東電刑事裁判 原発事故の真相は?

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東京電力の旧経営陣3人が福島第一原発の事故を防げなかったとして検察審査会の議決によって強制的に起訴された裁判。半年ぶりに再開され、これから20人を超える証人を法廷に呼ぶ集中審理が行われます。原発事故の真相は明らかになるのでしょうか? 初公判から判決まで、毎回、法廷でのやりとりを詳しくお伝えします。

第3回公判 2018年2月8日

被告側弁護士「防潮堤建設しても事故防げず」証拠提出

被告側の弁護士が防潮堤を建設していたとしても事故を防げなかったとするシミュレーシ ョンの結果などを証拠として提出しました。

東京電力の元会長の勝俣恒久被告(77)、元副社長の武黒一郎被告(71)、元副社長の武藤栄被告(67)の3人は、原発事故をめぐって業務上過失致死傷の罪で強制的に起 訴されました。裁判では津波を事前に予測して対策をとることができたかどうかが争われ、3人は無罪を主張しています。

2月8日、東京地方裁判所で開かれた3回目の審理では、検察官役の指定弁護士と被告側の弁護士がそれぞれ追加の証拠を提出しました。

被告側の弁護士は、平成14年に公表された福島県沖の地震の可能性について、当時、内 閣府の中で、「信頼性が明らかではない」という意見が出ていたことを示すメールなどを提出しました。

また、原発事故の後で東京電力がシミュレーションを行ったところ当時の想定に基づいて 防潮堤を建設していたとしても事故を防げなかったという結果が出たとする証拠も提出しました。

次の審理は今月28日に開かれ、東京電力のグループ会社の社員が証言する予定です。

詳報 第3回公判

原発事故の責任が争われている刑事裁判はきょうで3回目。
双方がそれぞれの主張の裏づけとして新たに証拠を提出しました。

きょうも午前10時から審理が始まりました。勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長の3人は、それぞれ一礼して法廷に入りました。

きょうは双方が追加の証拠を提出しました。検察官役の指定弁護士は3点、被告の弁護士は64点です。

裁判では、旧経営陣の3人が事故が起きる前に巨大な津波を予測できたかどうかや、有効な対策を取れたかどうかが争われています。

指定弁護士は、津波を想定した対策が計画されていたのに先送りされていたことを示そうと、東京電力の社員のメールなどを提出しました。

メールは東京電力津波対策などを担当していた土木グループの社員が平成21年に出したものです。武藤元副社長などと津波対策の議論を重ねていたことが書かれているということです。

一方、被告の弁護士は、巨大な津波は予測できなかったことや、対策をとっても効果がなかったことを示そうと、さまざまな証拠を提出しました。

その1つが、内閣府に出向していた東京電力の社員が事故の前に出していたメールです。
メールには、平成14年に政府の地震調査研究推進本部が公表した地震の長期評価に関する記述がありました。長期評価では、福島県沖でも大津波を伴う地震が起きる可能性が指摘されていました。

しかし、東京電力の社員は、当時、内閣府の中で、「どの程度の精度、信頼性か明らかにしないと防災機関や住民混乱する」という意見が出ていたと、メールに書いていたということです。

また、被告の弁護士は、原発事故の後で東京電力が行った津波のシミュレーションの結果も示しました。福島第一原発を襲った津波の高さなどを計算したところ、当時の想定に基づいて原発の敷地の南側に防潮堤を建設していたとしても事故を防げなかったという結果が出たとしています。

そして検察が旧経営陣の3人を不起訴にした際に捜査結果をまとめた資料も証拠として提出されました。この中には「事故を防ぐには23メートル以上の防潮壁が必要だった」などと記されていたということです。

これらの証拠はすべて裁判所に採用され、審理は2時間ほどで終わりました。

次回は今月28日。事故の前に津波の想定を行っていた東京電力のグループ会社の社員が証言する予定です。

第2回公判 2018年1月26日

東電社員「巨大津波予測できず」公判で証言

およそ半年ぶりに再開された裁判で、東京電力の社員が、事故の3年前に幹部が参加した会議で巨大な津波の可能性を示す試算が報告されていたと証言しました。一方で、「試算には違和感をおぼえた」と述べ、津波は予測できなかったと説明しました。

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東京電力の事故調査報告書とは

東京電力は、事故を起こした当事者として社員およそ600人からの聞き取りや、現場での調査などをもとに対応や経緯などを検証し、事故の翌年に「福島原子力事故調査報告書」をまとめました。報告書では、事故の原因について「津波想定は結果的に甘さがあったと言わざるを得ず、津波に対抗する備えが不十分であったことが今回の事故の根本的な原因」と結論づけています。

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詳報 第2回公判

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今後の公判日程

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初公判 2017年6月30日

原発事故 東電旧経営陣3人 初公判で無罪主張

東京電力の旧経営陣3人が、原発事故をめぐって強制的に起訴された裁判が始まり、3人は謝罪したうえで「事故は予測できなかった」として無罪を主張しました。一方、検察官役の指定弁護士は、事故の3年前に東電の内部で津波による浸水を想定し、防潮堤の計画が作られていたとして対策が先送りされたと主張しました。
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津波対策めぐるやり取り 一部明らかに

