ヘリ護衛艦「かが」就役4隻態勢 対中潜水艦戦に威力 米戦闘機発着も可能

ヘリ護衛艦「かが」就役4隻態勢 対中潜水艦戦に威力 米戦闘機発着も可能

産経新聞 3/23(木) 7:55配信

 海上自衛隊最大の護衛艦「かが」が22日、横浜市のジャパンマリンユナイテッド磯子工場で就役した。空母のように艦首から艦尾まで平らな「全通甲板」を持つ海自のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)は、これで4隻態勢となる。中国の潜水艦を探索、追尾する活動などに投入される。(小野晋史)

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 「かが」は「いずも」型の2番艦で、第4護衛隊群(広島県呉市)に配備される。全長約248メートル、全幅約38メートル、基準排水量約1万9500トン。レーダーに探知されにくいステルス性能を向上させた。

 最大14機のヘリを搭載し、哨戒ヘリ5機が同時に発着艦できる。輸送ヘリや攻撃ヘリ、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイなども搭載可能で、離島防衛や災害派遣などでの運用も想定されている。

 就役式典が行われた会場には複数の香港メディアが取材に詰めかけ、中国の関心の高さをうかがわせた。

 一方、小林鷹之防衛政務官自衛艦旗授与式で、「わが国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増している」と述べた。念頭にあったのは当然、海洋進出を強める中国だ。

 平成16年には、中国海軍の原子力潜水艦沖縄県石垣島宮古島の間の領海内を潜航したまま通過し、政府が海上警備行動を発令する事態が起きた。防衛省の分析によると、中国は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載するジン級や、静粛性に優れた最新鋭ユアン級など潜水艦約60隻を保有している。

 相手に発見されずに攻撃や弾道ミサイルの発射ができる潜水艦は、アジア太平洋地域に展開する米空母にとってもやっかいな存在だ。中国はチョークポイント(水上の要衝)で米空母を待ち伏せし、台湾海峡や中国本土に近づけさせないことを狙う。

 こうした潜水艦を探索、追尾する役割を担うのが、「かが」を含むDDHが搭載する哨戒ヘリだ。「かが」の就役でDDHは4隻態勢となる。海自関係者は「訓練と修理に1隻ずつ回しても残りの2隻は常に即応可能となった」と意義を強調する。

 中国が「かが」の就役に関心を寄せるのは、対潜戦能力の向上だけが理由ではない。改修を施せば、戦闘機が発着艦する可能性もあるためだ。

 海自はDDHによる戦闘機運用の検討自体を否定するが、耐熱性の高い甲板に張り替えれば技術的には可能だ。米軍岩国基地山口県岩国市)に配備されている最新鋭ステルス戦闘機F35は垂直離着陸が可能なタイプで、海自のDDHと米軍のF35による共同運用が実現すれば中国にとって脅威となる。ただ、本格的な運用には整備員の配置や関連設備の追加などが必要で、実現に向けたハードルは高い。それでも海自幹部は声を潜める。

 「給油や緊急着陸などに対応する形なら、F35の離着艦はありうるかもしれない。その場合は、日米同盟の絆がさらに強化されることになるだろう」


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