再生エネ、なぜ生かせず? 「閉じた送電網」落とし穴に

再生エネ、なぜ生かせず? 「閉じた送電網」落とし穴に
エネルギー日本の選択 北海道地震が問う危機(中)

北海道が地震に見舞われた6日、太陽光発電事業者のスパークス・グリーンエナジー&テクノロジーの谷脇栄秀社長は釧路市にある大規模太陽光発電施設(メガソーラー)に異常が無いとの報告に胸をなで下ろした。しかし、それもつかの間、別の問題が浮上した。北海道電力が送電再開を認めなかったのだ。一般家庭で約7000戸分の電力を発電しても送電できない状況が約1週間続いた。
■風力増加があだ
北海道にはメガソーラーが集積している(国内最大級のソフトバンク苫東安平ソーラーパーク)
北海道にはメガソーラーが集積している(国内最大級のソフトバンク苫東安平ソーラーパーク)
北海道は地価が安く、広い土地を確保できるため、再生可能エネルギーを高値で買い取る制度(FIT)が始まった2012年以降、メガソーラーの新設が相次いだ。風況にも恵まれ、風力発電施設は国内の1割超が北海道に集まる。
17年末時点で道内の太陽光や風力の発電容量は合計160万キロワット前後と、仮にフル稼働すれば道内の電力需要の半分をまかなえる計算だ。地震直後、停電で電力変換装置などが壊れるのを防ぐための安全装置が働き、太陽光や風力発電施設は送電を停止した。
北海道電は停電を解消するため、老朽化した発電設備を再稼働したり、自家発電設備を持つ企業から電力をかき集めたりした。一方、送電再開をなかなか認められなかったのが太陽光や風力。天候で発電量が変動する「不安定電源」である点がネックとなった。
通常は太陽光や風力の発電量に合わせて火力発電の出力を調整して需給バランスをとる。主力の苫東厚真火力発電所が停止した北海道電は本州から電力を送る「北本連系設備」をフル活用したが、調整余力は限られた。再生エネからの送電を再開すると天候などで出力が急低下した場合に対応できず、再びブラックアウトになる恐れがあった。
■電力補完に難題
電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)は「(今回の停電を)検証し、再生エネのデメリットを打ち消せるような運用にしたい」と語る。国は新しいエネルギー基本計画で再生エネを「主力電源化」する方針を打ち出した。地震で浮かび上がったのは、再生エネが主役となる時代に避けて通れない課題だ。
緊急時に機動力を欠く石炭火力から液化天然ガスLNG)などへのシフトを進めないと再生エネとの補完関係を築くことは難しい。大手電力は地域間で予備電力を融通し、太陽光や風力の発電量の急変に備える体制作りを急いでいるが、今回の地震で電力を融通する送電線容量が小さいことが浮き彫りになった。
欧州の電力システムは再生エネ仕様に姿を変えつつある。ドイツでは北部で発電した風力由来の電力を南部の消費地へ送る送電線建設の計画が進む。国境をまたいで調整力を融通し合っており、欧州の送電会社連合は30年までに約20兆円を投じて送電線を増強する計画を公表している。天候に左右される太陽光の発電量を予測しながら全体の需給を調整する仕組みもある。
国内では10電力会社の地域独占が長く続き、それぞれが閉じた世界で需給のバランスをとってきた。20年にようやく大手電力の発電と送配電部門を切り離す発送電分離が始まり、再生エネ事業者がさらに参入しやすくなる可能性がある。今のうちに使いこなす仕組みを考えないと、「宝の持ち腐れ」は変わらない。