新成人、こんなに大きい年金未納のリスク 納付特例は早めに手続き

新成人、こんなに大きい年金未納のリスク
納付特例は早めに手続き

2019/1/12 6:30
日本経済新聞 電子版
1月14日は成人の日。20歳になると誰もが国民年金に加入するが、「年金はピンとこない」という人が多いのではないか。年金には老後だけでなく、事故や病気などのリスクに備える役割がある。親と一緒に考えてみよう。
■半数が届け出せず
20歳の誕生日が近づくと国民年金加入の書類が届く
20歳の誕生日が近づくと国民年金加入の書類が届く
国民年金の資格取得の届け出を自主的にした人は20歳になった人全体の半数程度」。2018年暮れに総務省から厚生労働省に出された年金業務の見直し勧告にこうあった。現在、20歳の誕生日が近付くと日本年金機構から「国民年金加入のご案内」が送られてくるが、受け取った人の半分が届け出をしていない。
加入の届け出をしなくても年金手帳や保険料の納付書は後日送られてくる。しかし、保険料を払わないと将来もらう老齢基礎年金は減る。未納が多く、10年の保険料納付期間(免除期間含む)を満たさなければ老齢基礎年金は1円ももらえない。
■老齢年金より身近な障害年金
年金には事故や病気で障害を負ったり、亡くなったりした場合に給付される障害基礎年金や遺族基礎年金もある。これらも未納が多いともらえない。特に障害基礎年金は「統合失調症など精神障害でも条件を満たせば受け取れるので、若い人には老齢年金より身近な存在」と社会保険労務士の永山悦子氏は指摘する。
厚生労働省の調査によると、20代前半で保険料を納付している人の人数は4分の1程度。18年度の国民年金保険料は月1万6340円、年間20万円近くになる。収入が少ない若者や学生には負担が大きいが、未納は避けたい。社会保険労務士の原佳奈子氏は「親に余裕があれば代わりに払うのもよい。その際、子どものためになることをきちんと伝えるべきだ」と話す。
免除や納付猶予を利用することもできる。学生には年間170万人以上が利用する学生納付特例制度(ガクトク)がある。いずれも手続きをすれば、保険料を払えなくても受給資格期間に算入できる。

「学生納付特例も速やかに手続きをしないと不利益を被る恐れがある」(永山氏)
障害年金は初診日に注意
こんな事例がある。20代のAさんが事故で障害を負い、しばらくして障害年金を請求したいと年金事務所を訪ねた。学生時代は特例を利用、その後も保険料を払い、年金加入期間に未納はないのでもらえると思ったが、実際は受給できなかった。
Aさんの特例の申請は事故の後。特例は過去に遡って承認されたが、障害年金は初診日を基準とした年金の加入・保険料納付要件で判断する。事故(初診日)後の特例の承認は考慮されず、要件を満たさなかったのだ。
免除や納付猶予は年金の受給資格期間に算入できても、将来の老齢基礎年金の金額に反映されない部分があることも知っておこう。特に学生納付特例と納付猶予は年金額への反映はゼロ。年金額を増やすには後日、保険料を追納する必要がある。
■10年以内なら追納を検討
「追納の期限は10年だが、認知度は低い」(原氏)。厚労省によると、学生納付特例を知っている学生は9割近くいるが、特例の利用者で追納を知っているのは約半分だ。前述の総務省の見直し勧告にも、10年以内に追納されるのは全体の4%余りにとどまるという試算があった。
年金は障害時や長生きなどのリスクに備えられる公的保険だ。20歳を機に親も積極的に関わって適切な対応を選びたい。
(土井誠司)