参天製薬、緑内障手術時間15分に 治療器具を世界販売

参天製薬緑内障手術時間15分に 治療器具を世界販売

2017/3/18 0:30 日本経済新聞 電子版
 眼科用医薬品大手の参天製薬は、緑内障の新型治療器具を世界で販売する。小さなチューブ型で簡単な切開手術で目に埋め込み、失明につながる症状悪化を抑える。手術時間を約15分と従来より大幅に短縮した。年内に売り出す欧州を皮切りに米国でも投入。高齢者が多い患者の負担が小さい強みを生かし、年5000億円以上とされる成長市場で競合に対抗する。

 緑内障は点眼剤による治療が一般的だが、症状が悪化した場合、眼内にたまった体液を排出して眼圧を下げる手術が必要になる。眼球の壁に穴を開ける手法や体液の排出路をつくる切除手術などがあるが、手術の時間が1~2時間ほどかかり患者の負担が重かった。

 治療器具「マイクロシャント」は針のような形状で長さは8.5ミリメートル。切開部分が小さく手術時間も15分以下で済むという。安全性に配慮して心臓血管手術などに使う管状チューブと同じ生体適合性材料を採用した。

 このほど欧州で製造販売許可を取得した。年内にも販売を始める。米国では治療効果を確かめる臨床試験(治験)を始めており、2020年の販売をめざす。日本でも販売を検討する。

 世界では7000万人以上の患者がいるとされる。高齢化で今後も増える見通し。参天製薬は「点眼剤など治療薬と合わせて販売し収益の柱にする」(黒川明社長)。

 参天製薬の主力の緑内障向け治療薬は、連結売上高の約4分の1を占める。現在は眼科用医薬品で世界5位だが「20年までに3位に引き上げる」(同)。このため企業買収などで製品強化や販路拡大に取り組んでいる。

 14年には製薬世界最大手の米メルクから6億ドル(約618億円)で眼科用医薬品事業を買収。米国を除く日本、欧州、アジア太平洋地域でメルクの製品を販売・製造する権利を得た。緑内障の治療器具も16年に買収した米インフォーカス(フロリダ州)が開発した。メルクから得た販売網を活用して市場を開拓する。

 緑内障 眼球内部を満たしている体液がうまく排出できず、眼圧が高まり発症するとされる目の病気。眼圧が高まることで視神経が傷つき視野が狭まっていく。日本人の失明原因の第1位の病気で国内には400万人の患者がいるとされる。早期に診断を受け、治療することで症状の進行を止めることができるが、現状では完治させる方法はない。