なぜ日本人は、最悪の事態を想定できないのか――新・言霊論(祥伝社新書289) [新書]

悪い事態を想定すると現実になる、「事故が起こる」と言えば実際に起こるから、口にしないし、考えもしない。この考え方は「言霊」の力によるもので、日本人は今も、その支配下にあり、これがある以上、危機管理はできない。福島第一原発で、事故への備えがまったくなかったのはなぜか?この謎を解く鍵も「言霊」にあった。永年、「言霊」の弊害を唱えつづけてきた著者は、二十一世紀になっても、政治、経済、社会、報道、あらゆる分野でまったく変わっていない日本の現状に、あらためて警鐘を鳴らす。

内容紹介

国会の原発事故調査委員会は今月6日に出した最終結論で、福島で起きた爆発は「深刻な人災」であるとして、企業や組織のなかに染みついた「日本文化」こそが原因だと結論づけました。ここでいう「日本文化」とは何か? 井沢元彦氏によれば、彼が長年唱え続けてきた「言霊」も、その一つです。 本書では、現代においても言霊の思想がいかに日本人の考え方を決定づけているかを検証していきます。本書を読めば、「口に出したことは実際に起こってしまうので、嫌なこと、あってはならないことは口に出さない、考えない」という言霊の思想が現代でも大手をふるって生き延びていることがよくわかります。 東京電力は、事故を想定すること自体が不吉なことだとして、地震津波という、充分想定される事態をないこととしてきました。そのことは、さまざまな調査・証言から明らかになっています。 一例を挙げると、事故処理のために国は30億円を投じて特注のロボットを造りましたが、東電は「事故は起きるわけがないのだからロボットはいらない」と言って、完成したロボットの納入を拒否しています。30億という税金が無駄になりました。 「事故」を「事象」、「老朽化」を「高経年化」などという言いかえも、言霊の考え方ゆえのことです。「冷温停止」ではないのに、「冷温停止状態」というのも同じです。 言霊という考え方がわかれば、どうして日本に悲劇的な事故が繰り返し起きるのかがわかります。同じ失敗を何度もしてしまうのは、最悪の事態から目を逸らすことしか考えない、 言霊の考え方ゆえのことなのです。 歴史に学ぶことの大切さを説く井沢史観による、平成ニッポン論!