、トリロジーならぬ“ナノ”ロジーの様相を呈している。ファンなら思わずにやりとしてしまうはずだ。
後半には、いまは亡きキャリー・フィッシャーの新映像が含まれていた。もちろん、カイロ・レン(アダム・ドライヴァー)やレイ(デイジー・リドリー)が登場するシーンもある。それでもいちばん興奮させられたのは、やはり新しいライトセーバーだろう。
それぞれのシーンのスクリーンショットを撮って細部に目を凝らせば、何かわかることもあるかもしれない。C-3POの目が赤く光っていたり、スター・デストロイヤーの大群が出てくることが確認できる。ただそんなことよりも、これまで見たことのないライトセーバーに心を奪われようではないか。折りたたむと二重の刃に早変わりするライトセーバーだ!
メイス・ウィンドゥがもつ紫のライトセーバーや、カイロ・レンのクロスガード・ライトセーバーダース・モールのダブルブレードモデルと並ぶ、いわば変わり種のライトセーバーのひとつとして歴史に名を残すことは間違いない。

なぜブレードが2本あるのか?

このレイの新しいライトセーバーは、ダブルブレードモデルが進化したもののようにも見える。まっすぐにすればリーチが伸びるが、折り畳んでライトセーバーの2本持ちのようなかたちでコンパクトに使うことも可能だ。つまり、歩きながらカイバー・クリスタルの刃で床を傷つけずにすむ(ライトセーバーをオフにすればいいだけだろうという話もあるが)。
ブレードが2本あることの意義はなんだろう。ダメージが2倍になるだけでなく、2本の刃が並ぶようにして持てば、1回振るだけでふたつのものを同時に切れる。ただ、どちらにしても少しやりすぎなのではないだろうか。
それに、折りたたんで使うときに柄の部分をどう握るのかも気になる。ダブルブレードモデルの場合は中央の柄の部分がかなり長くなるので、持ち運びも不便そうだ。
Star Wars
©CAPITAL PICTURES/AMANAIMAGES

赤いライトセーバーと黒いローブの意味

ライトセーバーの形状のことばかり語ってしまったが、誰もが気を揉んでいるのはその色だ。赤いライトセーバーは暗黒のフォースの使い手であることのしるしで、しかもレイは黒いローブをまとっている。これは、レイが最終章のどこかでダークサイドに落ちてしまうか、もしくはフォースの闇の部分を受け入れることを意味するのだろうか。
ただ、なぜそんなことになるのか、そしてレイの親は誰なのかといったことばかりを考えて、時間を無駄にするのはもったいない。いまはディズニーからの贈り物である2分ちょっとの映像美を存分に楽しむことにしよう。
スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は12月20日に世界各地で同時公開される。ライトセーバーの技術革新とシスの敗北を目にする日が待ちきれない。



皮膚に貼るセンサーで、「水泳中の汗」の変化や水分補給のタイミングがわかる:米研究チームが開発

皮膚に貼るセンサーで、「水泳中の汗」の変化や水分補給のタイミングがわかる:米研究チームが開発

水中でかいた汗を計測・分析できるワイヤレスセンサーが、このほど開発された。皮膚に貼るパッチ型のセンサーで汗を分析して体調の変化を知らせたり、水分補給のタイミングを光で通知したりしてくれる。水泳やトライアスロンの選手のパフォーマンス向上に役立つというが、医療現場での活用も期待されている。

TEXT BY ERIC NIILER
TRANSLATION BY MISAKO ASANO/GALILEO

WIRED(US)

The device picks up sweat secretions from the person’s skin
このセンサーは人間の皮膚から分泌された汗をキャッチし、食用色素が混ざった化学試薬に流し込む。すると、汗の塩分レヴェルに応じてパッチの色が変化する。汗を計測するpH試験紙のようなものだ。PHOTOGRAPH BY JOHN ROGERS RESEARCH GROUP
スポーツチームは、アスリートがかいた汗を調べることでパフォーマンスを分析する。そしてスポーツ業界のメーカーは、汗をかいたときに飲むスポーツ飲料や、汗が乾きやすいウェアを陸上選手や自転車選手、テニスプレイヤーなどに売り込む。ところが、これまで水泳選手は蚊帳の外だった。
こうしたなかノースウェスタン大学の研究チームが、水泳選手の皮膚に貼りつける小さくて柔軟性のあるワイヤレスセンサーを開発した。水泳のトレーニングや競技の最中に、選手がどのくらいの水分を摂取する必要があるのかを計測する装置だ。

