「被告は普通のおじさん」「死刑でよかったのか」 裁判員経験者の声、1冊に…「守秘義務議論の契機に」

「被告は普通のおじさん」「死刑でよかったのか」 裁判員経験者の声、1冊に…「守秘義務議論の契機に」



 被告は「普通のおじさん」だった-。弁護士らが裁判員経験者の声や制度の課題を取り上げた「裁判員裁判のいま」(成文堂)を出版した。裁判員に選ばれた驚きや被告の更生への思いなどがつづられており、執筆者の一人は「貴重な経験を共有し、守秘義務などについて議論するきっかけにしてほしい」と話す。
 同書をまとめたのは交流組織「裁判員経験者ネットワーク」で活動する弁護士や臨床心理士ら。選任手続き▽審理▽評議▽判決後-などの場面ごとに経験者の声を紹介している。
 選任手続きで「夕飯のおかずのことを考えていた」という40代の女性は、その日の午後に初公判が開かれると知り「えー?! 今日始まるの?!」と驚いたという。30代女性は法廷で見た被告の印象を「普通のおじさん」と振り返った。
 葛藤を明かす経験者も。死刑事件を担当した20代男性は、判決後に「本当に死刑でよかったのかなと思うようになった」と語る。

 同書では、評議の内容などに関する守秘義務や、裁判員の心の負担ケアなど、制度の課題も検証。執筆を担当した牧野茂弁護士は「守秘義務があることで、経験を語ることを躊躇(ちゅうちょ)する人もいる」とし、「裁判員の負担と意義の両面を伝えることが、増加傾向にある辞退率の改善などにもつながるはずだ」と指摘する。
 同ネットは17日、青山学院大学の総研ビル(東京都渋谷区)で公開シンポジウムを開催する。午後1時半~5時。事前申し込み不要。参加費は500円。