慰安婦「性奴隷」と誤認 日韓合意見直し勧告の国連拷問禁止委員 韓国NGO報告に酷似
慰安婦「性奴隷」と誤認 日韓合意見直し勧告の国連拷問禁止委員 韓国NGO報告に酷似
【ロンドン=岡部伸】国連の人権条約に基づく拷問禁止委員会で、慰安婦問題をめぐる2015年の日韓合意の見直しを韓国政府に勧告した委員が、慰安婦を「第二次大戦中の性奴隷制度の犠牲者」と表現していたことが21日、明らかになった。「慰安婦=性奴隷」という誤認を正す対外発信が改めて求められそうだ。
産経新聞の取材に対し、同委員会が勧告後に開かれた記者会見の具体的な内容を明らかにした。それによると、日韓合意見直しの勧告を受け、韓国の記者が「生存する被害者が求めているのは賠償や補償ではなく謝罪。これについて意見は」と質問した。
これに対し、会見に臨んだモルドバ出身の女性委員が「議論したが、第二次大戦中の性奴隷制度の犠牲者はまだ懸念が残っている」と述べ、慰安婦を「性奴隷犠牲者」との認識を示した。その上で「(生存する元慰安婦)38人の被害者にもっと積極的に補償や名誉回復がなされるべきだ。次回も引き続き追跡して注視したい」と語り、「最終的かつ不可逆的解決」をうたった日韓合意を否定する見解を示した。
同女性委員の見解は、韓国の非政府組織(NGO)63団体が3月20日に提出した報告書と酷似している。報告書では慰安婦を「日本軍の性奴隷」と決めつけ、「日韓合意後も日本政府は日本軍の性奴隷の事実を否定」と主張している。
さらに報告書は、韓国政府が元慰安婦の要求を無視して日本政府と合意し、日本からの「支払い(拠出金)」の受領を促したため元慰安婦らの心理的苦痛や健康が悪化したと指摘。合意撤回と解決策を韓国政府に求めているとしている。
また日本政府はこれまで「アジア女性基金」を設立し、元慰安婦に「償い金」も渡している。昨年開かれた国連女子差別撤廃委員会では、日本政府は慰安婦の強制連行を裏付ける資料は発見されておらず、「性奴隷」の表現は事実に反すると反論している。
委員の「性奴隷」発言は、こうした事実や経緯を踏まえず、偏った韓国側の主張に依拠していると言わざるを得ない。
女子差別撤廃委員会でも「被害者中心の立場に立ったものでない」と日韓合意に批判的な勧告を行うなど、国連の名を冠した組織が韓国側の主張に沿い日本を非難するケースが多い。