サラリーマン川柳入選作品発表「何度目だ?平成最後の頼み事」

サラリーマン川柳入選作品発表「何度目だ?平成最後の頼み事」

世相や働く人の本音をユーモアたっぷりに詠んだ「サラリーマン川柳コンクール」の入選作が発表され、定年の延長を嘆くものや流行語を取り入れたものなど、合わせて100の作品が選ばれました。
ことしで32回目となる「サラリーマン川柳コンクール」は、大手生命保険会社の第一生命が毎年、開催していて、22日、全国から寄せられたおよそ4万4000句の中から、入選した100の作品が発表されました。

今回は、「定年の延長」や「再雇用」といった、遠のく人生の余暇を嘆く句が多く寄せられたということで、

人生の 余暇はいつくる 再雇用(年金未受給者)
再雇用 昨日の部下に 指示仰ぐ(白いカラス
ゴール前 延びる定年 老い越せない(チコちゃん55歳)
給料も シニア割され 半額に(再任用)

などの句が選ばれました。
また、SNSやAIの普及に伴う職場の人間関係の変化を詠んだ句も多く、

この先は AI上司に 査定され(トンケイ)
今どきの ホウレンソウは LINEから(しーしーちゃん)
人事異動 オレの後任 人工知能(A.I.)
上司から ともだち申請 見ないふり(公私混同)

などが選ばれています。
流行や話題のことばを取り入れた句としては、

五時過ぎた カモンベイビー USAばらし(うさ)(盆踊り)
間食を もぐもぐタイムと 正当化(松戸ラガー)
兄ショック ガンダム以来の アムロロス(シャアの友人)
議論無し「そだね~」だけの 役員会(ぴんけろ)

などが選ばれました。
さらに、元号が変わることにちなんだ

ジュエリーを 平成最後と ねだる妻(ことは)
何度目だ? 平成最後の 頼み事(玉ねぎ頭)

といった句も選ばれています。
サラリーマン川柳は、今回選ばれた作品の中からベスト10を決める投票が22日から行われ、新しい元号となったことし5月下旬に結果が発表されます。

主催者「平成最後らしい」

コンクールを主催する第一生命の新美雅也課長は、「今回は定年延長や、オリンピックで活躍した選手たちにちなんだ句が多く見られました。個人的には、『ジュエリーを平成最後とねだる妻』などのような句が、平成の最後らしくていいなと思いました」と話していました。

また、平成の30年間の川柳を振り返って、「私は平成元年入社で、入った当初は川柳にあったようにがむしゃらに働いていたが、今は職場から早く帰るようになった。過去のサラリーマン川柳を見てみると、このような働き方の変化や世相を映しているように感じます」と話していました。

サラリーマン川柳で読み解く平成

平成が始まる少し前の昭和62年に始まり、今回で32回目となったサラリーマン川柳。これまでに詠まれた句を振り返ってみると、平成の30年間の経済状況や人々の暮らしぶりの変化が見えてきます。

バブル絶頂で迎えた平成。
平成2年には、

一戸建手が出る土地は熊も出る(ヤドカリ)
ブランドは見るもの聞くもの貰うもの(貢くんの彼女)
ビジネスマン24時間寝てみたい(ボーナス)

などの句が詠まれました。
しかし、それも長くは続かず、

イタメシがバブルはじけてモツなべに(ポール牧々/平成4年)
御取り引きバブルはじけてお引き取り(逆転パパ/5年)
肩たたき私はどこもこってない!(空城承太郎/6年)

など、不況や失業を詠んだ句が徐々に増え始めます。
物価が下落し始めてデフレ経済に突入すると、

ビックバン俺の財布の割れる音?(我流転晴/9年)
本物のビール買ったら妻激怒(八方美人/14年)

といった、厳しい家計を反映した句が目立つようになりました。

一方で、IT革命によって職場の環境は激変し、

ドットコムどこが混むのと聞く上司(ネット不安/12年)
IT化課長の面倒誰がみる(金太郎/13年)
ツールバー何所の飲屋と聞く上司(猿の惑星/14年)

など、ITに不慣れな上司をやゆした句が登場しました。
また、職場では上司と部下の関係も変化し、

叱らずに育てた部下に怒鳴られる(やなぎびと/23年)
気遣いは昔上司に今部下に(×課長/24年)

などの句が詠まれています。

さらに、職場で進む「働き方改革」については、

やってみたゆう活憂鬱趣味がない(咳をしなくても独り/27年)
ノー残業居なくなるのは上司だけ(仕事人間/28年)
効率化提案するため日々残業(ビジネスマンみっちゃん/28年)

など、戸惑う気持ちを表した句も見られました。