鼻水は平気なのに、なぜ鼻に水が入ると痛いのか?

鼻水は平気なのに、なぜ鼻に水が入ると痛いのか?


 たとえば髪を洗った際、うっかり鼻に水が入り、痛い思いをした人はないだろうか。どうして鼻に水が入ると痛くなってしまうのだろうか? 「教えて!goo」にも「鼻水をすすっても痛くないのに、鼻に水を入れると痛いのはなぜでしょう」と疑問を寄せる声を発見したため、笠井耳鼻咽喉科クリニック・自由が丘診療室・院長の笠井創先生に話を聞いた。

鼻に水が入ると痛くなる原因
 果たして鼻に水が入ると、痛くなるのはどういった理由からなのか? 
 「医療行為として、鼻副鼻腔炎アレルギー性鼻炎などで鼻洗浄を行うことがあります。その際に用いるのは、体温程度に温めた生理食塩水を主に使いますが、それだと痛みはほとんどありません。つまり、浸透圧と温度が粘膜表面と同じように調整された薬液であれば鼻に入れても痛く感じないということです」(笠井先生)
 痛みの原因は、「浸透圧」と「温度」によるもの。温度は、「粘膜表面」と「鼻に入る水の温度」のこととわかる。だが浸透圧は学生時代以来なので、言葉として知っていても、内容はぼんやりとしか覚えていない人もいるかもしれない。

 たとえば半透膜を挟んで、濃度の異なるふたつの液体がある場合、液体は濃度の高いほうに移動するのだが、このときの圧力の差を「浸透圧」と呼ぶ。それこそ片方が水、もう片方が食塩水の場合、水の方が濃度が低いため、食塩水のほうに引き寄せられる。この時の力が浸透圧である。
痛みを軽減する方法はあるの?
 つまり、浸透圧と温度が同じ液体であれば、鼻の中に入れても痛くない。違う場合は、痛いというわけである。となれば、鼻水をすすっても痛くないのも、同様の理由からと説明がつくだろう。鼻水以外にも涙、汗も同じ体液であることから、これらの液体も鼻に入っても痛くないそうだ。

 ちなみに鼻に水が入って痛くなってしまったとき、痛みが軽減するためにできることはあるのだろうか?
 「痛みが続いたとしてもせいぜい数分。何かするよりも、治まるまで待つしかないでしょうね」(笠井先生)
 残念ながら、痛み軽減のいい方法は見つからなかった。
 ちなみにプールの水は塩素などで消毒されているため鼻に入れば痛み、海水も通常は体温よりも相当低い温度で、塩分ミネラル濃度も生理食塩水よりも濃いことから痛くなるため、注意が必要ということも最後に付け加えておこう。