日米首脳会談の裏で、なぜ上杉隆は警察に拘束されたのか?

日米首脳会談の裏で、なぜ上杉隆は警察に拘束されたのか?

上杉隆
日本、韓国、中国などを歴訪している米国のトランプ大統領。日本のマスコミは「日本を一番に訪れたのは安倍総理との関係性が良く、日本を重視しているから」と報じましたが、メルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』の著者で元ジャーナリストの上杉隆さんは「事実ではない」と断言。さらに、両首脳のゴルフ外交の舞台裏で自身に起きた「事件」を明かし、一部メディアと政府のやり方を厳しく非難しています。

日米首脳会談 NOBORDER追放事件

トランプ米大統領が来日した。日本のメディアでは訪日、米国のメディアではアジア歴訪と報じられている。
時を同じくして、脳科学者の茂木健一郎さんTwitter上のハッシュタグ(#)で「日米メディア比較」という興味深い試みをやられているので、長年、同テーマを追っている筆者も便乗したい。
米大統領のアジア歴訪はノーボーダーが半年前に得た情報通りにスケジュールが進んでいる。
すでに『ニューズ・オプエド』で伝えた通り、約半年前、ハワイ、日本、韓国、中国、ベトナム、フィリピンという日程でのトランプ大統領のアジア歴訪が決まり、日本では日本政府の強い要請により安倍首相とゴルフをすることが決まっていた(仮に総選挙の結果で安倍内閣が退陣していたら変更があったかもしれないが)。
日本では、盛んに訪問国の順序についての報道広報)が為されている。日本のメディアによると外務省の努力によって日本が最初の訪問国になり、この結果は安倍首相との強い絆を象徴するものだ、と盛んに報じられている。
残念ながら、事実は少し違う。過去の米政府高官のアジア歴訪でも「日本→韓国→中国という訪問順序は普通であり、今回特別にこうした順序になったわけでもない
そもそも、アジア歴訪の訪問国順序を重要だとして報じている米国メディアは一社も無い。
日本語の壁に守られて事実上の鎖国状態にある日本のメディアを気にしている米国メディアは皆無だ。それをいいことに政府、外務省、記者クラブが一体となってマッチポンプでの報道を続けて来たのが日米メディア戦争の真の姿だ。

来日初日、霞ヶ関カンツリークラブで発生した「NOBORDER追放事件」こそが、日本政府と日本のメディアによるマッチポンプ報道を象徴するできごとだった。
なぜ、筆者が日本のメディアのシステムを長年追及しているのか、また、ネットも含めたあらゆる同業者から眉をひそめられているのか、この「NOBORDER追放事件」を記せば少しは理解が広まるかもしれない。
事件当日の11月5日、NOBORDERチームは午前4時45分に東京ホテルニューオータニホワイトハウス設置のプレスセンターに到着した。
NOBORDERのホワイトハウス登録名「NBN」(NOBORDER NEWS)で約束通り2名分の公式取材パスが発行された。これはアジア歴訪全体で使用可能、もちろん日本でも同様のはずだった。それでも記者クラブのハラスメント嫌がらせ)を考えて、NOBORDERは念のため、外務省発行の同行記者証も取った(外務省北米一課長発行)。
大統領取材班の1人ジョゼフ記者は、横田基地への取材に向かった。専用バスで横田基地に到着、エアフォースワンから降りて、演説を行うトランプ大統領の取材を何の障害もなく出来た。なぜなら、そこが米軍横田基地、つまり米国国内だったからだ。
それでも米国政府とメディアはフェアである。相手国だからではない。中国やロシアのメディアも取材できている。トランプ大統領に批判的なニューヨークタイムズもCNNももちろん取材している。
さて同じ時間帯、筆者は埼玉県の霞ヶ関カンツリークラブに向かった。横田基地からそのまま安倍首相とのゴルフをするのには都合が良い。午前7時半、ホワイトハウスのパスを見せて、筆者はクラブメンバーとともにクラブハウス内部に入った。車両も初めから申請しており、問題なく専用駐車場に停めさせてくれた。
3カ所あったチェックポイントも身分証明荷物検査すべてパスした。
入口のソファに座っていると知己の今泉博・霞ヶ関カンツリー倶楽部総支配人がやってきて挨拶を交わし、2020東京オリンピックについてしばらく意見交換をした。その後、同じくゴルフダイジェストの取材でお世話になった木村希一理事長とも会い、これまでの対立も含め、しばらく雑談を交わした。
さすが2人ともゴルファーである。とても紳士的な対応で「上杉さん、きょうは大統領や内部の写真はダメですよ」と念を押すだけだった。そのあと、「これを胸につけてください」と霞ヶ関カンツリーのバッジを渡された。
日本の外務省やメディアと違ってフェアなのである。フェアな人々に対しては、筆者もフェアな態度で臨む。
昨年11月からのトランプタワーや2月のホワイトハウス、あるいはフロリダのトランプインターナショナルGCでの話題などで盛り上がった。二人のゴルフ紳士はNOBORDERのその取材もよく知っていて、近いうちに隣りのゴルフ場(東京ゴルフ倶楽部)でラウンドでも、と約束するほどであった。
事件は日本の記者たちや外務省の役人が下見に入って来て発生した。

