「対岸の火事」と決め込んでいた米ウォール街の住人が慌て始めた 「開戦は新月の夜が多い…」
「対岸の火事」と決め込んでいた米ウォール街の住人が慌て始めた 「開戦は新月の夜が多い…」
ニューヨークのマンハッタンには「デリバーリング・アルファ」なる金融のプロの間では名の通った会合がある。日本語に意訳すると「市場に勝つ」。米国を代表する銀行家や運用責任者が、ご自慢の投資戦略を開陳する集まりである。
「デリバーリング・アルファ」は毎年夏、トランプ米大統領が住んでいたトランプタワーそばにある高級ホテル「ザ・ピエール」で開催される。今年は9月12日に開かれ、ムニューシン米財務長官ほか、米投資会社ブラックストーン・グループや米大手銀JPモルガン・チェースなど名だたる金融機関のトップが集まった。
「デリバーリング・アルファ」は7年目になるのだが、今年は金融とは毛色の違った会話が交わされた。投資で考慮すべきリスク要因として、これまで俎上(そじょう)にのぼったことすらない北朝鮮問題が初登場したどころか、頻繁に強調されていたのである。
ちょうど前日の11日に国連安全保障理事会が6回目の核実験を強行した北朝鮮に対する制裁強化決議案を全会一致で採択したばかりだったが、「北朝鮮が矛をおさめた」とは参加者は誰も思っていない。米国と北朝鮮が開戦した場合、世界経済や金融市場に与える影響が話し合われた。
ウォール街が北朝鮮問題に染まり始めている。ソウルや東京に拠点を持つ金融機関の一部は、「BCP」と呼ばれ、非常時の対応策を事前に定めた事業継続計画を真剣に検討し始めた。市場ではミサイル製造の米レイセオンといった国防株が買われている。