ケント・ギルバート氏 「歴史戦」講演会詳報

「朝日の嘘は今世紀最大の嘘」ケント・ギルバート氏 「歴史戦」講演会詳報




 中国や韓国の反日宣伝活動に対し、日本がどう対処するかを考える講演会「今後、『歴史戦』をいかに戦うか」が1日、東京都千代田区憲政記念館で開かれた。慰安婦問題についてメディアで積極的に発言している弁護士でタレントのケント・ギルバート氏、産経新聞の阿比留瑠比論説委員兼政治部編集委員が講演した。また、米カリフォルニア州グレンデール市に設置された慰安婦像の撤去活動を展開するNPO法人「歴史の真実を求める世界連合会(GAHT)」の目良浩一代表も最近の米国内での反日活動を報告した。
 主な内容は以下の通り。

《朝日の嘘が国益害した》
 最初は、それほど慰安婦問題に関心がなかった。「朝日新聞が『強制連行はあった』と言っているし、戦争というのは色々あるものだから…」と深く考えなかった。

 しかし、朝日新聞が昨年、(朝鮮人慰安婦の強制連行を偽証した自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長、吉田清治氏の記事について)誤報を認めた。「朝日の嘘がどれだけ日本の国益を害したことか。今世紀最大の嘘だ」と感じた。それでいろいろと調べた結果、証拠がないことがわかった。

 慰安婦とは戦地における娼婦のことだ。業者が売春宿を経営していたのであって、旧日本軍が経営していたという信用できる証拠は何もない。では、娼婦がいなかったのかといえば、確かにいたし(日本軍人が)利用していた。でも、お金を払って利用していたのだから性奴隷とはいえない。日本兵だけでなく、米兵もよその国の兵隊も使っていた。戦争というものが生まれてから今日に至るまで「慰安婦」は戦地にいる。日本だけが悪いわけではない。

 もちろん、それが良いことだというわけではない。積極的に(解決に)取り組むべき人権問題だ。ただ、慰安婦問題では「軍が強制連行し、性奴隷のように扱ったのか」に論点を絞るべきで、そのような事実はなかった。
《米カリフォルニア州は中国に汚染》

 米カリフォルニア州サンフランシスコ市議会が先月、(慰安婦の碑、像の設置を支持する)決議案を可決した。私が非常に驚いているのは(決議案に)「20万人」という打ち消されたはずの数字が再び出てきたことだ。日本軍は150万人。強制連行された慰安婦が20万人もいるなんてことはあり得ない。

 (米国などで反日宣伝活動を展開する)世界抗日連合会が米国議員に圧力をかけた結果、米国政府は30億円くらいの資金を使って大規模な調査を実施した。だが、800万枚もの公文書など、調べても調べても証拠は出てこなかった。20万人もいたなら証拠がまったく残っていないことは考えられない。

 韓国が慰安婦問題を持ち出すのは、反日感情がないと国内がまとまらないから、というだけの理由だろう。
 でも、中国には別の理由もある。「慰安婦問題を利用して日米の信頼関係を壊し、安保条約を弱体化させよう。うまくいけば米軍が日本から撤退し、東アジアは俺たちのものになる」という狙いがあるのではないか。今は米国で(反日宣伝活動を)やっており、首都ワシントンはそれほどではないが、カリフォルニアは完全に中国に汚染された。

 国連というのも厄介な組織だ。日本はもっときちんと国連で主張していかなければならない。(慰安婦を性奴隷として認識するよう国連に働きかけている)日本弁護士連合会(日弁連)ばかりに主張させていてはいけない。日弁連という団体はもはや左翼政治団体に成り下がっていると思う。(支払いが義務づけられている)会費はとても高いが、詳しい使途が公表されない。政治活動に使われているなら任意の会費か寄付金にすべきだ。

《日本は英語で発信を》
 日本は世界に向けてもっと積極的に(真実を)発信しないといけない。
 「History Wars」(慰安婦問題を特集した産経新聞連載『歴史戦』の英日対訳版、産経新聞出版)は良い本だ。米国人の友達がいれば送ってあげてほしい。この本のように、もっと英語で発信しないといけない。

 最後に3点、日本に対して言いたいことがある。
 1つは、米国での(慰安婦像の撤去を求める)訴訟は徹底的にやってほしい、ということ。サンフランシスコの問題に関しても、すぐにでも訴訟を起こした方がいい。

 裁判では正義の主張をしても負けることがある。オーストラリアやカナダでは議会の段階で慰安婦像の設置を止められたから良かった。一度建ってしまうと(撤去を求める)裁判に勝つのは難しい。