水の浸入を防ぎ、汗だけを検知

この装置は、人間の皮膚から分泌された汗をキャッチし、食用色素が混ざった化学試薬に流し込む。すると、汗の塩分レヴェルに応じてパッチの色が変化する。汗を計測するpH試験紙のようなものだ。体温や発汗率も測ることができる。

科学誌「Science Advances」に発表された論文執筆者のひとりで、材料科学を研究するジョン・ロジャースは「薄いピンクから濃い赤までの色を比較することによって、自分の電解質レヴェルを知ることができます」と説明する。「よく見るだけで、体の中で何が起きているのか把握できるのです」

このセンサーをうまく機能させるポイントは、外側の水がデヴァイス内に入らないようにしながら内側の汗を検知する設計だった。従来の水中用の汗センサーは、少し装着していると外れてしまったり、外側のプールの水と内側の汗という2種類の液体を分離しておくことができなかったりした。
この問題を解決するため、ノースウェスタン大学の研究者たちは極小の導水管の上に柔軟性のある複数層のソフトポリマーを被せ、水泳選手の皮膚の表面から汗を集めるようにした。また、従来のシリコーンベースのポリマーの代わりに、ポリスチレン‐イソプレン‐スチレン(SIS)でつくられたより水を通しにくい素材を採用した。

水分補給のタイミングを光で通知

汗を集める管には、ごく小さなヴァルヴシステムが組み込まれている。汗が管の中の少量の空気を押し出すことで、プールの水が入りこむのを防ぐ。ロジャースは、新しい素材とこれまでにない設計の組み合わせが見事に成功しているのと説明する。「そのおかげで水が入り込まず、汗だけが管の中を通るのです」
さらにこのセンサーには、汗のさまざまな成分や体温をリモートで計測し、こうしたデータをワイヤレスチップを通して近くにいるコーチに送る装置も追加できる。小さなLEDライトもついており、水泳選手やトライアスロン選手に、いつ水分補給すればいいかのを教えてくれたりもする。
the sensor's microfluidic channels
センサーのマイクロ流体の管の色が変化することで、装着している人がどれだけ汗をかいているかわかる。VIDEO BY JOHN ROGERS RESEARCH GROUP
ロジャースはこれまでにも、生体液を測定するデヴァイスを開発している。そのひとつが、家電見本市の「CES」でロレアルと共同発表したデヴァイスだ。肌のpH値を測り、ユーザーが自分に合う化粧品や日焼け止めを選ぶ参考にできる。これに対して今回開発したのは、水中で使える初めてのデヴァイスとなる。

医療現場での応用も

プロジェクトの発端は、ロジャースがノースウェスタン大学の男子水泳チームのコーチと話をしたことだった。「水泳選手の発汗量や電解質が失われた量を理解することに、コーチは興味を示していました」と、ロジャースは振り返る。「脱水症状はパフォーマンスに影響しますし、けいれんにもつながりかねません。それなのに、どのくらい水分を摂取する必要があるのか、さっぱりわからないというのです」
そこでロジャースのチームは被検者をエアロバイクに乗せ、25セント硬貨より少し大きいサイズの新しいセンサーをテストした。実地試験では、プールでトレーニングする人や、ハワイのコナで開催されるトライアスロン競技に向けて海でトレーニングする選手などにテストを実施した。
ロジャースによると、このセンサーは医療の現場で役立てることもできるという。新生児や年配の患者たちの汗を採取するために、いちいちトレッドミルで運動させる必要はない。入浴やシャワーなどでちょっと体が温まれば、汗を採取して分析できるという。

トライアスロンに最適?

