ゲームに意外な効能 脳の「認知力」アップ

ゲームに意外な効能 脳の「認知力」アップ

2016/8/27 3:30

 話題の「ポケモンGO」をはじめ、非常に多くの人がスマートフォンやお茶の間のテレビでゲームを楽しんでいる。近年の研究によるとビデオゲーム、中でも展開が速いアクションゲーム(襲いかかってくるゾンビやエイリアン、モンスターなどと闘うゲームが典型例)には脳の働きを高める効果があることがわかってきた。

脳トレより効果的
 注意力や迅速な情報処理、課題の切り替えの柔軟性、頭の中で物体の回転を思い描く力など、様々な認知機能の向上が厳密な心理テストで実証されている。一例はスイスのジュネーブ大学などの研究グループが行った次のような実験だ。

 被験者としてビデオゲームをめったにしない人を集め、認知能力の事前テストを行った後、無作為に2つのグループに分ける。一方のグループはアクションゲームを、対照グループはソーシャルゲーム(プレーヤー間の交流を必要とするゲーム)などアクションゲーム以外のゲームをしてもらう。両グループは数週間にわたって1日1時間、週5日間ゲームをプレイする。このトレーニングの数日後に最初と同じ心理テストをすると、アクションゲームで鍛えたグループの方が対照グループよりも認知力の向上が常に大きくなった。

 アクションゲームの効果を示す証拠は脳画像からも得られている。アクションゲームをよくする人はしない人に比べて、大脳皮質の各所にある注意を制御する脳領域の活性がより大きく変化する。注意の維持に関与する背外側前頭前皮質や、異なる標的の間で焦点を切り替える頭頂皮質、そして自分自身の行動を監視している帯状皮質などだ。

 またある研究によると、腹腔(ふくくう)鏡手術を手がける医師がビデオゲーム好きのゲーマーである場合、十分な正確さを保ちながら短時間で手術を終えていることがわかった。ゲーマーの外科医はただ手早いだけではなく、仕事の効率もいいようだ。

 アクションゲームが攻撃性を助長したりゲーム依存を招いたりする懸念はあるが、認知機能に悪影響が出ることを裏付けた研究結果はない。むしろ一部のビデオゲームが認知能力をどのように高めるかがわかってきたので、脳損傷認知障害のある人向けの非暴力的なゲームの開発が米国などで始まっている。こうしたゲームは実際、テレビやウェブで認知能力を高めるとして売り出されている“脳トレ”ゲームよりも効果が高いようだ。