バーナンキ議長、米下院予算委員会での証言要旨

[ワシントン 2日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は2日、米下院予算委員会で証言を行った。証言内容は以下の通り。

◎証言原稿

<欧州発のリスク>
欧州やその他の地域における情勢が好ましくない展開を見せ、米国の経済見通しを悪化させる可能性のあることが引き続きリスクだ。
われわれは欧州当局と頻繁に連絡を取っており、状況を緊密に注視し続け、米国の金融システムと経済を守るため、可能な限りのすべての措置をとる。

<企業投資の減速>
企業投資の伸びはこのところ減速している。これは国内の見通し、および欧州情勢に対する懸念を反映しているものとみられる。しかし、これらの懸念が幾分和らいでいる兆候も出ている。

<雇用市場>
失業率や就業率などの指標が示しているように、雇用市場が正常に機能していると言うには程遠い状況にある。とりわけ異例の高水準にある長期失業はやっかいな問題だ。

<ぜい弱な景気回復>
米経済の状況は過去2年半で確かに改善したが、特に失業状態や不完全雇用の状態にある多数の労働者の観点から見れば、回復のペースはいら立たしいほど緩慢だ。さらに、緩慢な成長の結果、経済は衝撃を受けやすい状態にある。

<困難に直面する家計>
実質消費者支出は前四半期にやや増加したが、家計は引き続きかなりの向かい風に直面している。とりわけ、2011年の実質家計所得と富は横ばいとなり、多くの潜在的借り手にとって信用へのアクセスもひっ迫した状況が続いた。消費者信頼感は夏場の低水準から回復したものの、歴史的な基準から見れば依然としてかなり低い水準にとどまっている。

<インフレ動向めぐるFRBの予想>
総合的な消費者物価(CPI)の伸びはFRBの予想通り、2011年を通じ大幅に鈍化した。インフレ期待がしっかりと抑制され、かつコモディティ(商品)相場がより安定的で、労働・製品市場に大幅な緩みが存在する状況において、FRBはインフレが引き続き抑制されていくと予想している。

財政再建にはバランス必要>
財政政策担当者は、喫緊の課題である財政の持続可能性の問題に取り組む上でも、現在の景気回復を不必要に損なわないよう配慮すべきだ。
 

◎質疑応答

<雇用と物価安定>
雇用においては、明らかに一段の進展が必要だ。インフレに関しては、少なくとも現時点では、目標に非常に近いところにいるもようだ。
金融政策は万能薬ではなく、すべてを解決することはできないということを強調することは重要だ。FRB、およびその他の機関は、経済の中で問題がある部分、改善の余地がある部分、さらに税法などについて考えていく必要がある。
FRBは現状に満足していない。FRBは議会から負託された二重の責務を遂行すべくあらゆる手段を尽くす。議会、および政権が米経済の強化に向けた代替手段を模索することを願っている。 

<二重の責務はうまく機能>
二重の責務はうまく機能している。FRBはインフレに関し、他のどの中銀にも劣らない実績を誇る。二重の責務が大きな問題だとは考えていない。われわれにとっても良い影響をもたらしている。
しかし議会がFRBを創設し、責務を与えており、議会が責務を変更したいと判断すれば、われわれはもちろん議会の決定に従う。

<「安全資産」としてのドル>
FRBの政策が異例であることは決してない。現時点では、米国ほどリセッション(景気後退)の影響を受けなかったカナダ銀行中央銀行)以外のほとんどの先進国の中央銀行は、責務を1つしか負っていない中銀を含め、膨張したバランスシートを抱え、金利を低水準に抑えている。
米国以外のすべての先進国でも見られることだが、長期金利は低水準となっている。このことの基本的な理由として、低インフレ、緩慢な成長予想に加え、ドルが安全資産となっている事実が挙げられると考える。
世界的に問題が存在するなか、米国債には魅力があるため、投資を集めている。

<インフレ抑制>
われわれは常にインフレをターゲットに回帰させるよう努めている。FRBの責務の2つの側面を見ると、(政策の)速度と積極性は2つの目標のバランスにある程度左右されるかもしれない。しかし、われわれは常に双方の目標を責務に回帰させようとしている。われわれはインフレ高進を追及することも望むこともしておらず、容認もしていない。

<インフレは抑制されている>
FRBの2つの責務は、おおむね補完し合っている。われわれは、低水準で安定したインフレが経済成長にとって好ましいと認めている。 
インフレは現在、非常に抑制されているもようで、今後数年間は、目標を下回って推移すると予想している。無論、予想外のイベントが起こる可能性はあるだろう。
ドルはかなり安定して推移している。