この新しいセンサーについて、ある専門家はトライアスロン選手に理想的かもしれないと言う。ひとつのコースで何時間も運動を続け、その間ずっと体の状態を注意深くモニターする必要があるからだ。
マサチューセッツ工科大学の実験的学習グループで生物学と化学を担当し、スポーツにおける化学について教えているパトリシア・クリスティーは、「もっと効果的にトレーニングしたいと思えば、自分の体をマシンであると考えたくなるものです」と語る。
クリスティーは競争力のあるトライアスロン選手たちと一緒にトレーニングしているが、厳しいプールでの訓練の前にどの程度の水分をとったらいいのか、よくわからないという。それに体が水に濡れると、心拍数モニターでの計測も難しくなる。
「最高のトレーニングをするために自分という“マシン”に燃料補給し、コンディションを整えたいのです」とクリスティーは言う。「トレーニング中に汗を採取して分析できれば、実際のレースで何が起きるかのを予測できますから」

【閲覧注意】菌に乗っ取られて“ゾンビ化”するアリは、筋肉だけを強制的に操られていた:研究結果

【閲覧注意】菌に乗っ取られて“ゾンビ化”するアリは、筋肉だけを強制的に操られていた:研究結果

ある種の菌がアリの体をむしばみ、まるでゾンビのように操って次のターゲットを狙う──。そんな恐ろしい“ゾンビ化”のメカニズムの一端が、米国の研究チームによって解明された。どうやらアリは菌に脳を支配されるのではなく、脳が機能したまま筋肉を強制的に操られているようなのだ。閲覧注意な写真とともに、そのメカニズムを説明していこう。

TEXT BY MATT SIMON
TRANSLATION BY TOMOYUKI MATOBA/GALILEO

WIRED(US)

Zombieant
PHOTOGRAPH BY ALAMY/AFLO
※この記事には寄生菌に侵されたアリの写真が含まれています。注意してご覧ください。
ある種の菌が、アリの体内に侵入したあとで組織全体をむしばんで成長する。そして宿主であるアリを木に登らせ、小枝を噛ませることで体を固定する。もはや用済みになってしまったアリが死ぬと、その頭の後ろの部分を破裂させて胞子を雨のようにばらまき、木の下にいるほかのアリたちを狙う──。
その驚くべき複雑なメカニズムを、いったいどう理解したらよいのだろう。菌がアリを“ゾンビ化”させる集団感染現象を科学者たちは理解できず、永遠に謎のままなのだろうか?

ペンシルヴェニア州生物学者たちは、このタイワンアリタケ(Ophiocordyceps unilateralis)と呼ばれる菌の一種が宿主を操る驚くべき仕組みを研究してきた。そして2019年7月、研究者たちはパズルの1ピースの正しい位置を突き止めた。菌がどうやってアリに小枝を噛ませるのかを解明したのだ。その真相は「アリ殺しの菌」というイメージに違わぬ、じつに卑劣なものだった。

筋肉が強制的に収縮状態に

タイワンアリタケの胞子がアリの外骨格に付着すると、まず硬い外殻を侵食していく。そしてやがて、どろどろして栄養豊富な内部に入り込む。そこで菌糸と呼ばれる管を体中に伸ばし、哀れなアリの筋肉を貫通するネットワークを形成する(このときのアリがどんな気分なのかについては、わたしたちが永遠に解こうと思わない謎かもしれない)。
この菌は想像を絶する方法でアリの行動を操作するのだが、実は脳には侵入しない。代わりに脳の周囲と、大あごを制御する筋肉のなかで成長する。これらは噛みつき攻撃の際に使われる部位だ。
ペンシルヴェニアの研究チームは走査型電子顕微鏡を使って、死にかけたアリの大顎の筋肉を観察した。分子生物学者のコリーン・マンゴールドは、「観察できたのは、(菌によって)筋肉が強制的に収縮状態にされている様子でした」と説明する。彼女を筆頭著者とする論文は、学術誌『Journal of Experimental Biology(実験生物学ジャーナル)』に掲載されている。
A scanning electron microscope image of ant muscle covered in tubular fungal cells.
走査型電子顕微鏡で観察した、菌糸に覆われたアリの筋肉。細胞間の結節点に注目してほしい。PHOTOGRAPH BY COLLEEN MANGOLD
興味深いことに、菌は筋繊維の周囲のさやのような部分(筋繊維鞘)を破壊していたが、神経筋接合部は無傷だった。後者は、ニューロンが筋肉を動かすためのコミュニケーションが行われる部分だ。
「神経筋接合部が残っていることから、感染後も脳からの中枢神経系信号はおそらく伝達されていて、それが筋収縮を引き起こすと考えられます」と、マンゴールドは言う。つまり、菌は筋肉に侵入して有無を言わせず破壊するが、脳からのコミュニケーションを遮断しているわけではない。

