そのダイヤは天然?人工? 技術向上、見分け困難

そのダイヤは天然?人工? 技術向上、見分け困難

2017/9/16 9:33
 海外で生産された人工ダイヤモンドが、日本国内で流通している。天然物と同様に炭素から生成される合成品で見た目や性質に差はなく、専門の鑑定機関でないと見抜くのは困難とされる。天然ダイヤと混在して国内の卸会社に流通しているケースが確認されており、関係者の間には「売買トラブルに発展しかねない」と懸念する声もある。
人工ダイヤは色も輝きも天然物と変わりない
人工ダイヤは色も輝きも天然物と変わりない

 8月下旬、米国に拠点を置く宝石の研究機関が東京都内で開いたセミナー「ダイヤモンドの合成の最新情報」。業界関係者の関心は高く、100人以上の聴講者で会場は埋まった。
 中国で人工ダイヤが大量に生産されている実態や、海外の鑑別機関に持ち込まれたダイヤ300粒のうち、100粒が人工だったケースが紹介された。集まった人々は真剣な表情で聞き入り、セミナーに参加した宝飾業者の女性(45)は「想像以上に人工ダイヤが出回っていて、どう対処すべきか戸惑う」と話した。
 日本国内の鑑別機関である中央宝石研究所(東京・台東)では2015年前後から人工ダイヤがみつかるようになり、これまでに100件以上確認されたという。

 都内の宝飾会社の男性役員は今春ごろ、取引先から仕入れたダイヤモンドを鑑別したところ、人工ダイヤが紛れ込んでいることが判明した。人工ダイヤの価格は天然の約10分の1。男性は「まったく気づかなかった。プロだって肉眼では判断できない」と漏らした。
 天然ダイヤは卸売業者などが、鑑別した証明書をつける。だが、鑑別には時間と費用がかかるため、全てに証明書をつけることは難しく、実際の流通市場では証明書は高額なダイヤモンドに限られているとされる。同研究所の北脇裕士さんは「流通させる際は人工ダイヤであることを明らかにすべき」と訴える。


 人工ダイヤは専用の装置で炭素に高温高圧をかけ、一晩で作れる。工業用の研磨剤として60年ほど前から存在していたが、技術が向上し宝飾品でも使える良質で美しいダイヤが量産できるようになったという。
 関係者によると、ここ最近、中国に集積する研磨剤用ダイヤのメーカーが高値で売れる宝飾用の生産にシフト。人工ダイヤは宝石加工業者が集まるインドへ輸出。宝飾仕様のダイヤモンドに磨き上げられてから世界中に流通する。人工ダイヤの生産規模は米国の鑑別機関、GIAによると、世界中で掘り出される天然ダイヤの2~3%に相当する。

 関係者によると、一般的に国内ではダイヤといえば、天然を前提に流通。一方、米国などでは人工ダイヤであることを明らかにして販売する店舗もあり、価格が安いため、人工ダイヤを選ぶケースもあるという。しかし、実際には世界の市場では天然と人工がほとんど区別されず、仕入れ業者に流通してくるとされる。
 宝石の品質などを鑑別するAGTジェムラボラトリー(東京・台東)の幹部は「取引で無用な混乱を招かないよう、業界全体で冷静に対処してほしい」と話す。