緊急事態招いた協会の責任

緊急事態招いた協会の責任

ハリルホジッチ監督の解任を発表する田嶋幸三会長
=2018年4月9日、東京都(撮影・蔵賢斗)  ロシアW杯まで、あと2カ月。そのなかで新体制に与えられた準備期間は3週間しかなく、実際はとてもポジティブにとらえられる状況ではない。日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長は「緊急事態」とも言っていたが、まさにその通りで日本代表は窮地に陥っている。そして、この事態を招いたのはハリルホジッチ監督ではなく、JFA自身であることをしっかりと認識しなければならない。
 そもそも、ハリルホジッチ監督は己の信念に基づき、自らのスタイルを貫いて強化を進めていたに過ぎない。その方向性、やり方には早い段階で異論があり、JFAのなかにも以前から苦言を呈する者はいた。「マネジメントに批判もあるだろうが、責任を持って行ってきている。私の判断は大多数を納得させていないかもしれない。もしかしたら、JFAのなかもそう。しかし、このチームを前進させようとしている」。2017年8月31日時点のハリルホジッチ監督の言葉である。
 また、「私がどういう仕事をしてきたか田嶋会長はみてきた」とも語っていた。指向するスタイルはそれまで日本サッカーがやってこなかった方向性で、試合を重ねてもチームの完成度は高まらず、違和感がある戦いを続けていた。しかし、それはJFAが最初に「この方向で行く」と決めたもので、招へいされたハリルホジッチ監督は自身の考えを推し進めていたに過ぎない。
 契約解除の理由として「信頼関係、コミュニケーションが薄れていた」とも語られたが、これに関してもいまになって取り上げるまでもなく、監督就任当初からそういう性格だとわかっており、それこそロシアW杯アジア予選を戦っている最中から選手たちは「(監督は)ああいう人だから」と達観した様子で語っていた。
 普段の会見でのコメントを聞いていても、ハリルホジッチ監督は自身の意見を押し通すタイプで、人とコミュニケーションが取るのがうまくないというのは以前から感じられていたことだ。あるいは、相手をいまひとつ信頼できなかったのはハリルホジッチ監督も同じだったのかもしれない。なにしろ、信頼し合っているかどうかは意外と敏感に感じ取れるものだ。
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 こちらに不信感があれば、それは間違いなく相手にも伝わる-。いずれにせよ、いまさら感が強く、解任するならもっと早く結論を出せたのは否めない。
 「日本のサッカーというのを一番大事にしないといけません。これまでやってきたことを全否定するわけではありませんが、西野朗監督がやりたいサッカーを全面的にサポートしていきます。われわれが築き上げてきたスカウティング、コレクティブに戦う選手たちの能力などをしっかり出していける日本らしいサッカーをやっていきたいと思います」
 田嶋会長は今後の展望をこう語ったが、これはここ数年の強化を自己否定するもので、前述したように「残念ながらいままでは違う方向にあったと認識しています」と、とても重大な発言もしている。どれだけ今回の結論をポジティブにとらえようとしても、この事実は消すことができない。「こういうときこそ日本人は力を発揮できるものだと信じています」とも語った。だが“こういうとき”を招いたのは繰り返しになるがJFA自身である。(フリーランスライター・飯塚健司、SANSPO.COM 2018.04.10 一部抜粋)