湧き上がる新たな疑問

ここからが重要だ。菌は筋肉を強制的に最大限に収縮させ、筋繊維を破壊することで二度と大あごを開けなくしているようなのだ。マンゴールドの仮説によれば、「アリが目的地に到着して小枝を噛んだ瞬間、菌が同時に何らかの物質を放出して筋肉の強制収縮をもたらし、死のひと噛みになる」というわけだ。
かくしてゾンビとなったアリは寄生菌の運び屋となり、菌は引き続きアリのコロニーを餌食にすることになる。
A zombie ant in its final death grip.
「死のひと噛み」のまま硬直したゾンビアリ。頭の後ろから突出した子実体は、下を歩くほかのアリたちに胞子の雨を降らせ、コロニーに寄生感染を広める。PHOTOGRAPH BY KEN FLEMING
自然界屈指の複雑な宿主操作のメカニズムの一端が明らかになったわけだが、この研究からは新たな疑問も湧く。なかでもマンゴールドらが注目しているのは、菌の細胞に付着している小さな球体で、彼女らはこれらを「細胞外小嚢状粒子」と呼んでいる。
「これが何なのか、さっぱりわかりません」と、マンゴールドは言う。「菌に由来するのか、宿主に由来するのかさえ不明ですが、大あごの筋肉の収縮を引き起こすことに関係しているのかもしれません」
さらに不可解なことに、これらの粒子は白きょう病菌(Beauveria bassiana)という、宿主をゾンビにこそしないが同じく筋繊維鞘を破壊する寄生菌に感染したアリにも見られるものだった。
どちらの菌にとっても、宿主の筋繊維鞘を破壊することは、筋肉内部の真菌コミュニティに栄養を届ける突破口を開くうえで役立っている可能性がある。そしてタイワンアリタケの場合、筋繊維を露出させることで、アリの操作に必要な何らかの毒を注入しやすくなるのだろう。
こうして研究者がゾンビアリの謎をひとつ解いたが、そのとたんに新たな謎がいくつも現れた。とはいえ、自分の筋繊維に菌が侵入する感覚を知らずに済むのであれば、わたしたちとしては満足と言えるだろう。

時速350km超! 二重反転式ローターの次世代ヘリコプター、その驚くべき実力が試験飛行で見えた

時速350km超! 二重反転式ローターの次世代ヘリコプター、その驚くべき実力が試験飛行で見えた

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 米国のシコルスキー・エアクラフトが開発している次世代ヘリコプター「S-97 RAIDER(レイダー)」は、二重反転ローターと後ろ向きプロペラを組み合わせることで、従来のヘリの限界を超える時速350km以上のスピードと高い機動性を実現している。その驚くべき実力の一端が、試験飛行からも見えてきた。

TEXT BY ERIC ADAMS
TRANSLATION BY GALILEO
WIRED(US)
米国のヘリコプターメーカーであるシコルスキー・エアクラフトは、米陸軍の将来型偵察攻撃機(FARA)プログラムに基づき、現行の軽攻撃偵察ヘリコプターの後継機として、この独創的で高速な「S-97 RAIDER」を売り込もうとしている。PHOTOGRAPH BY ERIC ADAMS 米国のヘリコプターメーカーであるシコルスキー・エアクラフトは、米陸軍の将来型偵察攻撃機(FARA)プログラムに基づき、現行の軽攻撃偵察ヘリコプターの後継機として、この独創的で高速な「S-97 RAIDER」を売り込もうとしている。PHOTOGRAPH BY ERIC ADAMS
朝の7時だというのに、南フロリダの暑さと湿気に息が詰まりそうだ。メガネは曇るし、まるで皮膚にアイロンをかけられているような気分になる。滑走路のすぐそばにある濁った池に潜んでいるワニは、ひょっとするとベル・ヘリコプターから送り込まれたスパイかもしれない。国防総省の次世代垂直離着陸機の調達を巡る契約獲得において、ベルは米国のヘリコプターメーカーであるシコルスキー・エアクラフトにとって最大の競争相手なのだ。

シコルスキーの先進的な新型ヘリコプター「S-97 RAIDER(レイダー)」の試作機のテストは、うんざりするほど蒸し暑いウエストパームビーチにある同社の施設で実施された。ところが気候についての不満は、2,600馬力のタービンエンジンがうなりを上げて胴体の上にある二重反転ローターを勢いよく回し始めると、海風とともに吹き飛ばされてしまった。

