悲願の有人輸送、日本の技術力示す好機 「月面に日本人」期待

悲願の有人輸送、日本の技術力示す好機 「月面に日本人」期待


米アポロ11号で着陸し、月面に降りる宇宙飛行士=1969年7月(NASA提供)
米アポロ11号で着陸し、月面に降りる宇宙飛行士=1969年7月(NASA提供)

 日本は大型ロケットや国際宇宙ステーション(ISS)への物資補給機「こうのとり」など無人の宇宙輸送機では高い技術力を誇るが、飛行士を運ぶ手段は米国とロシアに頼ってきた。今回の構想は悲願だった初の有人機で、実現すれば宇宙で日本の存在感が飛躍的に高まる。(草下健夫)
 宇宙航空研究開発機構JAXA)の関係者は「有人輸送技術は探査の一番の鍵。日本が担当すれば宇宙活動での優位につながる」と意欲を示す。日本人が月面に立つ期待も高まる。
 ただ、構想が実現するかは流動的だ。日本が米国の月基地に参加することがまず前提となるが、政府はまだ結論を出していない。
 米国はトランプ大統領が「米国人を月に戻す」と昨年表明しており、独自に着陸機を開発するとの見方がある。今回の構想は日本が補完的な役割を果たせることから、米国も好意的に受け止めているという。

 しかし、JAXAの着陸機は初号機だけで1千億円以上の開発費がかかるとみられる。アポロで実績のある米国が開発で先行すれば、不要論が浮上する恐れもある。
 着陸機に搭載するエンジンは燃料に液化天然ガス(LNG)を使う方式で、平成21年に開発を中止した中型ロケットに採用するはずだったものだ。燃料の扱いが簡単でタンクを小さくできる利点があるとされるが、宇宙で使った実績はない。技術の信頼性を国際社会に示せるかが鍵となりそうだ。