マスク氏自ら「ハイパーループ」開発に乗り出す公算-驚き広がる

マスク氏自ら「ハイパーループ」開発に乗り出す公算-驚き広がる

電気自動車メーカーのテスラと宇宙開発ベンチャー企業のスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)を率いるイーロン・マスク氏が次世代交通システム「ハイパーループ」を2013年に提唱した際、「スペースXとテスラに専念する必要があり、私にはそれを実行に移す計画はない」と述べていた。
  マスク氏は心変わりしたようだ。先月のツイートでニューヨークとワシントンを29分で結ぶハイパーループの建設に「口頭で政府から認可」を受けたとコメントした。このため、地下のチューブ内を専用車両(ポッド)で乗客を運ぶというマスク氏が示した仕様に基づいて独自のハイパーループの開発競争に乗り出している新興企業各社の幹部に衝撃が走った。何人かは当初、マスク氏はトンネルを掘るだけで、その具体的なインフラ構築で恐らく1社が選択されるとの期待を示していた。
ハイパーループ・ワンの実験設備
ハイパーループ・ワンの実験設備
Source: Hyperloop One
  だがそうではないらしい。スペースXとテスラの最高経営責任者(CEO)を兼任するマスク氏に近い関係者によれば、ハイパーループのシステムそのものも含め、全てを構築することが同氏のプランだ。米当局の文書によると、マスク氏はスペースXを通じ「ハイパーループ」という商標も保持していることから、他社がこの用語を使うことを阻止することもあり得る。

  予想外のマスク氏の参入で、新興企業各社の将来のもくろみが脅かされる可能性もある。地下トンネルに続く道路を建設するため創業されたマスク氏の新興企業、ボーリングは「他社が一定の進展を示していることに勇気付けられる一方で、可能な限り迅速にこのテクノロジーの発展を加速させることを望んでいる。われわれはハイパーループを建設したいと考えている全企業を鼓舞し支援する。そうした企業が信頼に値する限り、ハイパーループという名称の使用を阻止するつもりはない」とのコメントを出した。

  新興企業各社は表向きマスク氏の踏み込んだ姿勢を歓迎している。ハイパーループ・ワンのシャービン・ピシェバー会長は2日、ネバダ州で1433フィート(約437メートル)を時速192マイル(約309キロメートル)を走行するポッドで実験の第2段階を完了したと述べた。マスク氏が示していた構想は、数百マイルを最高速度時速700マイル超で結ぶというものだ。
マスク氏
マスク氏
  ピシェバー氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、マスク氏の関心でこの分野への注目がさらに集まり、信頼性も高まるとし、良い兆しだと指摘。「前進に向け極めて多くの才能とコミットメントが集結するだろう。私はマスク氏を強く信頼している」と語った。

設計コンテスト

  マスク氏は過去において、同氏自らが独自のハイパーループシステムを建設する関心はないと繰り返しコメントしてきた。もしマスク氏が関与を強めるのであれば、ピシェバー氏と提携する可能性が高いように思われてきた。両氏には交流があり、13年にはキューバへ一緒に旅行している。

  ベンチャーキャピタリストであり米ウーバー・テクノロジーズの初期投資家でもあるピシェバー氏(43)は、マスク氏のハイパーループ構想に極めて熱心で、同氏にこの考えを世論に広めるよう促していた。ピシェバー氏は14年、ハイパーループ・ワンを始めるためスペースXの元シニアエンジニア、ブロガン・バンブロガン氏と手を組んだ。マスク氏の友人デービッド・サックス氏も取締役会入りした。

  ツイッターのアカウント「@Hyperloop」を開設しているスペースXは15年、学生を対象としてハイパーループ設計コンテストを開催する計画を発表し、試験走行用の設備を建設する方針も示した。だがマスク氏はその後のツイートで、「ハイパーループそのものを構築するつもりない」とコメントし、それについては別の複数の会社が取り組んでいると説明した。

  マスク氏は今月、スペースXで新たなハイパーループを巡るコンテストを開催する計画だ。スペースX所有のウェブサイト「ハイパーループ」に掲載されていた「商業的なハイパーループをわれわれ自らは開発していない」とのメッセージは今年に入り消えている。