S-97 RAIDERの特徴は2段重ね(同軸)のローターと、見慣れた横向きのテールローターの代わりに後ろ向きのプロペラを組み合わせた複合設計の採用にあると、シコルスキーは説明する。この構造は高速でありながら静かで、しかも機動性が高いという。

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ロッキード・マーティン傘下のシコルスキーは、米陸軍の将来型偵察攻撃機(FARA)プログラムに基づき、現行の軽攻撃偵察ヘリコプターの後継機として、このS-97 RAIDERを売り込もうとしている。同じ基本レイアウトをもつ「SB-1 Defiant(デファイアント)」も、将来型垂直離着機(FVL)プログラムを通じてツインエンジンのヘリコプター「UH-60 ブラックホーク」の後継に名乗りを上げている。

実証されるべき課題
どちらの機体についても、設計には実証されるべき課題が多くある。例えば、パイロットに新たな技能の習得を求めないことや、比較的安価で信頼性が高く、メンテナンスが容易であることが挙げられる。そして最も重要な課題として、過去の機体や競合モデルより実戦において優れていることだ。軍事勢力圏の拡大に寄与する長い航続距離や、絶えず進化する“敵”の航空機に対抗する能力も求められる。

陸軍が新型ヘリコプターの導入に熱心な理由のひとつは、戦う相手が小型ドローンや簡易爆発物などを用いて軍事拠点を攻撃してくる傾向が強まっていることにある。このため米軍は、これまで以上に戦闘地域から離れた地域に駐屯するようになってきている。つまり、航空機がより長い距離を、より高速で飛ばねばならないことを意味する。
シコルスキー・イノベイションズのバイスプレジデントであるクリス・バン=ブイテンは、「戦闘地域に出入りしながら生き残るには、超低高度で飛ぶ能力も必要とされます。これは障害物や脅威が多い環境のなか可能な限り地面に近いところを飛び、クラッター(レーダーのノイズ)のなかに隠れるためです」と説明する。
従来型より静かな「静音モード」も披露
この日の飛行テストは、さまざまな機動能力に関するデータを集めながら、メディアやパートナー企業、サプライヤーに機体をデモンストレーションすることを目的としていた(軍関係者向けには、すでに視察用に複数回の飛行テストが実施されている)。
S-97 RAIDERは約20分間のテストで、横方向への飛行や、地上の固定点を中心としたピルエット飛行を行い、完全に電動化されたフライ・バイ・ワイヤー制御ならではの低速での敏捷性を証明してみせた。

S-97 RAIDERは、地上の物体を視認しやすいように機首を下げた状態でホバリングを維持できる(従来型のヘリコプターでは、どうしてもドリフトが生じる)。これが可能なのはリアプロペラがあるからだ。格納庫の屋上に設けられた展望台から見学させてもらったが、2名のテストパイロットがその日のテスト項目を消化する間、S-97 RAIDERはずっと安定した姿勢で正確にコントロールされていた。

さらにS-97 RAIDERは、リアプロペラを止めて普通のヘリのように飛ぶ「静音モード」も披露した(シコルスキーはデシベル値を公表していないが、確かに同等サイズの従来型ヘリよりはるかに静かだった)。
時速380km超の実力
パイロットのビル・フェルとクリスチャン・コリーは急減速に続いて、リアプロペラのピッチを変えて前進から後退飛行へと移るデモンストレーションを実施した。さらにそこから、この機体の最大の長所である高速前進飛行を見せてくれた。

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彼らは飛行場の上空を何度か通過しながら、時速218マイル(同約350km)の最高速度を記録した。高速飛行で発する音は、この21世紀における“未来の航空機”でありながらも、まるで第二次世界大戦中の英空軍の戦闘機「スーパーマリン スピットファイア」を思わせるものだった。

過去のフライトでは時速238マイル(同約383km)を記録したこともあり、S-97 RAIDERはさらに速く飛べる可能性もありそうだ。比較のために言えば、いま陸軍が使用している軽観測戦闘ヘリ「ベル OH-58 カイオワ」の最高速度は時速138マイル(同約222km)にとどまる。


S-97 RAIDERの速さには、デュアルローターという構成と後部の推進プロペラの両方が貢献している。メインローターは、シコルスキーの「アドバンシング・ブレード・コンセプト」から生まれたものだ。これは1970年代初めに考案されたシステムだが、高コストと技術的な難しさの壁に直面して、なかなか実現しなかった。

