ルノーとの統合、日産の要請で阻止に動いた経産省

ルノーとの統合、日産の要請で阻止に動いた経産省

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 日産自動車カルロス・ゴーン元会長が逮捕される数カ月前、日本政府は日産とルノーの統合を検討する協議に介入していた。協議を知る関係者が明らかにした。
 日産経営陣は当初、ゴーン被告が主導していた統合提案を退けるため、経済産業省に助けを求めた。だが経営陣の支援要請は裏目に出た。関係者によると、経産省は要請を受け、自らが統合協議を統括する役割を担う内容の合意書を作成したからだ。日産はこれを過度の干渉と受け止めた。
 日本政府による介入の経緯は、統合関係の強化を推し進めていたゴーン被告に対し日産が調査を開始するわずか数週間前に、国際的な緊張が高まっていたことを示している。
 日産・ルノー連合の将来についての協議を巡り、日本政府の直接的な関与はこれまで報じられていなかった。政府は表向きは、連合の将来は両社が決める問題だとしているが、そうした建前とは矛盾する事実が明らかになった格好だ。政府の関与はまた、両社の相違を浮き彫りにしている。日産とルノーの会長を兼務していたゴーン被告の逮捕と解任に至るまでの数カ月、両社の溝は深まっていた。
 日産が日本政府に異例の支援要請をしたことは、同社幹部が統合を巡りフランス側からの強い圧力を感じていた証しでもある。
 経産省の自動車業界担当者は、外交交渉についてはコメントできないとしながらも、日本政府は常に、提携問題はあらゆる関係者に受け入れられる方法で両社が解決すべきとの考えだと説明。日産とルノーの協議に介入したり、両社に指示を出したりする意向はないと述べた。
 日産はコメントを控えた。
 世耕弘成経済産業相は11月27日の記者会見で、日本とフランスの政府は役割が異なると明言した。仏政府はルノー筆頭株主で、日産との交渉にも代表を送り込んでいる。
 世耕氏は「われわれは株主でもない。人事やガバナンスを含めて各企業のことに政府が口を出すべきではないと考えている」とし、日産・ルノー連合の先行きについては「民間企業の問題」との認識を示した。
 協議に詳しい関係者によると、日本政府は昨夏にかけての数週間、仏政府の対抗勢力として立ち回ろうと努めていた。
 仏政府はそれより数カ月早く、ルノー筆頭株主として、提携を「不可逆的」なものにするようゴーン被告に公に指示していた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今週、両社の協議が4月下旬に険しさを増していたと報じた。日産幹部が当時の協議で、仏政府保有ルノー株を管理する仏国家出資庁(APE)に対し、日産が完全統合に反対であることを伝えたためだ。
 APEはコメントを控えた。
 日産幹部は以前から統合案に反対し、株式の持ち合い比率の再調整を求めていた。
 関係者によると、日産は経産省に支援を求めたが、それが図らずも協議への政府介入に道を開くこととなった。
 経産省ルノーの提携強化案について、日産の意志決定に一切の影響力を持たない単なる選択肢として扱う合意案を起草した。草案は日仏両政府が署名する形式だった。
 この草案が日産関係者にとって想定外だったのは、仏政府が提携に影響する提案をする場合、仏当局者から日本の当局へ通知するよう求める内容だったからだ。経産省はこの草案によって、関係者間の円滑なコミュニケーションと意志決定の促進を目指していたという。
 関係者によると、仏政府が5月に草案について議論したと日産は述べている。仏政府から返答があったかは不明だ。
 経産省の関係者は草案については何ら認識していないと述べた。また、一般論として、ルノーがなんと言おうとも、日産が自ら決断を下す権限を持つことを主張するのはごく当然だとの見方を示した。日本政府としては各関係者が密に話し合い情報を共有するよう促しているとも語った。

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 フランス経済省はコメント要請に応じていない。
 関係者によると、日産幹部はこの草案を巡り、社内運営に対する政府の過度な干渉を確約することにならないか議論していた。
 日産の最高経営責任者(CEO)オフィスを統括するハリ・ナダ専務執行役員も議論に加わっていたという。WSJは12月、ゴーン被告の逮捕につながった捜査でナダ氏が重要な役割を果たしたと報じた。
 日産はナダ氏がコメント要請に応じることはできないとしている。 ルノーの広報担当者はコメントを控えた。