衛星用電池、コスト10分の1 JAXA・桐蔭横浜大 次世代太陽電池を応用

衛星用電池、コスト10分の1 JAXA桐蔭横浜大
次世代太陽電池を応用

科学&新技術
2018/5/21 13:03
 宇宙航空研究開発機構JAXA)は桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授と共同で、人工衛星に積む太陽電池の製造コストを10分の1にする技術を開発した。印刷技術で簡単に作れる「ペロブスカイト型太陽電池」を使う。薄くて曲げられるため、打ち上げ後に展開して大きな面積に広げられる。数年後に宇宙で実証試験を始め、リコーなどと協力し実用化を目指す。
 民間企業による衛星やロケットの開発が活発になっており、各社は家電向けの民生部品を使うなどして低コスト化に力を入れている。現在、衛星の太陽電池はシリコンなどの半導体を使うタイプが主流だが、製造工程が複雑なため、衛星のコストの1割以上を占める場合もある。
 ペロブスカイト型太陽電池は、ペロブスカイトという結晶構造をもつ特定の物質などを基板に印刷して作製する。安く作れる次世代の太陽電池で、衛星の製造コストの引き下げにつながる。
 研究チームは宇宙での利用を見込んで壊れにくい材料を使い、小型の太陽電池を試作した。静止衛星に積んだときを想定し、10年分の放射線を数時間で浴びせて耐久性を調べた。従来型の太陽電池は光から電気に変える効率が約4割下がったのに対し、ペロブスカイト型は約1割低下した。
 太陽電池の厚さは従来の100分の1となる1マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル以下。小さく折り畳んで搭載でき、宇宙に到達したら広げられる。重さもこれまでの100分の1に抑えられ、打ち上げコストの削減につながると期待される。
 光から電気への変換効率は今のところ5%程度にとどまるため、今後、改善を進める。大型のパネルを試作し、実際の打ち上げを想定して温度変化や激しい振動などへの耐久性を調べる。