針のむしろだった文在寅大統領 トランプ米大統領と安倍首相の連携プレーにタジタジ…

針のむしろだった文在寅大統領 トランプ米大統領と安倍首相の連携プレーにタジタジ… 「ハッピー・バースデー」で絆の演出も


21日、会談に臨む(左から)トランプ米大統領文在寅韓国大統領、安倍首相=ニューヨーク(共同)

 21日に開かれた安倍晋三首相、米国のトランプ大統領、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領の日米韓首脳会談は、表向きは3カ国の結束をアピールした。だが、内実は、北朝鮮になお融和的な態度を続ける文大統領を日米両首脳がジワジワと締め上げる「査問」の場だった。文大統領は針のむしろに座らされた気分だったのではないか。
 
北朝鮮への人道支援は逆のメッセージとなる。とても賛成できない」
 会談でトランプは、韓国政府が唐突に打ち出した北朝鮮に対する800万ドル(約8億9千万円)相当の人道支援について、強い不快感を示した。

 安倍も厳しい表情でこう語った。
 「北朝鮮は、核やミサイル開発に回す金がある。その金を人道目的に回すべきじゃないのか?」
 トランプは横で深々とうなずいた。
 トランプは国連総会の一般討論演説で、北朝鮮朝鮮労働党委員長、金正恩(キムジョンウン)を「ロケットマン」呼ばわりし、北朝鮮の「完全破壊」にも言及したばかり。安倍も演説のテーマを北朝鮮一点に絞り、「圧力」強化を訴えた。北朝鮮と対決姿勢を強めるトランプ、安倍には、文政権の人道支援の動きは「裏切り」に映ったに違いない。

 緊迫した空気が流れる中、突然サプライズが起きた。
 「ハッピー・バースデー、シンゾー!」
 トランプが大声でこう語ると大きな誕生日のケーキが運び込まれた。この日に63歳の誕生日を迎えた安倍への粋な計らいだった。
 日米両政府関係者から割れるような拍手。さすがの安倍も相好を崩した。
 いきなり日米同盟の絆の強さを見せつけられた文はさぞ面食らったことだろう。人道支援について、ろくな反論もできぬまま、こう釈明した。

 「人道支援を実際に行うタイミングは慎重に考える。日米韓の足並みを乱すことはしない…」
 北朝鮮に対する日米と韓国の温度差は、写真撮影のために報道陣を招き入れた会談冒頭の時点から歴然としていた。
 トランプが、北朝鮮への追加制裁をいきなり明言すると、安倍は「米国の強力な新しい制裁措置を歓迎し、支持する」と賛同した。にもかかわらず、文は追加制裁には一切触れず、北朝鮮弾道ミサイルが日本上空を通過したことについて「日本国民にお悔やみの言葉を申し上げたい」と人ごとのように語った。

 日米韓首脳会談は昼食をとりながら約1時間。この後、安倍とトランプは同じホテルで約1時間の首脳会談を行った。「本当に重要な話をするときは、韓国は入れられない」と言わんばかりの対応だといえる。

 日米首脳会談でトランプは安倍にこう告げた。
 「まあ、当面は制裁の効果を見る。効かなければさらに制裁をかける。どの時点で北朝鮮が対話を求めてくるかな…」
 軍事行動をちらつかせながらジワジワと締め上げるトランプ流の外交術。その矛先は北朝鮮だけでなく、韓国にも向けられていた。(ニューヨーク 杉本康士 文中敬称略)