見つかればノーベル賞、宇宙3つのなぞは解決する?

見つかればノーベル賞、宇宙3つのなぞは解決する?     スグ効くニュース解説(令和新時代・展望編)
小玉祥司編集委員

スグ効くニュース解説
2019/5/2 6:00 日本経済新聞 電子版
平成は最後の最後で、ブラックホール初撮影というノーベル賞級の発見がありました。令和の時代には、どんな宇宙のなぞが解明されそうですか。
米国は2020年に火星に探査機を打ち上げる計画=NASA/JPL-Caltech提供
米国は2020年に火星に探査機を打ち上げる計画=NASA/JPL-Caltech提供
回答者:小玉祥司編集委員
(1)地球外生命は?
解決が期待される最初のなぞが地球以外での生命の発見です。発見されるかもしれない場所の候補は2つあります。
ひとつ目は火星。火星はこれまでの探査で、過去に地球と同じように豊富な水があったことがはっきりし、生命が誕生した可能性が高いと考えられています。2020年には米国や欧州、中国が火星着陸をめざして探査機を打ちあげる予定で、20年代後半に人間を火星に送る計画も検討されています。こうした探査で地中などで生物がみつかるかもしれません。
口径が30メートルの巨大望遠鏡「TMT」=完成予想図、TMT国際天文台提供
口径が30メートルの巨大望遠鏡「TMT」=完成予想図、TMT国際天文台提供
もうひとつの候補は太陽以外の恒星を回る太陽系外惑星です。これまでに4000個以上の太陽系外惑星が発見され、地球のように岩石でできたタイプも見つかっています。高性能の望遠鏡で惑星を取り巻く大気を分析し、酸素が見つかれば植物のような生物が存在する決定的証拠と考えられています。日米中などの国際協力で27年完成予定の超大型望遠鏡「TMT」などが観測に活躍しそうです。
(2)ファーストスターとは?
次に宇宙で最初に誕生した第1世代の星「ファーストスター」の発見も期待されます。宇宙は138億歳ですが、誕生から数億年後にファーストスターが生まれたと考えられています。太陽の数百倍という巨大な星で、水素やヘリウム以外の重たい元素を作りました。4月に撮影されたような巨大ブラックホールのもとになった可能性もあります。これまで観測されたもっとも遠い天体は134億光年先なので、あと少し遠くまで観測できれば見つかりそうです。
(3)ダークマターの正体?
3番目のなぞは「ダークマター暗黒物質)」の正体です。宇宙に存在する物質のうち、われわれの目に見える通常の物質は全体の約15%しかありません。残りの約85%を占める物質があるはずですが、まったく正体が分かっていないので「ダークマター」と呼ばれています。日本の大型望遠鏡「すばる」を使った観測などで、ようやくしっぽが見えそうになってきたところです。20年には米国に新装置が完成し、ダークマターを探す国際共同研究も始まります。
ダークマターは、ファーストスターより前に物質が集まって星や銀河が誕生するきっかけを作りました。ファーストスターやダークマターは、宇宙の誕生や進化を解明するカギになるのです。
■大穴は?
最後に国立天文台副台長の渡部潤一先生に「大穴」を予想してもらいました。ちょっと考えてから返ってきた答えは「第9惑星の発見」です。海王星よりずっと遠くを回っていると想定される惑星ですが、ありそうかどうかは天文学者の間でも意見が分かれています。見つかれば一大センセーションを巻き起こしそうです。
結論:「地球外生命」「ファーストスター」「ダークマター」といった宇宙や生命の起源につながるなぞの解決が期待されます。いずれもノーベル賞級の成果です。「第9惑星」が発見されれば、やはり大きな話題になりそうです。