個人投資家が語らない10の秘密

個人投資家が語らない10の秘密

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2015 年 1 月 22 日 19:38 JST
1.自分たちのやっていることが分かっていない

 米国では過去40年の間に確定拠出年金(401k)が従来型の年金に取って代わり、退職金制度の主流になっている。米社会保障庁によると、このいわゆる確定拠出型年金を利用する労働者の割合は1980年の8%から2008年には約31%に上昇した。つまり、今や米国人の多くが自分たちの金銭的状況を左右する投資を自分で管理しているようなものだ。しかも、余った時間で。

 ただ残念なことに、上手に投資するための基本的な金融知識に欠ける米国人が多い。米金融業規制機構(FINRA)投資家教育基金が米国の成人を対象に実施した12年の調査では、リスクやインフレ、金利、住宅ローンなどの金融に関する基本的な問題の5問中正解は平均2.9にとどまった。(全問正解したのはほんの14%だった)

 また、平均的な米国人は金融市場に関するニュースをそれほど注視もしていない。何が起こっているのか分かっていなければ、適切な投資判断を下すのはさらに難しい。13年にはS&P500種は30%上昇した。世論調査会社ギャラップが数カ月後にその年の市場動向について質問したところ、それほど堅調だったことを思い出せたのは7%にすぎず、30%もの人々が横ばいか下落したと答えた。

2.それでも、売買回数が多すぎる

頻繁な取引をする投資家が良い投資家とは限らない Shutterstock

 米調査機関ダルバールによると、S&P500種構成銘柄のトータルリターンは過去30年にわたり年率11.1%となった。それにもかかわらず、米国の株式ファンドに投資する平均的投資家が同じ期間に稼いだリターンは年率3.69%にとどまっていた。

 ファンドに投資する人々はなぜもっと良い成績を出せないのか。まず、手数料や諸経費がリターンをむしばむことが挙げられる。ファンド調査会社モーニングスターによると、米国のミューチュアルファンド(投資信託)にかかる手数料率は平均で1.23%。(株式投信ではやや低く1.21%、最も高いのはオルタナティブ投信の1.92%)

 投資家が流行の株式や投信を追い求め、頻繁に売買を繰り返しすぎるという事実も、こうしたパフォーマンスの差が生まれる理由の一つだ。FINRAの投資家教育部門のシニア・バイス・プレジデント、ゲリ・ウォルシュ氏は「証券を取引するたびに、株を買ったり売ったりするたびに、委託手数料や何らかの販売コストを支払っている。長期的には、こうしたコストがリターンをむしばむ」と説明する。

 頻繁な売買回数と低いパフォーマンスとの間には相関関係があることが複数の調査で示されている。取引がアプリを起動してボタンを数回押すだけというほど簡単にできるのであれば、投資家がしっかりとした戦略よりもその場の衝動に流されて売り買いしがちになるというのも問題の一部だ。

3.何にお金を支払っているのか知らない(しかし恐らく払い過ぎている)

数ペンスが数ドルとなり、数ドルが数千ドルとなる Shutterstock.com

 AARP(旧全米退職者協会)が実施した11年の調査によると、401k加入者の7割が手数料や費用を払っていることを知らなかった。金融系サイト「ナードウォレット・ドット・コム」によると、実際、運用・管理費やトレーディングコストなど、401kに関連する28種類以上の手数料がある。また、ウォレットハブによると、米国人の9割は手数料を「著しく低く見積もっている」が、これが生涯では最大15万ドル(約1800万円)に達する場合もある。

4.自分たちの資産を運用する人を誰でも信用する

あなたの資産管理を進んで受けたがるのはなぜ? Everett Collection

 ギャラップの調査で、投資家の約75%が資産計画の構築に専門家の助言を求めることが分かった。では、誰の助言を聞けばいいのか。ブローカー、アドバイザー、ファイナンシャルプランナーはいずれも異なる資質を持ち、顧客に対しても異なる責任を負っている。
 投資助言提供者の一部は受託者基準に準拠して業務を行っている。つまり、利益相反の回避や開示、低コスト投資の模索など、顧客にとっての最高の利益を最優先する必要がある。

 証券を売り買いするブローカーが自らをファイナンシャルアドバイザーと呼ぶことは多いが、彼らは別の規定にのっとって活動している。ブローカーは根本的には販売員で、顧客のリスク特性や年齢、投資目的といった要因を考慮し商品がその顧客にとって「適切」だと判断することが求められているに過ぎない。投資ブローカーからの推薦には、顧客の利益よりもブローカー自らの利益のためになるより高い手数料やコミッションが伴う可能性もある。

 プロの助言を求める一般投資家は、アドバイザーやブローカーにどのように報酬を受けるのか、また、それが助言にどのような影響を与えるかを問うべきだ。また、そのアドバイザーの典型的な顧客概要を聞いたり、顧客との関係を明示する契約書を交わしておいたりすることも役に立つ。