筆者の姿を確認した日本人記者のひとりが上杉がいると外務省と官邸に密告した。すぐに官邸と外務省の下見班(20人以上いた)警察庁と埼玉県警に不審者が紛れ込んでいると連絡した。
同時に、米国の現場担当者(まだ責任者は横田にいた)に「あの男は危険人物だ」と通達、事情を知らない米国政府関係者が確認している間に、霞ヶ関カンツリーの今泉総支配人にも「上杉は不正に忍び込んだと虚偽の説明をした。
そもそもオフィシャルパスを持っている者を不正扱いするのも意味不明であるが、仮に、忍び込んだとしたら警備上の問題が浮上するはずだ。だが、そこは問題にしなかったということで、筆者はいつものように記者クラブと役人の仕組んだマッチポンプ」だとすぐに気づいた。
こうなると、もう何をしてもダメである。米国政府の責任者に連絡したが、同時に埼玉県警の警備担当のトップが筆者のもとにやって来た。
ご同行ください
埼玉県警の警備本部に連行され、靴を脱がされ、屋外通路にパイプ椅子を広げ、座らされた。取り調べの開始である。
「犯罪者扱いですが、ご覧の通り、わたしはホワイトハウスのパスも、外務省のパスも、ついでに支配人からこの霞ヶ関のバッジももらっていますよ」
そう説明している間に、筆者を取り囲む人数は増え、ついには官邸や外務省の現場担当者を合わせて15名くらいに膨れ上がった。
もう何を言っても無駄だ。いつものことなのだ。半年かかって苦労して得たパスも記者クラブと役人のマッチポンプで一瞬で無効化する。彼らが特落ちを恐れて、NOBORDERを目の敵にするのはわかる。
だが、それがフェアな競争ではなくて、いつも権力を使った姑息な排除」でやられる。そして、この「マッチポンプ」のしくみを知っている者は日本に皆無だ。たとえ、それが記者クラブ問題を批判して活躍しているジャーナリストたちであってもだ。
なぜなら、こうした交渉の苦労をしてきたのは、ここ20年間、筆者ひとりだからだ。
雑誌も、海外メディアも、スポーツ新聞も、ネットメディアも、フリーランスも、筆者の努力と交渉の成果によって、現在、日本の記者会見に出られることを知っている。
だが、内部に入った途端、既得権益し、むしろ筆者への攻撃を開始することで、記者クラブメディアへの忠誠を誓うようになる。
「もう、いいですよ。残念だが、日本ではいつものことだ。これが日本の記者クラブと外務省だ。トランプタワーで、ホワイトハウスで説明した通りでしょ。東京のホテルニューオータニのメディアセンターに戻って、◯◯と◯◯に連絡する(◯◯はホワイトハウスの担当者)。また別の国で会おう」
最後にやってきた米国政府の担当者にファーストネームを挙げて、英語でこう伝えると、彼女はとても驚いた表情を見せ、小声で「ごめんなさい」とつぶやいた。
駐車場までの約500メートル、筆者は両側を埼玉県警の警官に挟まれて逃げないように連行された。そして、自分のクルマに乗りエンジンをかけ、敷地内に出るまでずっと見送られた。

直後、一連の騒動で喉の乾きを覚えた筆者は、ゲートから一キロほど離れたファミリーマートでドリンクを買い、車内で一気に飲み干し、ホワイトハウスの担当者にいきさつを電話していた。
「NOBORDERとあなたを外せというのは日本政府からの強い要請なんだ。日本以外ではきちんと対応するよ」
驚くだろうが、これが記者クラブと政府の現実だ。そして、筆者は20年間、ずっとひとりでこうした「卑怯」と戦ってきた。時に涙を流し、時に誰かに訴えながら。
知らない者はみな陰謀論で片付ける。知っている者は先述した通りだ。
さて、エンジンをかけようとした時だ。警察官が3人近寄って来て筆者のクルマの窓をノックした。
「上杉さんですね。事情を聞かせてください」
ナンバープレートか、尾行か? これもいつものことだ。
それにしても、コンビニの駐車場でドリンクを飲んでいてもダメなのか。
記者クラブと外務省の「マッチポンプ」を説明すると、警官たちは驚いていた。
「この20年間、警察庁と警視庁はいつもよくしてくれました。みなさんと同様、現場で苦労する者の苦しみがわかっているからですよね。でも、日本のメディアと外務省や官邸の役人は違いますよ。いつも威張って、弱き者の仕事の邪魔をし、手柄は自分、失敗は部下に押し付けるような卑怯なことを続けている。みなさんが出世したら、汗をかいた者が評価されるようなフェアな社会にしてください。おつかれさまです。もう1本だけ電話をさせてください。そしたらクルマを出しますんで」
日米メディア比較…。報道だけではなく、人間性でも圧倒的な差があることを茂木さんに伝えたい。