北朝鮮緊迫、なぜ当事国通貨「円」が買われるのか
北朝鮮緊迫、なぜ当事国通貨「円」が買われるのか
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2017/8/10 8:32
日本経済新聞 電子版
まず、今回円買いに動いたのはヘッジファンドの中でもCTA(商品投資顧問)と呼ばれる超短期投機筋である。高頻度売買を繰り返し、売買差益を追求する。彼らのコンピュータープログラムには「リスクオフなら円買い」とインプットされている。デイ・トレード(日計り売買)も多く、昨晩のNY時間では既に一部で利益確定の円売りもみられ、1ドル=110円台回復の局面もあった。
次に、「安全通貨」として昨日最も買われたのはスイスフランだ。米国も日本も当事国ゆえ、消去法で欧州の安全通貨に買いが集中した。
さらに、今回円が買われている理由として、北朝鮮リスクが米連邦準備理事会(FRB)の金融政策に与える影響も無視できない。仮にマーケットが今後リスクオフを強めれば、米連邦公開市場委員会(FOMC)としても、資産圧縮・利上げの「金融正常化」に慎重にならざるを得ないという見方だ。そもそもFRBのハト派的スタンスから生じたドル安の流れを引き継いだ動きとも読める。
最後に、マーケットは米朝軍事衝突シナリオの実現性を信じてはいない。韓国には多数の米国人居住者もいる。北朝鮮にも破壊的影響をもたらす。まず現実性は薄いシナリオだが、それでも、トランプ大統領や北朝鮮国営通信の激しいレトリック(語り口)を聞かされると「気持ち悪い=not comfortable」がゆえ、とりあえずマネーを逃避させる。日本が実際にミサイル攻撃の標的になる可能性は極めて低いので、スイスフランや金・米国債と並び「円」も一つの選択肢として買われるわけだ。