初公判では、東京電力の社内で津波対策をめぐって交わされたメールなどの具体的なやり取りの一部が明らかにされました。
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指定弁護士(検察官役)が指摘したこと

検察官役の指定弁護士は、東京電力の社内で開かれた会議の議事録や津波対策の担当者がやり取りしたメールなど新たな証拠を示し、3人は事故の前に津波を予測できたのに津波への対策を取らなかったと主張しました。
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旧経営陣の反論

東京電力の旧経営陣3人は、当時の津波の想定では事故が起きることを予測できなかったと反論しました。
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福島原発告訴団「無罪主張に疑問」

東京電力の旧経営陣の告訴や告発を行った「福島原発告訴団」の団長の武藤類子さんは裁判の後で会見を開きました。
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「事故の真相知りたい」 遺族の思い

原発事故から避難する途中で亡くなった被害者の遺族は、「事故の真相を知りたい」と願っています。
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指定弁護士 冒頭陳述 全内容

問われているもの

福島第一原子力発電所の概要等

非常用電源設備等の設置状況

福島第一原子力発電所における事故の経過

本件事故の原因

事業者の注意義務

被告人らの立場とその責任

本件の争点

国による津波防災対策

文部科学省地震調査研究推進本部による長期評価の公表

社団法人土木学会による「重み付けアンケート」

内部溢水・外部溢水勉強会の開催と報告

原子力安全・保安院による「耐震バックチェック」の指示と東京電力津波対策

想定津波水位の計算結果とこれに対する被告人らの対応

土木学会第3期、第4期津波評価部会における検討

福島地点津波対策ワーキング会議の開催

長期評価の改訂

原子力安全、保安院による東京電力に対するヒアリング

まとめ

旧経営陣弁護側 冒頭陳述 全内容

3人の共通の主張

勝俣元会長の主張

武黒元副社長の主張

武藤元副社長の主張

基礎知識

最大の争点は「津波の予測」

裁判では、原発事故を引き起こすような巨大な津波を事前に予測することが可能だったかどうかが最大の争点になります。
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旧経営陣3人の立場と関与は

検察審査会の議決によって強制的に起訴された東京電力の旧経営陣3人は、いずれも津波対策を判断する上で極めて重要な立場にいました。
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検察が不起訴にした理由は

検察は平成25年9月、告訴・告発されていた旧経営陣全員を不起訴にしました。どのような理由だったのでしょうか。
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検察審査会の判断のポイントは

検察審査会は、平成27年7月、原発事故が起きる前の東京電力が経営のコストを優先する反面、原発事業者としての責任を果たしていなかったと結論づけました。
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東電内部資料「津波対策は不可避」

東京電力が行っていた津波の試算は、別の民事裁判で当時の内部資料が提出され、具体的な内容が明らかになっています。

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事故調からも厳しい指摘

東京電力福島第一原子力発電所の事故をめぐっては、政府や国会などさまざまな組織で検証が行われ、津波への対応について「対策を立てる機会があった」とか「不十分だった」などと指摘しています。
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民事裁判では「予測可能」の判断も

原発事故をめぐる民事裁判では、裁判所が「東京電力津波を予測できた」と判断したケースもあります。
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強制起訴 きっかけは1万人の告訴・告発

東京電力の元会長ら3人が強制的に起訴されたきっかけは、福島県の住民などによる告訴や告発でした。
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年表

原発事故 強制起訴をめぐる動き 平成14年(2002)7月平成20年(2008)3月6月平成23年(2011)3月平成24年(2012)6月平成25年(2013)9月10月平成26年(2014)7月平成27年(2015)1月7月8月平成28年(2016)2月平成29年(2017)6月平成30年(2018)1月

政府の地震調査研究推進本部
福島県沖含む日本海溝沿いで30年以内にM8クラスの地震が20%程度の確率で発生する可能性があると予測

東京電力 福島第一原発の敷地に最大で15.7メートルの津波が押し寄せるという試算をまとめる
東京電力 最大15.7メートルの津波試算を武藤元副社長に報告
福島県の住民グループなどが東京電力旧経営陣などの刑事責任を問うよう求める告訴・告発状を検察当局に提出
東京地検 東京電力旧経営陣など40人余りを全員不起訴処分
住民グループ 旧経営陣6人に絞り検察審査会に審査申し立て
検察審査会 勝俣元会長ら3人を「起訴すべき」と1回目の議決
東京地検 改めて3人を不起訴処分
検察審査会 3人を「起訴すべき」と2回目の議決
裁判所 指定弁護士を選任
指定弁護士 3人を業務上過失致死傷罪で起訴
勝俣元会長ら3人の初公判
第2回公判 証人尋問(東京電力社員)