極東にあふれる北朝鮮人にとってロシアは「自由の国」

極東にあふれる北朝鮮人にとってロシアは「自由の国」


 ロシアと北朝鮮の蜜月が報じられる機会が増えているが、モスクワで生活していても北朝鮮の人々と接する機会はめったにない。しかし国境を接する極東は事情がまったく違っていた。
 ウラジオストク出張の帰り、空港は金日成(キム・イルソン)、金正日(ジョンイル)父子のバッジをつけた北朝鮮の人であふれていた。多くは平壌に戻るようだったが、私が乗ったモスクワ便でも隣と後ろの1列全員がバッジをつけていた。離陸前、本社から北朝鮮関連の記事について問い合わせの電話がきたが、内容を知られまいと「ミサイル」などカタカナ言葉を避けドキドキしながら対応した。

 隣の男性は「チャイ(お茶)」としか言わない。何者かは分からずじまいだったが、気になったのは彼が見る機内映像だ。
 米国や韓国のドラマをずっと見ていたのだ。他の人々も日本のコメディー映画などを見ていた。後ろの男性は映像を頻繁に変えていたのか、タッチパネル画面をたたく振動が座席越しに感じられ閉口した。「彼らの国では違法では?」と思ったが、事情に詳しい人に聞くと「DVDは保有できないが、機内で見るならOKでは」とのことだった。
 モスクワに着くと、同胞と思われる人々と談笑して市内に消えていった。彼らが“友好国”ロシアで自由を満喫している様子が伝わってきた。(黒川信雄)