なぜ、利食いは早く損切りは遅いのか!?


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師範:石川秀樹 SBI大学院大学講師、石川経済分析代表
上智大学卒業。筑波大学ビジネス科学研究科経営システム科学専攻修了(MBA)。英国政府チーブニング奨学生としてロンドン大学に留学。新日本製鉄株式会社資金部、鋼管輸出部などを経て、現在、石川経済分析代表。経営品質アセッサーフォーラム理事。SBI大学院大学講師。専門は、経済学を活用した組織変革、経営評価。著書に、『ケーススタディで学ぶ入門ミクロ経済学』など多数。
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http://www.sbi-com.jp/img2/dojo/s_title01.gifなぜ、利食いは早く損切りは遅いのか!?―市場の非合理を論理的に考える行動経済学

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 近年、経済行動の非合理的と思われる部分に法則性を見つける行動経済学が注目されています。では、行動経済学において有名な簡単なクイズにチャレンジしていただきましょう。

<クイズ1>
600人を死亡させるアジアの疫病の流行の危険があります。この疫病への対策として、以下の2つがありますが、2つの対策の結果は、科学的に次のように予測されています。
対策A:200人が救われる。
対策B:3分の1の確率で600人が救われるが、3分の2の確率で誰も救われない。
このとき、あなたは、どちらの対策を選択するでしょうか。
<クイズ2>
600人を死亡させる疫病の流行の危険があります。今度は、この疫病への対策として、以下のCとDがあり、2つの対策の結果は、科学的に次のように予測されています。
対策C:400人が死亡する。
対策D:3分の1の確率で全員が死亡せず、3分の2の確率で600人が死亡する。
このとき、あなたは、どちらの対策を選択するでしょうか。
出典:石川秀樹「ケーススタディーで学ぶミクロ経済学PHP研究所p315-317


皆さんの答えはいかがでしたか。行動経済学を創りノーベル経済学賞を受賞したカーネマン教授らの実験では、クイズ1では多数(約7割)がAを選び、クイズ2では多数(約8割)がDを選びました。
ところが、実は、全体は600人ですから、対策Aの「200人が救われる」と対策Cの「400人が死亡する」ことは同じことを言っています。同様に、対策Bの「3分の1の確率で600人が救われるが、3分の2の確率で誰も救われない」ということは、裏を返せば、対策Dの「3分の1の確率で全員が死亡せず、3分の2の確率で600人が死亡する」ということと全く同じなのです。つまり、クイズ1とクイズ2は同じで、クイズ1では、生存を強調し利益を得るというプラスのイメージの問題とし、クイズ2では死亡という面を強調し、損失を被るというマイナスのイメージにしただけなのです。
にもかかわらず、多数派は、「救われる」という利益をイメージさせるクイズ1では確実に200人救われるAを選び、「死ぬ」という損失をイメージさせるクイズ2では全員が死ぬかもしれないリスクを冒すDを選んだのです。
この結論から、次の2つのことがわかります。一つは、一般的に人は、同じ問題であっても、質問の仕方(枠組み)を変えると、それが心理的に影響を与えて、意思決定を変えることがあるということです(枠組み効果)。同じ質問への答えが異なるということですから、合理的ではないのです。
また、もう一つは、多くの人は、利益が得られるようなクイズ1の場合、リスクを冒さず確実に助かる人がいるAを選ぶのに対して、損失を被るクイズ2のときには、全員死亡というリスクを冒しても全員が助かるDを選択するということです。つまり、利益を得るときにはリスクを回避し、損失を被るときには積極的にリスクをとることがわかります。だからこそ、利益の確定は即座に行いリスクを回避し、損切りはなかなか行わずリスクを冒して損失の解消に期待するのです。

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