日本発の新型太陽電池、世界の研究者が技術開発-商業化目指す

日本発の新型太陽電池、世界の研究者が技術開発-商業化目指す

  太陽電池は、長年にわたりシリコンを材料とする製品が大半を占めてきたが、各国の研究機関では「ペロブスカイト」と呼ばれる特殊な結晶構造を持つ物質を用いた日本発の次世代型太陽電池の研究が進んでいる。

  この物質を含んだ溶液を印刷したり塗布したりすることで太陽電池を作製可能な技術の研究は、桐蔭横浜大学宮坂力教授が2006年に開始した。光エネルギーを電気エネルギーに変換する可能性を持つさまざまな物質を調べる中で、ある大学院生がペロブスカイトという聞いたことのない物質を取り上げることを提案。研究を進めてきた。
  ペロブスカイトとはチタン酸カルシウムの鉱物名で、太陽電池に用いられるのは同じ結晶構造を持つ化合物。

  宮坂教授は当初、ペロブスカイト太陽電池に関する論文を科学誌ネイチャーやサイエンスに投稿したが採用されなかったという。「効率も低いし中身のよく分からない新しいものだった」のが原因だろうと振り返る。「いろいろな所でペロブスカイトについて話したが反応が全然なかった」 。


  09年に論文が米国化学会誌に掲載された当時は、太陽光をどれだけ電力に変えられるかを示す変換効率は3.8パーセントだったが、次第に研究者の注目を集めるようになっていった。

「低コスト太陽電池の本命」

  12年に変換効率が10パーセントを超えると研究に勢いがつき、現在では英オックスフォード大学や米スタンフォード大学など世界各地の研究機関で開発が進められている。

  東京大学の瀬川浩司教授はペロブスカイト太陽電池について、「低コスト太陽電池の本命。世界中で大変な勢いで研究が進められている」と説明。シリコンのように複雑な製造工程、例えば、結晶化したりする必要がないと語った。

  瀬川教授は新エネルギー・産業技術総合開発機構が支援する15年度から5年間の「革新的低製造コスト太
陽電池」研究プロジェクトの中心を担っている。

  世界経済フォーラムはペロブスカイト太陽電池を16年の10大新興技術に選出。欧州や米国、アジアの太陽光パネルメーカーや研究機関が技術の商業化を目指して競合しており、関連する論文は年間1500本に上っている。オックスフォード大学のスピンアウト企業であるオックスフォード・フォトボルタイクスは、18年末までにペロブスカイト太陽電池の商業化を目指している。