2組のローターならではの利点
このシステムでは、反対方向に回転する2組のローターを用いることで、速度が上がるにつれて揚力が減少する従来型のヘリコプターの欠点を打ち消している。
簡単に説明すると、前進飛行しているヘリコプターのローターが水平な円を描いて回っているとき、そのブレードは片側では飛行方向に向かって前進し、反対側では後退していることになる。ヘリコプターの速度が上がるとブレードの後退側は、前進側と比べて揚力が減少したり、あるいは失速状態になったりする。後退する側は前から後ろへ流れる空気に対して相対速度が遅くなるからだ。
2つのローター面がそれぞれ反対方向に回っていれば、この効果を互いに中和して、最高速度を大幅に高めることができる。また二重反転ローターなら、シングルローターの際に胴体に対して発生するトルクが生じず、従来型のヘリコプターの後部にあるテールローターを必要としない。この原理を利用してシコルスキーの技術者たちは、横向きのテールローターの代わりに後ろ向きのプロペラを設けたのである。

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前進飛行中はエンジンパワーの大部分がこのプロペラに伝達され、2つのメインローターは揚力の維持に最低限必要な速度で回るだけになる。つまり、このときローターは、飛行機の主翼と同じ働きをしているわけだ。
一方、低速機動の際にはリアプロペラにはほとんど動力が伝わらず、そのほとんどがパワーを必要としているローターへと送られる(たとえリアプロペラが破損したり完全に破壊されたりしても、ヘリコプターのコントロールはローターだけで維持できる)。
二重ローターならではの工夫
シコルスキーは2008年から11年にかけて、実験機「X2」でこのシステムに磨きをかけた。S-97 RAIDERは15年に初飛行しており、より高速でパワフルなデファイアントが続いたのは19年初めのことだった。

2組のローターが接触しないように、シコルスキーは特別に剛性の高いブレードをつくった。このためS-97 RAIDERのブレードは、従来型のヘリコプターのブレードのように弾んだり、たわんだりしない(これまでにも同軸の二重反転ローターを用いたヘリコプターの例はいくつかあり、多くはロシアの航空機メーカーによる。これらは従来型のしなやかなブレードを用い、より複雑な構造のハブにブレードを取り付けていた)。

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上下のローターの間隔は3フィート(約91cm)で、やや広めになっている。それでも17年8月の飛行テストでは事故が起きた。低高度で飛行中にローター同士が接触し、機体が墜落したのだ。幸いにもクルーにけがはなかった。

バン=ブイテンによると原因はソフトウェアの問題で、通常のヘリコプターでは絶対にありえないほど機体が激しくロールしたのだという。「これはすでに対策済みで、同じようなことが二度と起きないように追加の予防策も講じました」と、バン=ブイテンは言う。「ハードウェアの見直しや変更は必要ありませんでした」
敏捷性が高いがゆえのメリット
軍関係者に高く評価されそうな特徴はスピードばかりではない。この機体のもうひとつの大きな長所は、機動性の高さにある。テストパイロットのフェルは、S-97 RAIDERの優れた飛行性能について、高剛性のローターブレードによるところが大きいと語る。
「ほかのヘリコプターでは、操縦のインプットと空力的な応答の間に一定のタイムラグがあります」と、フェルは言う。「剛性が高いローターなら、ほぼ瞬時に応答が得られるのです」。こうした高い機動性は、バン=ブイテンが極めて重要だと指摘する低高度での高速飛行に役立つ。

急減速が可能なことも、S-97 RAIDERの特徴のひとつだ。しかもリアプロペラがあるので、メインローターをブレーキとして使う必要がない。従来型のヘリコプターのようにノーズを上げた姿勢を取らなくてもいいし、同じ理由から、加速するときに機体を前傾姿勢にする必要もない。

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こうした違いには大きな意味がある。S-97 RAIDERのように、姿勢の制約が少なく必要に応じて機体を向けたい方向へと向けることができれば、結果としてクルーが火器やセンサーの狙いを定めたり、救命器具を用いたりといった作業が容易になるのだ。
自律飛行機能の採用も視野に

