アングル:中国アパレルのオロレー、米国で「バカ売れ」の理由

アングル:中国アパレルのオロレー、米国で「バカ売れ」の理由

[中国嘉興市/ニューヨーク 25日 ロイター] - 2012年に仕事を辞め、中国の地方都市で衣料品のインターネット販売を始めたケビン・チウ氏(32)が主な目標としていたのは、妻や生まれたばかりの子どもとの時間を増やすことだった。
自身で作ったブランド「オロレー」のダウンジャケットが大ヒットし、米国のソーシャルメディアや既存メディアで「アマゾンのコート」として取り上げられ、高級ブランドのカナダグース(GOOS.TO)のライバルとしてもてはやされるようになるとは、夢にも思っていなかった。
河北省や安徽省産のダウンを使ったオロレーのポリエステルのコートは、80─139ドル(約8850─1万5300円)。米国では最低でも575ドルするカナダグースとは対照的だ。
「今年は1月だけで2017年通年よりも売り上げがあった」。中国東部の浙江省嘉興市にある自社工場で、チウ氏はロイターにこう話した。
1月の売上高は推計500万ドル。今年は年間で3000万─4000万ドルを売り上げる見通しだ。米国での売上高が全体の7割を占めており、そのほとんどがアマゾン・ドット・コム(AMZN.O)を通じて販売されている。

オロレー成功の要因は、競争力のある価格に設定し、米国の消費者に好まれるデザインを取り入れた、というだけではない。チウ氏は、アマゾンが導入した仕組みの恩恵を受けた中国の事業者の1人だ。アマゾンは近年、海外の業者が同サイトで商品を売るのを容易にするシステムを取り入れた。

アマゾンで商品を売る米国の事業者は、この動きに警戒を強めている。特にアパレルのような業界で実店舗を構える事業者は、小さなブランドが大挙して押し寄せてくる脅威を無視する訳にいかない。こうしたブランドの多くが、中国を拠点にしている。
「たくさんのブランドが参入し、全体としては業界に大きな影響が出ている。全部まとめれて見れば、彼らが市場を奪いつつある」。こう語るのは、百貨店のメーシーズ(M.N)やアマゾンに商品を卸している米エクセル・ブランズ(XELB.O)のロバート・ドローレン最高経営責任者(CEO)だ。
アマゾンは、中国からの参入で米国の事業者が脅かされているとの見方について、コメントを差し控えると回答した。出品者の売り上げを国別に把握している訳ではないとしている。
アナリストは、今後も米国アマゾンへの出品者は増加し続けると分析する。中国国内では競争激化とコスト上昇で、アリババ・グループ(BABA.N)のサイト「天猫(Tモール)」などへの出品は魅力が減少している。
実際、チウ氏は中国ではもう販売していない。米国以外では欧州、日本、台湾、オーストラリアで展開している。
「最初はアリババでも売っていたが、中国での競争の方が厳しかった」とチウ氏。中国国内で通販サイトの利用料が引き上げられたことも影響したという。
中国では通販サイトの出品手数料に加え、顧客窓口の整備などにも投資しなくてはならない。出品者のコスト負担が増加しているかどうか、ロイターはアリババに問い合わせたが、回答は得られなかった。
アナリストは、アマゾンを利用する中国の小売業者は約5年前から急増したと指摘する。アマゾンが自社倉庫に世界中の小売業者の在庫を受け入れ、購入された商品の出荷を支援するシステムを導入したころだ。
アマゾンは昨年、中国の事業者に米国の金融業者を紹介するプログラムも始めた。一方で、アマゾンを使って商品を売る米国や英国、日本の事業者の一部には、同社自身が融資をしている。
チウ氏は、自社の成功がアマゾンによるところが大きいと認めつつ、販路の多角化も考えていると話す。米小売大手のウォルマート(WMT.N)などから引き合いが来ていると言う。
ウォルマートの広報担当者はロイターの問い合わせに対し、オロレーとの間で合意したものはないと話した。
多角化を目指すオロレーは、衣類のラインアップを綿製品に広げたり、紳士ものを展開することも検討している。だが、チウ氏は今のところ、ほとんど未知の市場だった米国で成功したことにただ驚いている。
「昨年は2度休暇でニューヨークに行った。自分たちのジャケットを着ている人を街中で見かけて、うれしかった」と、チウ氏は振り返る。
2019年1月、嘉興市のオロレー工場でジャケットを縫製する従業員(2019年 ロイター/Pei Li)
「感想を聞きたかったけど、英語はあまりしゃべれないからやめておいた」