IMFの財源倍増計画に早くも暗雲

グローバル情報=IMFの財源倍増計画に早くも暗雲、追加拠出に米国など相次ぎ反対

2012/01/19 12:46

 IMF国際通貨基金)が18日、欧州債務危機の拡大に備えて融資財源を5000億ドル(約38兆円)拡大する方針を発表したことに対して、早くも米国などの主要国が追加拠出に否定的な見解を相次ぎ示している。

財務省の報道官は同日、「欧州には問題を解決する能力がある」と述べ、IMFにさらなる資金拠出をすることはないと改めて表明した。IMFが今回発表した5000億ドルの資金基盤強化には、すでに欧州諸国が公約している2000億ドルが含まれるが、カナダのフレアティ財務相は「2000億ドルの拠出では、欧州が世界に影響を与えている債務問題を解決するうえで十分な責任を果たしているとはいえない」と指摘。カナダや他のG20(主要20カ国・地域)が追加拠出を決定する前に、欧州各国による一段の貢献が必要と訴えた。

IMFは融資能力強化に向けて中国などの新興国や日本の協力を見込んでいる。しかし、18日にはロシアのシュワロフ第1副首相が、3月に実施される同国の大統領選までは追加拠出についていかなる決定もしないとの見方を示した。英国のオズボーン財務相は同日、追加拠出に応じる姿勢を見せたが、これも「ユーロ圏以外の主要国が参加する」という条件付きとなっている。

IMFが今回提案した資金枠拡大は、きょう19日から20日までメキシコで開かれるG20財務次官会議で協議される見通し。IMFは最終的に、2月25日、26日に同国で開催されるG20財務相中央銀行総裁会議で合意したい考えだ。

IMFの融資可能額は11年11月時点で約3900億ドル。5000億ドルの財源強化に加えて1000億ドルを上積みするとの見方もあり、最終的な資金枠は1兆ドルと現状の倍以上に拡大する計画とみられる。

欧州債務問題をめぐってはS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)が13日、「トリプルA」格付けを維持していたフランスを含むユーロ圏9カ国を一斉に格下げし、16日にはEFSF(欧州金融安定化基金)も「トリプルA」から格付けを引き下げた。一連の格下げでEFSFの融資能力低下への懸念が強まっている。

現状では、イタリアなどユーロ圏でも経済規模が比較的大きい国々の債務危機が一段と深刻化した場合に、EFSFだけでは十分に対応できない可能性がある。こうしたなかでIMFが融資枠拡大の方針を打ち出したことで、実現すれば欧州危機への有効な対応策になると期待されている。(坂本浩明)

提供:モーニングスター