中国や韓国の関与、そして糸を引く「日本人」とは…

中国や韓国の関与、そして糸を引く「日本人」とは… 

http://www.sankei.com/images/news/170311/prm1703110024-n1.jpg杉田水脈

 3月1日に産経新聞出版社より拙著「慰安婦像を世界中に建てる日本人たち 西早稲田発→国連経由→世界」が発売となりました。皆様のおかげで売り上げは好調、発売から1週間で重版が決まりました。

 さて、この本ですが、タイトルを見ると「慰安婦問題の本かな?」「国連の本かな?」と思われる方が多いかと思います。が、実はここに連載してきた「杉田水脈のなでしこリポート」がすべてギュッと詰まっているのです。

 私の問題意識の中心はやはり慰安婦問題です。3年前にNHK中継入りの衆議院予算委員会で、カリフォルニア州グレンデール市をはじめとしてアメリカ各地で建てられる慰安婦の像や碑について質問しました。最後に河野談話の撤廃を前提とし、河野洋平氏の参考人招致を要求したことで、この質疑の動画は一気に広がりました。

この質疑をきっかけに「杉田水脈」を知ったという方も多いのではないでしょうか。当時はまだ「慰安婦像」の話をする人など誰もいませんでした。その後、河野洋平氏は無理でしたが当時の官房副長官の石原信雄氏が参考人招致に応じてくださり、河野談話作成時の真実を話されました。これをきっかけに政府は河野談話の検証を実施しましたが、見直しや破棄には至っていません。が、この動きに追い詰められたのか、あの朝日新聞が訂正記事を出したのでした。

その後の解散総選挙で落選しましたが、国連でのスピーチや海外での活動を通じ、日本の真実を発信し続けてきました。2015年の末には日韓合意があり、翌年、日本はそれに基づいて元慰安婦のために10億円を拠出。一方、韓国は日本との約束を反故にし、その後も国内外に慰安婦像を立て続けています。こういった動きもあり、今では「慰安婦像」という文字を産経新聞のみならず五大紙各紙で毎朝目にする状況となっています。皆さんにもいかにこの慰安婦問題が外交における重要な問題であるかをわかっていただけるようになったのではないかと感じています。

 さて、3年前の質疑では「慰安婦問題をはじめとする歴史問題を外交問題化しない」と答弁していた日本政府ですが、その姿勢も少しずつ変わりつつあります。
 まず、昨年末、韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置されたことに抗議するため、日本政府は韓国から大使と総領事を帰国させました。「すぐに韓国に戻すのではないか」との報道が相次ぎましたが、2カ月以上たった現在も大使らは日本にとどまっています。「韓国側が何らかの改善を示すまで返さない」と強い姿勢で臨んでいるのです。

 また、グレンデール市に設置された慰安婦像の撤去をめぐり、現地在住の目良浩一氏と日系住民らで作るNPO法人「歴史の真実を求める世界連合会(GAHT)」が米連邦最高裁での上告審を求めていることについて、日本政府が「請求は認められるべきだ」との見解を表明した意見書を連邦最高裁に提出しました。この裁判はこれまでに州裁判所、高等裁判所で原告の訴えが退けられています。

裁判の過程で、判事が原告側弁護人に対し、像などの設置が日本人の感情を傷つけたとの原告側の主張が事実であれば、「なぜ日本政府から同調する内容の意見陳述書の提出がないのか」との発言があったことが明らかになっており、今後の裁判の行方は日本政府がどのような態度をとるかにかかっていました。遅きに失した感はありますが、日本政府が意見書を提出したことは大きな前進といえます。

 「日韓合意はアメリカの意向だった」と考えている私は、日本政府が強気の行動に出られるようになった裏に「トランプ政権誕生」があるのではないかと見ています。

 このように日本を取り巻く状況は刻々と変化をしています。昨年は、さまざまな視点で海外取材を行ってきました。慰安婦問題だけにとどまらず、海外で展開される反日の動き、LGBT(性的少数派)や女性の社会進出、教育や移民問題についても現地取材してきました。「なでしこリポート」というアウトプットの場をいただき、また、多くの皆さんに読んでいただける人気連載に育てていただきました。今回はそれがまとまって本となったわけです。

 本の原稿を仕上げた後も様々な問題が浮上しています。カナダのオンタリオ州では「南京大虐殺記念日制定法案」なるものが提出されました。現地の日本人の方々と協力しながらなんとか止める運動を行っているところです。また、この本にも詳しく書いていますが、ユネスコにおいて慰安婦の記憶遺産登録の審査が始まりました。

 国内では年始から、今まで報道されなかった問題が明るみに出てきました。アパホテルが「南京大虐殺」を否定する書籍を客室に置いている問題、「ニュース女子」という番組が沖縄基地反対派の暴力的な活動を事実に基づき報道したのにも関わらず、デマだとして放送倫理・番組向上機構BPO)放送人権委員会に申し立てられた問題などなど。これまでと違うと感じるのは、こういった左派の攻撃に対し、当事者側が毅然とした態度で対応し、反論しているところです。左派は攻撃に強いが、反撃に弱い。特に手の内(手法、やり口)を明らかにされることを恐れているように感じます。

 慰安婦問題、南京事件、沖縄問題、防衛問題、家族解体の問題。国内外にわたって展開されるこれらの問題の大まかな形が見えてきました。敵はすべて裏でつながっています。中国や韓国の関与も大きいですが、糸を引いている「日本人」が大きなカギを握っています。政治家や活動家が入り交じって表となり裏となり動いていますが、個人個人の顔が見え始め、その後ろに潜む組織も概要がわかりつつあります。

 まずは皆様にこの本を手に取っていただき、今後の日本がどんな動きをするのかその入り口を覗いていただければと思います。私は世界の動きと追いかけっこしながら、これからも「なでしこリポート」で発信を続けていきますので、よろしくお願いいたします。

杉田水脈(すぎた・みお) 昭和42年4月生まれ。鳥取農学部林学科卒。西宮市職員などを経て、平成24年に日本維新の会公認で衆院選に出馬し、初当選。平成26年に落選後は、民間国際NGOの一員として国際社会での日本の汚名をそそぐために活動を続けている。好きな言葉は「過去と人は変えられない。自分と未来は変えられる」。