早大留学経験もある元外交官が日本の江戸時代に興味を持つ理由

早大留学経験もある元外交官が日本の江戸時代に興味を持つ理由


 韓国のエリート外交官出身ながら外交官を辞めて日本風ウドン店をやっている申尚穆(シン・サンモク)氏(48)という“変わり者”がいる。外務省に入った後、早稲田大に留学し2002年から2年間、在日韓国大使館で勤務。そのときの日本体験から一念発起し、6年前に外務省を退職して和食ウドン店「きり山」を開業した。
 今も店は繁盛していて、ソウルのグルメ激戦区である「江南(カンナム)駅」周辺で、人気店の一つになっている。日本滞在時代にウドン食べ歩きなどで「日本の味」にはまり、中でもごくごく大衆的なウドンに日本の“文化力”を感じ、自ら韓国で店を始めたというわけだ。
 彼は大変な勉強家で筆も立ち、新聞や雑誌に日本史エッセーを連載中だが、昨年夏、出版した『学校で教えてくれない日本史』は既に1万部を超え、この種の本としては異例のベストセラーになっている。
 中身は江戸時代の多様な紹介で、食文化やビジネスをはじめ近代日本のルーツは江戸にありというもの。ベストセラーの背景については「若者を中心に近年、激増している日本への旅行者が韓国とは異なる日本の姿に接し、なぜだろう?と知的疑問を抱くからかな」という。日本に比べ韓国が近代化に立ち遅れたのは、韓国には“江戸”がなかったためというのが彼の見立てである。(黒田勝弘