シニア職場も人手不足 マンション管理や警備

シニア職場も人手不足 マンション管理や警備

 定年退職者の再就職が多いシニア職場の人手不足が深刻になっている。マンション管理人の応募が年1割以上減っているほか、警備、清掃といった業種でも人手不足が目立つ。定年延長の動きに加え、他業種がシニア向け求人を増やしているためだ。警備会社などは対応策に取り組んでいる。
マンション管理人の応募人数が減ってきている(東京都内)
 「清掃、警備と並んでシニアの職場の3定番と言われていたのに、応募がここ数年で急に減ってきた」とマンション管理大手の東急コミュニティーは話す。多くが定年退職後のシニアだ。2017年度の応募人数は前年比13%減った。
 大和ハウス工業子会社の大和ライフネクスト(東京・港)でも応募が減っている。「シニアも争奪戦になっている」(同社)。東急コミュニティーが昨年、年2%の賃上げを行うなど各社は勤務条件を改善して募集に努めるが、住人とのコミュニケーションの問題などから外国人の採用は簡単ではなく、不足感は強い。
 応募減の背景として各社が挙げるのが、他業種でのシニアの活用拡大だ。「昔はシニアを積極雇用する職場が限られていたが、ここ数年は小売店や飲食店を中心に募集を増やしている」とリクルートジョブズの宇佐川邦子ジョブズリサーチセンター長は指摘する。接客など他の仕事にシニアの就業先が分散し、マンション管理人などシニアの職場の定番だった業種への人材供給が減っているという。
 ディップの運営する求人サイト「バイトル」では「60歳以上歓迎」とする求人がこの2年で8倍になった。定年を延長する企業も増えている。イトーヨーカ堂は昨年、定年後に再雇用したパート・アルバイトの雇用上限を70歳に引き上げた。
 以前からシニアを雇用してきた業種は求人強化に動いている。エン・ジャパンによればマンション管理人と契約社員の警備職の求人数はそれぞれ1年で1.8倍と1.5倍。ディップによると清掃のパート・アルバイトも同1.5倍で、「平均時給は年約20円高と、他業種に比べ伸びが大きい」(アルバイト求人情報大手のアイデム)。
 体力に余裕のある大手は技術革新で人手不足を補おうとしている。セコムは自律走行し、センサー付きのアームで不審物などを検知するロボットの年内発売を目指す。「特に人手の足りない夜間の巡回警備などで人の代わりに活用できる」(同社)。ドローンの活用なども警備各社が進めている。ただ「シニアを戦力としてきた業界は圧倒的に中小企業が多く、解決策を見いだせずにいる」(リクルートジョブズの宇佐川氏)。
 「今年は79歳になるスタッフを採用したけれど、無理させないか心配」と話すのは清掃会社、ファイヴエーカンパニー(東京・世田谷)の間宮孝洋社長。シニアを中心に年間100人の清掃スタッフを採用する同社の人材募集広告費は17年、前の年に比べ倍増。「時給も上げているのに採れない」と悩む。
 政府は高齢者の就労促進を人手不足打開の切り札の一つとして、6月に定めた経済財政運営の基本方針にも盛り込んだ。ただ「女性やシニアの活用だけでは限界がある」(アイデム)。総務省によると、60歳以上の就業者は17年に1328万人と、5年で11%増えた。ただ、企業の求人は就業者増以上に増えており、不足感が解消する気配は見えない。(高倉万紀子)