将来的にS-97 RAIDERは、シコルスキーが自律飛行機能(軍の専門用語で言えば、有人と無人を切り替えできる「オプショナリー・パイロッテッド」)を幅広く取り入れた最初の軍用機のひとつになる可能性が高い。この機能は、同社の自動操縦システム「マトリックス・テクノロジー・システム」に基づくもので、現在はブラックホークやその他の民間ヘリコプターを使ってテストが行われている。S-97 RAIDERの量産が本格化するころには、これも普及に向けた準備が整っていることだろう。

日本に迎撃ミサイル売却へ 米承認、3500億円

日本に迎撃ミサイル売却へ 米承認、3500億円

政治
北米
2019/8/28 8:21
【ワシントン=共同】米国務省は27日、日本に対し、日米が共同開発した改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」73発の売却を承認したと発表した。売却価格は計32億9500万ドル(約3484億円)に上る。
国防総省傘下の国防安全保障協力局は声明で、今回の売却に関し「日本に弾道ミサイル防衛能力の向上をもたらし、日本の国土と駐留米軍を守ることに寄与する」と強調。「日本への支援は米国の国益にとって極めて重要だ」とした。
韓国への対潜水艦用の魚雷31発、計7200万ドル(約76億円)の売却なども合わせて発表した。

日本外相「韓国よ、歴史は書き換えられないぞ」→韓国人「」

日本外相「韓国よ、歴史は書き換えられないぞ」→韓国人「」


韓日葛藤関係の根元に1965年の韓日請求権協定など歴史認識問題がある中で、河野太郎外相が「歴史は書き換えられない」と韓国に向かって強硬発言を投げた。
27日、毎日新聞によると、この日の河野外相は記者会見の中で、外国の記者が「韓国政府は、日本が歴史問題への理解が足りない」と指摘していると話すと、このように述べた。
河野外相は「日韓の間で最大の問題は、請求権協定のためのもの」と強調し「韓国が歴史を書き換えたいなら、これは不可能だということを知るべきだ」と主張した。
これは請求権協定の韓国の解釈が間違っており、これを絶対受け入れないという意味で解釈される。

成層圏ドローン、ソフトバンクなど開発競う

成層圏ドローン、ソフトバンクなど開発競う
人工衛星補完に期待

自動車・機械
北米
2019/8/28 6:31
【ニューヨーク=中山修志】天候などの影響を受けない成層圏を飛行するドローン(小型無人機)の開発競争が加速している。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは27日、欧州エアバスや米ボーイング、日本のソフトバンクグループの開発の取り組みを報じた。安価で操作性に優れるドローンは人工衛星を補完する技術として注目を集めている。
エアバスが開発中のドローン「ゼファー」のイメージ
エアバスが開発中のドローン「ゼファー」のイメージ
各社が開発中のドローンは太陽光から電力を得て成層圏を数カ月間飛行する。地上の画像を撮影したり、山間部や離島にインターネット接続サービスを提供したりすることをめざす。
エアバスは昨年、米アリゾナ州でドローン「ゼファー」の26日間の飛行試験に成功した。ゼファーは地上から約8時間で成層圏に達し、太陽光を電源として高度2万3000メートルを1日に約1700キロメートル自律飛行できるという。今月3日にはオーストラリア北部でも飛行試験を実施。この時は天候悪化で中断したが、年内に再試験を行う予定という。
ソフトバンクグループ子会社のHAPSモバイルは8月、ハワイ上空の成層圏でドローン「HAWK30」を飛ばす計画の承認を米航空当局から得た。2020年3月までに試験飛行を行う計画だ。
同社は8日に米フェイスブック南アフリカで行った上空からのインターネット通信用電波の送受信試験にも参加した。高高度まで気球を飛ばす米アルファベットの子会社ルーンにも出資。同社は年内にアフリカでインターネット接続サービスを開始する予定だ。
ボーイングはドローン技術の新興企業オーロラ・フライト・サイエンシズを2017年に買収。成層圏に到達可能なドローン「オデュッセウス」を開発中だ。翼長74メートルで軽量のカーボン素材を使い、太陽光だけでおよそ1年間の自律飛行が可能になるという。
エアバスボーイング成層圏を飛行するドローンは民間と軍用の双方で需要があると見ている。民間調査によると、成層圏を飛行するドローンや気球、飛行船などの売上高は今後10年で17億ドル(約1800億円)にのぼる可能性がある。現時点で約40の開発プロジェクトが進んでいるとみられる。