◆◇地場者の立ち話~番外編~◇◆2018.08.11

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◆◇地場者の立ち話~番外編~◇◆
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T「今週は揉み合い相場だったんだが、週末に崩れてしまった。」

M「ああ。週末までは今週はSQ週ということもあり、国内では決算発表ラッシュということから、売り買い交錯しやすかったといえる。」

T「まあ、お盆休み前ということもあって、積極的な売買は限られた面もあるけどな。」

M「そんな中、米国株が堅調だったといえるだろう。ナスダック指数は木曜日まで8連騰していたし、S&P500指数なんて1月に付けている最高値が射程圏という水準まで上げていた。」

T「そうだな。今週も引き続き米中貿易摩擦懸念が重しとなっていた面もあるものの、それでも相次ぐ企業の好決算が相場を押し上げた。」

M「先月はフェイスブックショックにより、企業業績への懸念も意識されてきたものの、先月末引け後に発表したアップルの決算が、そういった懸念を払拭させた印象だ。」

T「そうだな。それを機に米国市場ではリスクを取ろうとする向きが確かに増えた感じだ。」

M「まあ、世界一の時価総額であるアップルが、決算発表前すでに高値圏にもかかわらず、更にそこから派手に上げたんだ。含み益が大きく増えた投資家は多いだろう。」

T「それによりリスク許容度が増し、他の銘柄にも買いが波及したという面もあるだろうからな。」

M「しかし週末にはトルコショックが水を差してしまった格好だ。」

T「ああ。昨日、為替市場でトルコリラが急落した。日本株が昨日派手に売られたのも、それが影響しているといえるだろう。」

M「そうだな。きっかけは英FT電子版が、ECBが欧州の銀行のトルコ向け債権に対する懸念を強めていると報じたことだ。」

T「トルコリラの下落は、別に昨日突如起きたわけではない。随分と前から下落基調となっていた。」

M「ああ。ただそれが他の懸念に繋がっていなかっただけだ。しかし昨日は、英FTの報道を機に、トルコの金融危機が意識されてしまった。」

T「トルコリラの下落が進めば、トルコ債の下落に繋がり、それを保有する金融機関への懸念に繋がる。」

M「特に欧州はトルコ向け債権を保有するところが多く、もしトルコリラの急落によって、トルコの財政悪化が酷くなれば、欧州金融危機に発展する恐れもある。」

T「そういった懸念が昨日は意識されたことにより、トルコリラの下落に拍車が掛かった。」

M「ああ。更にそれに加えて、トランプ大統領がトルコに対して鉄鋼・アルミ関税を2倍に引き上げるとの発言も、トルコリラの下落を加速させた。」

T「米国とトルコは以前から米国人牧師拘束問題で、関係が悪化している。」

M「ああ。米国は解放を以前から求めているが、トルコはそれに応じようとしない。」

T「それに対して圧力かけるために、トランプ大統領は関税引き上げを決めたんだろう。」

M「そういったこともあり、昨日は一日で、トルコリラは大きく暴落した。それが株式市場にもリスクオフの動きに繋がった。」

T「それにトルコリラの下落が、他の新興国通貨の下落にも拍車をかけている。」

M「ああ。そういった流れが今後も強まり続くようだと、新興国からの資金流出が止まらなくなる。そうなれば為替市場ではドルや円が大きく買われることになる。」

T「ドル高は米国経済に悪影響となる恐れもあるし、世界的なリスクオフの動きになる可能性もあると言うわけだな。」

M「ああ。」

T「ただ昨日、米国市場が引ける前には、米国人拘束問題が解決へ向けて進展しているとの報道があった。」

M「そうだな。それにより引けにかけ、米国株はやや下げ幅縮小し、日経先物も夜間取引で下げ幅縮小した。」

T「無事に米国人拘束問題解決し、トルコ懸念が後退すれば良いけどな。」

M「ただ、トルコ懸念の背景は、米国人拘束問題だけじゃないからな。」

T「まあ、確かにそうだな。」

M「もともとのトルコリラの下落の背景には、トルコ政権への不信感だ。正確にはエルドアン大統領への不信感だけどな。」

T「そうだな。エルドアン大統領が6月に大統領に再選してから、懸念が強まっていった。」

M「エルドアン大統領は再選後、自分の娘婿を財務相に起用したり、中銀人事への介入もしようとしている。」

T「ああ。中銀の総裁、副総裁、政策委員を大統領が任命すると定めた大統領令を発令させている。」

M「トルコはインフレ懸念が強まっていることから、先月の金融会合ではトルコ中銀により利上げが見込まれていた。しかしまさかの見送りとなり、トルコリラの下落を誘った。」

T「エルドアン大統領は、トルコ景気への悪影響を懸念して利上げには反対姿勢を示しており、トルコ中銀はそれを配慮し利上げを見送ったとの見方が多い。」

M「もはやトルコ中銀には独立性もないということであり、トルコはエルドアン大統領による独裁色が一段と意識され懸念されている。」

T「それだけに、例え米国人拘束問題解決して、トルコと米国の関係が改善しても、トルコリスクは消えないと言うことになる。」

M「ただやはり米国人拘束問題解決となれば、短期的にはトルコリスクが後退する期待はあるだろうけどな。」

T「まずはそれに期待したいところだ。」

M「ああ。来週この問題がどうなっていくのか注目したい。」