憲法9条、改正はまだ本気?

憲法9条、改正はまだ本気?
坂本英二編集委員

 安倍晋三首相の政権運営への逆風がだいぶ強まった印象です。首相は憲法9条の改正をまだ本気でめざすつもりですか?
回答者:坂本英二編集委員 与野党の幹部2人の改憲についての本音トークをまず聞いてください。
 自民党の閣僚経験者「公文書の改ざん問題などで内閣支持率が急落し、改憲がすぐにできるなんて考えているやつは党内にもほとんどいない。安倍1強だとおだてられて調子に乗りすぎたツケだ」
自民党大会で演説する安倍首相(3月25日、東京都港区)
自民党大会で演説する安倍首相(3月25日、東京都港区)
 希望の党幹部「もともと9条改正なんて無理筋なんだ。首相は国会で『改正後も自衛隊の位置づけは変わらない』『改憲案が国民投票で否決されても自衛隊違憲にはならない』と言った。それならなんで改正するの? ふざけるな、だよ」
 現憲法は戦後一度も改正されておらず、与党内ですら改憲を優先課題に位置づけることに懐疑的な声があります。しかし、首相や周辺の考えは違います。
 3月25日に都内のホテルで開いた自民党大会で、首相は総裁演説の締めくくりの一節にひときわ力を込めました。
 「いよいよ結党以来の課題である憲法改正に取り組む時が来ました。憲法にしっかりと自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とうではありませんか。これこそが私たち、今を生きる政治家の、そして自民党の責務であります。敢然と使命を果たし、新しい時代をみなさん、つくり上げていこうではありませんか」
 首相は昨年5月3日の憲法記念日に「2020年までに改正憲法の施行をめざす」と目標を定めました。現状での最短シナリオは「今年秋の臨時国会での改憲案の発議、来年前半の国民投票」ですが、検討作業は遅れ気味でかなり綱渡りの日程です。連立を組む公明党や野党の一部の協力がないと改憲案の発議に必要な衆参両院の3分の2以上の賛成は見通せません。
 それでも首相や周辺は改憲の早期実現をあきらめていません。改憲こそが首相の最大の政治目標であり、今年9月の自民党総裁選で3選をめざす一つの根拠でもあるからです。首相が9条改正に白旗をあげて、安全策をとる可能性はないでしょう。
結論: 首相は本気です。9条改正は求心力を維持したまま長期政権をめざす旗印でもあるからです。