「ごみ同然の失敗衛星」 日本版GPS衛星みちびき 来年度から本格運用

構想45年、お蔵入りだった「日本独自軌道」復活の転機は「ごみ同然の失敗衛星」 日本版GPS衛星みちびき、来年度から本格運用 2号機1日打ち上げ

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 日本版の衛星利用測位システム(GPS)を担う政府の準天頂衛星みちびき2号機が6月1日午前9時17分46秒、H2Aロケット34号機で種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げられる。日本人が45年前に考案した独自の軌道を飛行する国産の測位衛星だ。運用中の1号機を含む計4基で来年4月から本格運用が始まる。

 GPSは米国が開発した位置測定システムで、約30基の衛星が地球を周回し全世界をカバーしている。日本でもカーナビゲーションなどで広く利用されているが、日本周辺を補完的に測定する衛星として開発されたのがみちびきだ。

 赤道上空の静止軌道を傾けたような軌道を周回。地上から見ると8の字を描き、日本の真上付近(準天頂)を長く飛行する特徴がある。このため測定用の電波が高層ビルや山に遮られず、GPSより安定で高精度の位置情報が得られる。

 この軌道は準天頂軌道と呼ばれ、旧郵政省電波研究所(現情報通信研究機構)の研究者が昭和47年に考案。しかし衛星の燃料消費が多く実用的でないとされ、お蔵入りになった。

 平成に入り燃料の節約方法が見つかったが、日本の真上を飛ぶ利点を検証できないことが実用化の壁に。転機は平成10年に意外な形で訪れた。打ち上げに失敗した通信衛星が予定外の軌道を飛行し始め、ごみ同然と思われた中、同機構の研究者が検証実験に使うことを思い付いた。

 衛星が日本の真上を通過するとき、アンテナをつけた車で東京・丸の内の高層ビル街を走行し、電波を安定して受信できることを実証。これを機に政府が実用化へ動き出した。
 年内に計3基を打ち上げ本格運用の体制が整う。検証実験に携わった同機構の田中正人主管研究員(58)は「感慨深い。準天頂軌道は通信や極域の観測にも活用の余地がある」と話す。