数十秒で死亡…いちエフ毎時500シーベルト超えの衝撃

数十秒で死亡…いちエフ毎時500シーベルト超えの衝撃 東電

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東京電力福島第1原発2号機の原子炉格納容器内部調査で撮影された画像。原子炉直下の足場が縦横約1メートル四方にわたって脱落していた。写真は同社が画像を合成(東京電力提供)

 東京電力福島第1原発(略称1F=いちエフ)2号機で16日まで行われた格納容器内調査では、毎時500シーベルトを超える高い放射線量が推計される場所が相次いで見つかった。人が近づけば数十秒で死亡するという極めて高い値で、ニュースは海外にも配信されたが、一部メディアが誤った形で伝えるなど、衝撃的な数値が独り歩きし始めており、東電などは火消しに追われている。

 「改めて申し上げますが、もともと燃料が持っている線量は数万シーベルトある。いまはそれを閉じ込めている状況で、530シーベルトや650シーベルトというのは、格納容器の中で確認したもの。新たに発生したわけではなく、外部に影響があるわけでもない」

 東電の岡村祐一原子力・立地本部長代理は9日の定例会見でこう訴えた。誤解に基づく情報が拡散しているためで、その後の会見でも東電は同様の説明を繰り返している。

東京電力福島第1原発2号機の原子炉格納容器内部調査で撮影された画像。原子炉直下の足場が縦横約1メートル四方にわたって脱落していた。写真は同社が画像を合成(東京電力提供)

 きっかけは東電が2日と9日に発表した放射線量だ。格納容器内調査で撮影した画像のノイズを東電が解析したところ、毎時530シーベルトと毎時650シーベルトが推計されたのだ。これまで福島第1原発で確認されている最大値が毎時73シーベルトだったことを考えると、桁違いの値で、記者会見でも驚きの声が上がった。

 これまでも個人が過剰反応してネット上に憶測や誤った情報を書き込むケースは見受けられたが、東電が今回、特に困惑しているのはメディアが誤った情報を流している点だ。個人の書き込みレベルではなく、メディアが流しているため、こうした情報が“真実”と誤解され、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを通じて次々と拡散しているのだという。

 東電によると、すでに削除されたものもあるが、例えば米国のニュースサイト「ギズモード」は、「事故のあった福島原発放射線量が上昇」といった見出しの記事を掲載している。

 明らかな事実誤認の記事で、高い放射線量は格納容器の中を調査した結果、初めて推計された値だ。決して上昇しているわけではない。福島第1原発では90カ所以上で放射線量を測定しているが、上昇した形跡はないという。

 こうした状況に、米原子力学会も「多くのメディアが発電所放射線量が上昇したと伝えているが、明らかな間違いだ」とする意見をホームページに掲載している。

 国内メディアでも中国情報サイト「レコードチャイナ」が「福島原発内で高い放射線量、中国外交部が日本への渡航に注意喚起」との記事を掲載した。

 記事では6日に行われた中国外交部の定例記者会見の中で、「日本への渡航に注意するよう呼びかけた」としているが、日本の外務省に確認すると、「新たに注意を呼びかけてはいない」という。

 外務省の担当者によると、定例会見では確かに「中国国民に適切な旅行計画を立てるよう提案する」と述べているが、福島県内に避難指示地域が残っていることから従来の発言を繰り返したもので、今回の高い放射線量が見つかったことを受けたものではないのだという。

 東電は16日の会見でも、元米国原子力規制委員会上級幹部のチャールズ・カスト博士の「新たなトラブルや周囲への放射線影響は発生していない」などとするコメントを公表した。東電の担当者は「説明不足で誤解を招いているとすれば申し訳ない。こうした情報は風評被害にもつながりかねないため、繰り返し説明し、誤解を正していきたい」としている。