米の再三の防衛誓約は日本の疑いの反映

[FT]米の再三の防衛誓約は日本の疑いの反映

2017/8/17 15:55 日本経済新聞 電子版
 
ギリシャの哲学者プラトンは、聞こえのいい話を繰り返すことに害はないと言った。そしてきょう、米国は日本の防衛に対する責任を改めて確認する。トランプ米大統領就任以来、実に28回目となる。
■ほとんどは日本の直接要請によるもの


 相次ぐ日本防衛に対する再確認は、一部は民間や世論、そして米政府が主導したものだが、ほとんどは日本の直接的な要請によるもので、安倍晋三氏がトランプ大統領に面会した初めての国の首脳になってから始まった。27回目の再確認は昨日16日、日本への着任を前にしたハガティ米駐日大使が行った。そして17日には、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)で新たに任命された日本の外務・防衛大臣が、同じ趣旨の新たな再確認を引き出すために会談に臨む。これは恐らく安堵をもたらすだろう。だが、米国が再確認するほど、米国の防衛コミットメントに対する日本の信頼が揺らいでいることを確認する時が来るはずだ。
 日本が今週、再確認の文言を改めて求めた熱意は、見かけ上は理にかなっている。日本の子どもたちは夏の間、ミサイルの避難訓練を行っている。また、トランプ大統領の「炎と怒り」の誓いや、血も凍るような北朝鮮の発表、そして北朝鮮による核開発の進歩で危機が「新たな段階に」突入したとする公式評価が、差し迫った日本の安全保障環境を形作っている。

 過去には安全保障問題や、より積極的な姿勢を持つ必要があると明確な強硬路線を取ってきた安倍氏は、米国と北朝鮮の舌戦が勃発するなかで、地政学的な立場をあえて目立たせないようにしてきた。今のところは少なくとも、抜け目なく立ち回ったように見える。しかし、これも全て、米国は戸惑いなしに日本を攻撃から守り、そのためには核兵器の使用も辞さないだろうと知っている、安倍氏を囲む国内外の状況にかかっている。敵味方の誰も動揺を見せるべき時ではない。
 安倍氏にとって、どんな小さな弱みも北朝鮮と中国に察知されてしまう地理的なるつぼの中で、揺るぎない日米安全保障条約を示せる最適な手を決断することが問題になってきた。後から考えると、何十年も前から日本には大規模な米軍基地が至る所にあり、利益は口にするまでもなく明らかだったという含みを持たせたうえで、米国の「確固たる関与」を控えめに演出することも一つの手だったかもしれない。

■過度の防衛要求は日本の不安を露呈
 安倍氏が過度に再確認を求める手段に出れば、結局は、新たな確認の度にポーカーで言う「テル」と解釈されるリスクが高まる。つまり、日本が本当は心中穏やかでないため、のんきにしてはいられないというヒントを与えることになる。
 安倍政権は、疑いの理由を匂わせたかもしれないが、トランプ氏は見逃すことのできない3つのヒントを日本国民に与えている。まず、トランプ氏は大統領就任以降の最初の7カ月間で、米国の地政学的な立場における深い理解や歴史、根本的な目的に対する理解が浅いことを日本に示した。日本は、自国の幸福に対する米国の関心が例外になるとの自信が持てない。

 2つ目に、トランプ氏はオバマ前大統領が取ってきた立場のほぼ全てに反感を持っているのは明らかだ。日本には、トランプ氏の反感のなかに、オバマ氏の中心的な政策「アジア回帰」や、北朝鮮や中国の長期的な封じ込めに日本のような重要な同盟国を巻き込もうとした試みが含まれるのではないかと考える人もいる。米国が環太平洋経済連携協定(TPP)を離脱する決断をトランプ氏が即座に下したことは、日本にとって特に衝撃的だった。

 3つ目は、トランプ氏のあからさまな「米国第一主義」が、日米同盟の発足以来くすぶり続けている恐れを高めている。つまり、米国の特定の大統領は、いざとなれば、日本人を防衛することで米国民の生命を危険にさらすのをためらう可能性があるという恐れだ。
 これまでのところとても堅実に見えた状況への日本の不安は、トランプ氏率いる米国と世界で最も強固な同盟国との関係において試金石となる。その他の国々、特に現時点で韓国は、米との関係を軍事上、外交上の計算の中心に正しく据えている。だが、日本には米国が憲法に組み込んだ軍事的な制約と平和主義が明記されている。そして、それが日本自身の中核をなしている。
By Leo Lewis