 2つ目は、外務省はロビイストを雇うべきだ。安倍晋三首相の今春の訪米は、ロビイストを雇って大成功した。韓国も(反日宣伝のため)ロビイストを雇ったが、日本が勝った。

 3つ目だが、慰安婦のようなややこしい問題は「そうではないんだ」と主張しても終わらない。水掛け論はきりがない。問題をすり替えるのが良い。「戦時における女性の権利を考える国際会議」を日本が大々的に主催し、世界各国、特に韓国を招待すべきだ。日本は女性の権利を守る運動に積極的に取り組む国だというイメージをつくれるのではないか。

■阿比留瑠比氏
《「外務省は日本社会の縮図」》

 日本の外務省が無力なのは事実だ。その理由は、歴史問題を正しく語ることができ、反論でき、相手を納得させられるだけの知識と能力、意思を持った外交官の数が限られているからだ。この状況を変えていかなければいけない。

 時間はかかるが、それほど難しいことではない。中央省庁の官僚は計算高く賢い。安倍晋三政権のような保守派の政権が長く続けば、「保守派でなければ偉くなれない」と考えるようになる。

 その上、安全保障関連法が成立したため、かかりきりだった外務省の役人が「歴史戦」の仕事に参加できるようにもなる。
 ある時、役人が私に愚痴を言ったことがある。「外務省はダメだといわれるが仕方がない。だって外務省は日本社会の縮図なのだから」と。どういう意味か問うと、「入省試験に信条・思想調査はない。日本社会と同じだけの(割合で)共産党員などが入ってくるんだよ」とのことだった。

 外務省の保守派が意見を通そうと思えば、まずは省内で戦わねばならないのだ。そのため、国のために外務省が一丸となる、という発想がなかったのだろうが、今後は少しずつ生まれてくると思う。

河野談話、国内では無効化》
 現状は確かに厳しいが、以前に比べて改善した部分もある。
 朝日新聞は「朝鮮人慰安婦強制連行説」が国際社会に広がる一因となった吉田清治氏の証言を取り上げた記事18本を取り消した。

 産経新聞は平成4年の段階で、「吉田氏の証言には信憑性がない」という反論記事を掲載した。でも、当時はインターネットがなかったので、(他紙の報道が拡散することが少なく)自紙の読者すらだませば何とかなった。今はもう、そんなことは通じない。
 私は十数年前から慰安婦問題に関わってきたが、国民の理解のレベルはかなり底上げされたと感じる。

 河野洋平官房長官が平成5年8月に出した「河野談話」。この談話をまとめた際の事務方トップだった石原信雄元官房副長官に、私は平成9、17、25年の3回インタビューした。最初の2回も、石原氏は「慰安婦募集の強制性を認めた河野談話の根拠となる強制連行を示す文書・証拠はなかった」と明確に述べた。重要な話なのだが、当時は(報道しても)話題にならなかった。しかし、現在は多くの人たちが、こうした河野談話の問題点をわかっている。

 産経新聞は平成25年10月、河野氏が談話の根拠としていた韓国での慰安婦16人への聞き取り調査が、ずさんでいい加減な内容であることをスクープした。26年元日には、河野談話は日韓合作であり、原案段階で韓国大使館に見せ、韓国側の要求を大部分取り入れた形で修正したものだったことをスクープした。
 河野氏はそれまで、朝日新聞などのインタビューに「談話は日韓ですりあわせるものではない」と否定していた。彼は嘘つきだ。

 こういった問題が明らかになり、安倍政権下の昨年6月、政府が河野談話の作成経緯を検証した。河野談話はいまだに撤回できないでいるが、国内では無効化、無力化したに等しい。

河野氏の国会招致を》
 それをいかに、国内から国際社会に広げていくかが今後の課題だ。やはり、自民党が責任を持って河野氏を国会に呼ぶべきだと思う。
 
実は、河野談話には「強制連行」という文言はない。なぜ強制連行説が広まったかというと、談話発表時の記者会見で「強制連行の事実があったという認識か」と質問され、「そういう事実があったと。結構です」と答えたからだ。河野氏に国会に出てきてもらい、根拠を問うべきだ。

 河野氏はおそらく、インドネシアでオランダ人女性が(日本軍人により強制的に)慰安婦にされた事件を理由に挙げるだろう。しかし、この事件が発覚したとき、日本軍はすぐに慰安婦たちを解放し、(強制的に売春行為を行わせた)軍人は、後に軍事法廷で裁かれて刑罰を受けている。この事件は、軍の犯罪ではなく個人の暴走であったことの証左にしかならない。

