西岡力東京基督教大学教授)

 私は月刊正論前月号(平成26年5月号)に掲載された山田宏衆議院議員との対談の中で、1996年に国連人権委員会に提出されたクマラスワミ報告が、慰安婦に関する不当な誤解を国際的に広めるのに大きな役割を果たしたが、当時、外務省は一度、事実関係に踏み込んだ反論文書を人権委員会に配布しながらそれを取り下げてしまった、この幻の反論文を探して、なぜ取り下げられたのか国会で検証して欲しいと発言した。

 前月号の発売日である4月1日付産経新聞はまさに私が指摘した反論文書全文を入手し、1面トップで〈慰安婦問題 政府「国連報告は不当」 性奴隷認定、幻の反論文書〉という見出しをつけて大きく報道した。記事のリード部分は以下のように書かれていた。

 慰安婦募集の強制性を認めた平成5(1993)年の河野洋平官房長官談話を引用し、慰安婦を強制連行された「性奴隷」と認定した96年2月の「クマラスワミ報告書」について産経新聞は[3月・西岡補]31日、日本政府がいったん国連人権委員会(現人権理事会)に提出しながらすぐに撤回した反論文書を入手した。文書は報告書を「極めて不当」「無責任で予断に満ち」「歴史の歪曲(わいきょく)に等しい」と厳しく批判したが、非公開のため「幻の反論文書」となっている。

 私は2007年に出した拙著『よくわかる慰安婦問題』(草思社、その後の動きを加えた増補版を2012年に草思社文庫から出版)で、クマラスワミ報告の事実関係記述のでたらめさと外務省が当初事実関係に踏み込んだ反論文書を提出しながら、それを撤回したことを詳述して日本外交の失敗を批判した。ただ、同書執筆の時点では反論文書そのものは見ていなかった。

 その後、その文書をあるところから入手した。事実関係と国際法の両面からクマラスワミ報告に全面的に反論する立派なものだった。だから対談で自信を持って文書はあると断言できたのだ。本誌今号と次号にに文書の全文が掲載されるので、ぜひ多くの方にそれを熟読していただきたい。

河野談話「継承」でも出来た反論