5.だまされていても気付かない

無リスクでリターンを保証:何がまずいのか? Getty

 米証券取引委員会(SEC)が2013年10月までの1年間にかかわった事例のうち、約4割が個人投資家をだましたことに関するものだった。こうした事例のうちの多くでは、加害者が非現実的なリターンを約束し、リスクはゼロかゼロに等しいと話していた。これらは最も典型的な詐欺の兆候だが、投資家の大部分は高リターンの保証に目がくらみ、これに気づかない。

 米国で個人投資家の被害救済に取り組む弁護士集団PIABAの幹部は、投資家はうまい話だと思ったら、販売者の名前と商品の詳細情報を尋ね、各州の証券規制当局にさらなる情報を問い合わせるべきだと話している。
6.年齢を重ねても賢くなるとは限らない

 資産運用となると、年配の投資家に特有の不利な点もある。米国科学アカデミー紀要が行った13年の調査によると、65歳以上では健康な人でさえ投資判断に影響を与える「認知機能の著しく衰え」が生じる。この調査では、年齢のいった人のほうが、若者や中年層よりリスクの高い(そしてまずい)選択をしがちなことも明らかになった。

 さらに、FINRAの調査によると、40代の投資家と比較して、もっと年齢が上の投資家のほうが金融詐欺に引っかかって資金を失う確率が34%高い。
7.恐怖心が強すぎてもっと投資できない

投資家は見事に誤ったタイミングで相場から逃走する Shutterstock.com

 2014年にはダウ平均が7.5%高、S&P500種が11.4%上昇するなど、何度も過去最高値を更新した。ただ、その恩恵を共有できた米国の個人投資家はそれほど多くない。ギャラップのデータによると、昨年、株式を保有していた米国の成人の割合は54%にすぎなかった。ITバブルが崩壊した00年は過去最高の67%に達していた。

 00年以降2回の株式相場暴落で痛手を負った多くの投資家にとって、「恐れ」という要因がある。SECで投資家教育事業を率いるロリ・ショック氏は、前回の金融危機で投資家の多くは保有株を投げ売りしてしまい、「その後の4年間の強気相場を逃した」と指摘する。
 最近の強気相場にかかわらず、ギャラップの調査で投資家の8割以上が投資に臆病になっていると回答した。さらに、もし1万ドルもらえれば現金で保有すると答えた回答者が約36%に達した。投資に回すと答えたのは41%だった。
8.年金の取り崩しが早すぎる

年金の早期取り崩しは税負担を重くする Palto/Shutterstock.com

 早期に年金基金を取り崩すと、税制面で不利になるばかりか複利の恩恵も逃すことになる。ただ、ギャラップの調査によると、過去5年間にある時点で時期尚早に401kプランに手をつけた投資家の割合は21%に上った。調査対象となった退職前の投資家のうち、401kプランをもとにローンを組んだと答えた割合は約16%、同プランから早期に資金を引き出したのが9%に上った。(この両方を行った人々もいた)

 目先の必要性を満たすため、とっさに長期の預金口座を取り崩す人もいる。人事コンサルティング会社エーオンヒューイットによると、確定拠出型プラン加入者のうち負債残高が貯蓄残高を上回る人の割合は、05年の22.4%から10年には過去最高となる27.6%に達し、自分たちの401k口座から資金を引き出した人の割合は09年だけで過去最高の7.1%だった。

9.投資を高校の人気コンテストかのごとく扱っている

投資番組は株を買わせる群集心理を誘発する CNBC

 金融メディアやソーシャルメディア、オンラインフォーラムのおかげで、投資家がポートフォリオのアイデアを共有しやすくなった。ただ、研究者の多くは、同僚や隣人がどのような取引をしているかに基づいて売り買いの判断をしがちになり、こうした透明性が投資における群集心理を助長していると考えている。例えば、研究者らは08年に、同じコミュニティーに住む投資家がほぼ同じタイミングで株式を買い増していることを知った。また、11年には別の調査で、401kプランの選択に同僚が影響を与えていることも明らかになった。

 問題は群集心理が、低い投資リターンにつながりかねないことだ。米サンタクララ大学で投資家行動を研究するメイア・スタットマン教授は「よく分かっていない人が他の人を導く状況がある」と指摘する。
10.資金をもっと上手に守る方法がある

勝利は簡単ではないがあきらめるべきではない Shutterstock.com

 合法的に行った投資の資産価値が低下して損失につながれば、ほとんどの投資家は歯を食いしばって耐えるしかない――これは投資リスクの一つだ。しかし、だまされたと感じた投資家は無力ではない。証券法に違反した不正直なブローカーや詐欺師にだまされた人は、少なくとも損失の一部を取り戻す、あるいは規制当局に苦情を申し立てることも可能だ。

 FINRAがブローカーに対する苦情を受け付けているほか、投資家はSECや州の規制当局に投資アドバイザーに関する問題を訴えることができる。また、ブローカーディーラーが倒産した場合は、米証券投資家保護公社が、保有していた証券や現金を投資家が取り戻すために支援することになる。