■こんな人は申告がお得

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■こんな人は申告がお得
 2016年に源泉徴収ありの特定口座で上場株式、公社債投資信託などを売買して利益が出た人、損失が出た人で、特に複数の証券会社を使っているようなケース。確定申告で利益や配当から天引きされた税金が戻るかも?

 2016年に株を売買してもうかった人、配当を受け取った人の中には確定申告をした方がお得という人がいる。株の利益から源泉徴収された税金が、本来納めるべき税金より多いというケースだ。

 株式(上場株式)を売って得た利益(譲渡益)や配当金には、20%(復興特別所得税を除く、以下同様)の所得税等が課せられる。公社債投資信託を換金して得た利益、配当金、債券等の利子、普通分配金も同様だ。

 多くの場合、これら税金は受け取る前に源泉徴収されているが、天引きに際しては投資家の最終的な損益までは考慮していない。

 例えばA証券ではもうかったが、B証券では損をしていてトータル赤字という場合や、16年は株でもうかったが15年の損失を考えると、ここ2年では赤字という場合でも、証券口座ごとの1年の利益を基に税金が天引きされてしまう。


■複数の証券口座持ちは確定申告を
 そこで登場するのが確定申告だ。投資全体の損益を相殺(損益の通算)した上で、本来納めるべき税額を再計算し、もし、天引きされている税金が多ければ返してもらえる。
 損益を通算できるのは同じ種類、または類似金融商品の取引から生じた利益と損失に限られる()。

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2016年1年間に生じた上場株、ETFREIT、株式投信、公社債投信、国債社債、外債、MMFなどの譲渡損益、配当、分配金、利子などは全て通算可能(損益の通算)。商品ごとに天引きされた税金の合計が、本来納めるべき額より多い時は還付を受けられる

 もし、1つの「特定口座(源泉徴収あり)」に取引を集約し、配当金も受け入れていれば、損益は自動的に通算されており、確定申告のメリットはあまりない(配当等について総合課税を選択する配当控除を考慮しない場合)。

 だが、複数の証券口座で取引していたり、配当金を郵便局や銀行で受け取ったりしていると、確定申告で損益を通算した方がお得というケースも出てくる。

 損益を相殺できる範囲は時間軸方向にも広げられる()。例えば16年1年間で結局、損をしたという場合、利益から引き切れなかった損失は、確定申告をすることで17年以降の利益(譲渡益や配当)と相殺することもできる。これを損失の繰り越しという。継続して申告すれば最大3年間、損失を繰り越すことが可能だ。

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2016年内に確定した最終的な損失は、連続して確定申告することで2019年までの上場株式等、特定公社債等の利益(譲渡益、配当、分配金、利子)と通算、相殺できる

 なお、源泉徴収ありの特定口座を通じて売買した上場株式等の譲渡益と、前年から繰り越した損失を通算すると、通算前の譲渡益の金額分だけ、その年の合計所得金額が増える。譲渡益が大きいと配偶者特別控除の適用などに影響が及ぶ場合もある。申告前には制度を理解した損得計算が必須だ。