 自民党は、マグロウヒル社の教科書などの慰安婦問題に関する誤記に反論してほしいという要望書を政府に提出した。安倍首相や菅義偉官房長官の気持ちは一つ。一度に全部を解決することはできないが、少しずつ前進するだろう。われわれ国民も一緒に真実を国際社会に届け、事態を是正したい。

《安倍首相「歴史問題はほふく前進」》
 歴史問題が難しいのは一度に全てを覆そうとすると相手が受け付けないことだ。相手が受け入れられるラインはどこかを考えながら少しずつ切り崩す手法も大切だと思う。

 安倍首相は以前、「歴史問題(の改善)はほふく前進で行くしかない」と私に語ったことがある。まどろこしいかもしれないが、安倍政権はこの3年間、ほふく前進してきた。残り(任期)の3年間もほふく前進し、振り返れば「よくここまで来たな」と思えるところまで行けるのではないかと期待を持っている。

 産経新聞出版社が出した「歴史戦」と、その英日対訳版「History Wars」を多くの人に読んでほしい。今までわれわれが弱かったのは、戦おうとしても日本国内に足を引っ張る勢力がいたからだ。その勢力との戦いが今、行われている。

 外務省も変わりつつある。ある外務省幹部はかつて「慰安婦問題ではすでに負けている。このままおとなしくしているほうがいい」と言っていた。負け犬根性だ。現在は「ちゃんと(歴史戦を)やろう」と主張する外交官が出てきた。
 私は(勝負は)これからだと思っている。われわれ国民が声を上げ、福島瑞穂社民党副党首のような方が恥ずかしくてお天道様の下を歩けなくなるような社会を作っていくべきだ。

■目良浩一氏
《米国の碑に「20万人連行」》
 米国で最初に「慰安婦の碑」ができたのが2010年、ニュージャージー州だ。その後も数カ所に碑ができ、2013年にはカリフォルニア州グレンデール市に「慰安婦像」が設置されてしまった。
 像の設置前、グレンデール市議会の公聴会で(設置の可否が)議題になり、私は反対意見を述べた。だが、韓国系の住民が準備を進め、すでに市議と話ができており、可決されてしまった。

 像の左側にある碑文も問題だ。そこには「20万人以上の朝鮮半島の女性が家から連れ出され、慰安婦にされた。日本政府はこの歴史的な犯罪を認めろ」という趣旨の文章が記されている。あたかも事実であるかのように書かれている。

 そこで、NPO法人「歴史の真実を求める世界連合会(GAHT)」を作り、2014年2月、グレンデール市を相手取り、慰安婦像の撤去を求める訴えを連邦地方裁判所に起こした。訴因は「地方自治体が連邦政府が管轄する外交問題に介入するのは米国の憲法違反である」ということだ。

 しかし、中国系団体である「世界抗日連合会」が「日本軍は悪いことをした」と主張する文書を裁判所に送りつけ、さらに私たちの弁護士事務所を攻撃した。雑誌にも「お金欲しさからこんな変な仕事を請け負った」などと書かれ、その事務所は弁護を降りてしまい、その年の8月、私たちは敗訴した。現在、控訴している。

 連邦裁判所とは別に、カリフォルニア州の裁判所にも訴えたが、(公の問題に対する恫喝的訴訟を禁じる)反SLAPP法が適用され、訴えが却下されてしまった。
 裁判所の判事ですら「日本軍の兵隊が悪いことをしたのは火を見るより明らかで、それに加担する弁護士は卑しい」と考えているのだ。

オバマ政権は無防備
 私たちは中国を警戒しなければいけない。サンフランシスコは中国系住民が多い。中国共産党は日米関係を悪化させるためだけでなく米国を乗っ取る意気込みで、まずはサンフランシスコを実質的に占領しようとしているのではないか。

 さらに(米国内の)他の土地にもどんどん中国系が住み、将来、米国を共産圏に入れてしまいたいという意図も感じる。
 先の大戦が始まった頃、ルーズベルト政権の中にはソ連のスパイが数多くいた。現在も同じように、中国のスパイが米国の(政府の)機構に入り込み、米国の政策を動かす傾向があるように思う。こういった状況に対し、現在のオバマ政権はあまりに無防備ではないか。

 慰安婦問題に関し、日本でよく知られている(慰安婦募集の強制性はなかったことなどの)事実は、ほとんど英語では発信されていない。英文の書籍をどんどん出版し、米国をはじめ英語圏の世論を変えていくことが大事な課題だ。